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ハサミを置き、マネジメントと人材育成に徹する~美容室アン

ハサミを置き、マネジメントと人材育成に徹する~美容室アン

(2012年11月28日更新)

 
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『お客様に感動を与えるエクセレントカンパニー』から、大阪府堺市で7店舗の美容室を展開する株式会社アン様をご紹介します。

 

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経営に徹するため、ハサミを置くことを決意

今でこそ熱心に社員教育に取り組んでいる築林だが、企業にとって人材育成がいかに重要かということに気づくまでには、かなりの時間を要した。アンは、平成元年、築林が二十六歳のときに創業したが、当時、頭にあったのは売上だけ。「最初は、『流行らせるんや』だけですよね。創業当時は、われわれ夫婦の給料が出ないという悲惨なスタートでしたが、流行ってくると、今度は一店舗より二店舗のほうがかっこいいから二店舗目を開店する。スタッフは紹介や中途採用で間に合わせる。とにかく人を集めなきゃという状態で、経営もへったくれもなかったですね」。しかし、五年ぐらいたった頃に、「何やってんのや。どこへ行くんや」と自問自答が始まった。そのとき初めて人材の重要性に目覚め、四~五名に辞めてもらったという。しかし、その後も、築林は人材の問題で悩み続けることになる。

 

築林は、業界でもいち早くナイター営業を始め、平成九年には、団塊ジュニアたちがシックスポケットで潤っていることに着目し、高校生をメインターゲットとした店舗を開店。多いときは数十人もの行列ができるほどの人気を集めた。ヤング層をターゲットに絞ったアンは、平成八年~十二年は年収三億六〇〇〇万円をはじき出し、わずか四年間で売上が三倍に膨れ上がった。しかし、お客様が押し寄せるにも関わらず、熟練したスタッフが足りない。そこで、新卒でデビューしたてのスタッフに、月間三〇〇名の新規のお客様を担当させるなどスタッフに無理を強いることになり、その不満から平成十三年には二〇名が退職した。当然、顧客満足も下がり、来店数が徐々に下降線をたどるようになる。

 

「当時の私は、人間というものがまったくわかっていませんでした。ですから、スタッフとコミュニケーションがとれず信頼関係も築けなかった。社内のマネジメントが全然できていなかったんですよ。つまり経営者ではなかったんですね。そこで、経営に徹するためハサミを置くことを決意しました。私にとってハサミは武器。でも、その唯一の武器を捨てない限り腹をくくれないと思ったのです。つらかったですね」。平成十四年六月、築林、苦渋の決断であった。

 

スタッフとの絆が深まるほど顧客満足は高まる

ハサミを置いたものの、築林は経営者として何をすればいいのか皆目わからなかった。経営の勉強を始めたが、ハサミを握っていた頃と違い働いているという実感がない。充実感も感じられない。最初の一年は、イライラとモヤモヤが募りお酒に逃げたという。そんなとき、ふと思いついたのが、スタッフ全員に入社年別に集まってもらい正面から向き合うことだった。ところが、まったく意見が出ない。信頼関係を築いてこなかったことを痛感した出来事だった。

 

「汗で下着までびっしょりと濡れるほど緊張しましたね。面談の二時間は苦痛そのものでしたが、家内が『これで変わるんじゃないの』と僕の行動を評価してくれたんです。この言葉には励まされました」。本気で腹をくくった築林は、当時五店舗あった店にも顔を出すようになる。今まで疎かにしてきたコミュニケーションのつけは大きく、一朝一夕で信頼関係は築けない。自分の店なのに居心地が悪い。針のむしろのような状態がしばらく続いた。築林は、平成十五年から年明けに一人一時間ぐらいかけて個人面談をするようになるが、なかなか成果は見えてこなかった。

 

しかし、平成十七年一月十五日、スタッフとの絆が築かれていることを実感する出来事が起きた。その日は成人式。全社員が本店に集合し、着付けや写真撮影などに追われていた。そこに警備会社から電話が……鳳店から煙が出ているという。出火だった。翌日、煤だらけの店内を掃除していたときのこと、徹夜明けにも関わらず一〇人ぐらいのスタッフが手伝いに駆けつけてくれたのである。今まで反抗心を露わにしていた中堅のスタッフたちだった。

 

「すごくうれしかったですねぇ。スタッフとの一体感のようなものを感じました。地道にスタッフと向き合ってきたことは間違っていなかったんだと思いましたね」

 

スタッフとの関係が良好になればなるほど顧客満足は上がっていった。

 

現在、アンのお客様のリピート率は八五パーセント。新規のお客様のリピート率を引き上げれば九〇パーセント以上も不可能ではない。スタッフを大切に育てることが顧客満足につながる。その信念のもと、築林は、南大阪をディズニーランドにするという夢に向かって邁進し、スタッフとのより固い絆を結んでいこうと心に誓っている。

 

株式会社アン

代表者/代表取締役社長 築林篤司

創 業/平成元年二月二十五日

住 所/大阪府堺市北区百舌鳥赤畑町3—138—1

電 話/072-255-8002(代表)

URL/http://www.annweb.co.jp/

 


 

exce.jpg『お客様に感動を与えるエクセレントカンパニー』

(PHP研究所/2012年9月)

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