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板倉雄一郎 社長復活~会社2.0とは?

板倉雄一郎 社長復活~会社2.0とは?

(2013年4月 4日更新)

 
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 東日本大震災後の混乱から「14年振りの本業復帰」を書き上げるまでには、まだ語るべきストーリーがある。

 

100億円からはじまるストーリー

ソフトバンクの孫正義社長の100億円寄付のニュース以来、100億円という金額が、ぼくの頭にこびりついて離れなくなった。すると、不思議なことに100億円が1つのキーワードになって、いろいろな話がつながってきた。

 
田原総一朗さんの『サンデープロジェクト』に出演したときのことだ。番組が終わると、みんなで昼飯を食べることになっている。そのとき、たまたま田原さんが、オリックスの宮内義彦会長から聞いた話を教えてくれた。
 
「男は100億円からスタートだ。100億円あることによって、自由に好きなことができる。政治もできるし、事業展開もできるし、投資もできる。移動するのに自家用ジェットに乗ったり、大切な人に贈り物をしたりするときに、金額を意識しないでできるようになる境が、100億円だ」
 
なるほど、と思った。資産が100億円あると、違う世界が見えてくるらしい。
 

何のためにベンチャーを起こすのか

2011年の6月から7月にかけて、ぼくの頭の中は、100億円構想からスタートした物語でいっぱいだった。一度走りはじめたら止まらない。これから先の人生をどう生きるか。そのストーリーがこのとき一気にできあがったのだ。

ぼくはハイパーネットで手痛い失敗をした。もう一度やるぞというときに、同じ過ちは繰り返したくない。だから、過去の資産を全部つぎ込もう。金、人脈、ノウハウ、そして失敗から学んだ数多くのこと。それらすべてを投入して絶対に成功させてやる。

 
これまでは他人の会社のことばかり言っていた。そのやり方だとうまくいかない、こういうふうにやりなさい、と。だが、自分は本当に失敗から学んだのか。それは自分で事業を成功させることでしか証明できない。
 
そう思うと、がぜん力がわいてきた。すごくアグレッシブになって、気がついたときには、鬱とはもう完全におさらばしていた。
 
 

時代は会社2.0へ

何をしたいかというストーリーができたら、次は具体的なビジネスモデルをどうするか、どうやって稼ぐかを決めなければいけない。
 
よくビジネスプランを詰めてから事業をスタートしようという人がいるが、それは間違っている。変化が激しく、数年後の予測すらつきにくいこの時代に、緻密なプランをつくる意味はない。プランどおりに実行できることなどまずないから、絵に描いた餅にしかならない。
 
ビジネスプランが価値を持つのは、大企業病に感染した企業人が、自らのリスクヘッジ(責任逃れ)のために、ハンコを集めるときだけ。もし「ビジネスプランをよこせ!」という投資家や銀行がいたら、どんなに金が必要でも、彼らのお金に手をつけてはならない。ビジネスプラン(数字)を求める投資家に、ろくな奴はいない。
 
あんなモノ、つくるだけ時間の無駄なのだ。つくったら最後、今の自分に将来の自分が拘束されることになる。自分も情報も周囲の環境も刻々と変化する。変えてはならないのは理念や哲学であって、エクセルに書いた数字じゃないのだ。
 
だから、何よりも大事なのはビジネスモデル(収益構造)だ。どんな経済環境になったときに、どんな影響が収益に及ぶのかを検証する。
 
最も美しいビジネスモデルは、ダウンサイド限定&アップサイド(理論的に)無限大のモデル。何がどうなってもダウンサイドが限定されていて、アップサイドが理論的に無限大であるモデルをつくれば大丈夫だ。そうすれば、もしぼくの予想が外れ、事業が成長しなくても会社が潰れることはまずない。それが会社を一度潰して、塗炭の苦しみを味わったぼくが達した結論だ。
 
そこで、事業が成長しなかったらしなかった程度に動かせるし、1年で実現するはずのことが3年かかったとしても問題ないというビジネスモデルを考えた。
 
名づけて「会社 2.0」。オフィスもタイムカードも従業員もない、まったく新しい会社の形態だ。
 
「会社 2.0」では、誰も誰かを雇用しない。いわゆる雇用関係ではなく、業務委託契約に基づくパートナーシップなので、給与は一切ない。
 
はじまったばかりのスタートアップは、自信はあっても、キャッシュフローはこれっぽっちも約束されていない。だから、この状態で固定費となる従業員を抱えるつもりはない。
 
雇う・雇われるという雇用関係ではなく、誰もが事業に価値を提供したり、事業から価値を持ち帰ったりできる仕組みだ。この価値の受け渡しを一定の期間で区切り、「お金(現金やストックオプション)」でイーブン清算する。
 
誰もぼったくらないし、ぼったくれない。提供した価値相応のリターンを得て、受け取った価値相応の支払いをする。
 
オフィスもなければ人件費もないので、固定費が限りなくゼロに近い。クラウド上で展開するサービスなら、維持コストはサーバー代くらいしかかからない。だから、ちょっとやそっとのことでは潰れない。ダウンサイドに対する備えは万全だ。
 
そして、完全成功報酬型だから、事業の成功を信じている人間しか入ってこない。ぼくにとっては、顧客も、取引先も、従業員(はいないけど)も、債権者も、株主も ―― つまり、事業の利害関係者のすべてが「仲間」だ。仲間が、泣けるほどハッピーになるために、楽しみながら頑張る。その結果として、泣く子も黙るくらい儲けられたら、なおよい。
 
財務会計上の数字は、過去の実績。未来の財務会計上の数字を創るのは、組織の今だ。
 
企業価値の大部分は、余剰現金や非事業用資産などの過去の積み上げではなく、今後どれほどのキャッシュフローを生み出すかという将来の見込みで決まる。
 
組織が闊達であること。ベクトルが経営理念に一致していること。これこそが企業価値最大化の因数だ。
 
だから、経営の要諦は、「優秀な人間が気持ちよく仕事に集中できる環境」である。それを実現するための具体的方法を 「会社 2.0」 とぼくは表現している。もしかしたら、「会社 2.0」は、ぼくの仕事人生の中で最も重要な発明かもしれない。
 
 
 
 

 

板倉雄一郎 (いたくら・ゆういちろう)

株式会社シナジードライブ 代表取締役
1963年、千葉県生まれ。高校を卒業後、ゲームソフト開発会社の起業、電話会議サービス会社の起業を経て、91年、3つめの会社となるインターネット広告システムベンチャー:株式会社ハイパーネットを設立し、サービスを世界に展開し注目を浴びる。栄えあるビジネス賞を総ナメにし、ビル・ゲイツと商談、『日本経済新聞』の一面を飾り、フェラーリに乗り、白金の一軒家に住むという絵に描いたようなサクセスストーリーを体現するも、97年、負債総額37億円で倒産。自らも自己破産をする。著書に、そのときの経験を書いた『社長失格』のほか、『真っ当な株式投資』(ともに日経BP社)『おりこうさん おばかさんのお金の使い方』(ソフトバンク文庫)などがある。2003年以降、投資家として活動。株式投資の経験をもとに、企業価値評価セミナー、企業コンサルティング、講演、執筆などで活躍しつつ、11年の東日本大震災を機に、再び起業家として、インターネットベンチャー:株式会社シナジードライブを起業し、声のSNS:VoiceLinkを展開中。
 
 


板倉雄一郎「社長復活」

『社長復活-ぼくが再起業した理由』
板倉雄一郎著

会社2.0と一緒に、あの男が帰ってきた!  
1997年、「ハイパーネット」倒産から15年。
「ボイスリンク」を開発した社長・板倉雄一郎が、新しいビジネスモデル、そしてネットの未来を語り尽くす1冊。一度、「社長失格」の烙印を自ら押した著者が、なぜ、再び「社長」となったのか? 何もやる気がおきない極度の鬱状態から脱出できたのはなぜか?

その答えは、2011年3月11日に起きた東日本大震災に対する著者の思い、そして本書に収録した「14年振りの本業復帰」というエッセーの中にある。


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