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団塊世代の大量退職は組織のOSを書き換えるビッグチャンス

団塊世代の大量退職は組織のOSを書き換えるビッグチャンス

(2014年8月22日更新)

 
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日本企業、反転攻勢の大チャンス到来! 過去の栄光にしがみつくのはやめて、本物のガバナンス、人事制度、事業選択法を手に入れろ。グローバルゲームのルールを知り尽くす冨山和彦氏が、世界で勝てる人事・組織への切り替え方を説いた『ビッグチャンス』より、その一部をご紹介します。

 

冨山和彦『ビッグチャンス』

 

時間の経過は変化に味方する

 
かつて日本で年俸制や成果主義の導入を進めようとしたとき、失敗した企業が続出した。年功序列や終身雇用といった基本的な仕組みに抜本的なメスを入れず、また、それゆえに中間層以下の組織レイヤー、その多くはオペレーショナルなチームワークで仕事をしている階層(したがって、たとえば個人別の成果主義とは相性が悪い)に、成果主義を導入しようとしたケースが多い。
 
要は、会社のカタチを決めている本質的な部分は残したまま、成果主義だけをパッチワーク的に導入したのである。
 
従来型の日本的経営という古いOSに、年俸制という名の舶来のアプリケーションを載せたところで、うまく機能するはずがない。本来なら、ベースとなるOSの部分から、会社のカタチをもう一度デザインし直して、そのうえで日本型能力主義のようなものを土台から再創造、再構築すべきだったのだ。
 
もう何十年も野球をしてきた人たちに「明日からサッカーに切り替えます」と言って、いきなり試合に出しても惨敗するのは目に見えている。頭の中身も身体の機能も野球に最適化されているのに、「手を使えないから足でボールを蹴って」「局面局面でポジションはどんどん入れ替えて」と言うだけですぐに勝てるようになるほど、サッカーの世界は甘くない。
 
むしろ、世界的に見ればサッカーは野球よりも圧倒的に競技人口が多いので、予選を勝ち抜くだけでもひと苦労。ワールドカップ本番で勝利するには、相当難度の高いハードルをいくつもクリアしなければならないし、そこまでたどり着けずに途中で脱落する人もたくさんいるだろう。
 
であるならば、これまで慣れ親しんだ野球をやり続けるというのも、1つの生き方となる。野球がまだ通用する場所を探して、そこで野球をやり続ける。これを全社的な事業ドメインの選択基準にするのも、経営リアリストである私としてはありだと思っている。
 
人口減で国内市場はシュリンクするし、グローバル市場に打って出るチャンスはないかもしれないが、サッカーはどうしても合わないというなら、野球の技を磨いて勝者を目指すのはきわめて自然だし、まわりがとやかく言う問題ではない。
 
ただ、この20年という時間が少しずつ社内の風向きを変えてきたのも事実だ。野球チームのままサッカーを始め、手痛い思いをして「自分たちには野球が合っている」と一度は撤退を決断した会社もあったかもしれないが、野球チームの主力を担った世代がこの間に引退し、ふと気づいたときには、野球よりもサッカーが得意な人たちが増えていた……。こんなことがあちらこちらで起き始めている。若い人たちは最初からサッカーをやるつもりで入社してくるから、その層が育ってきたということでもある。時間の経過というのは、往々にして変化の味方になるのだ。
 

さらば団塊の世代!種目を変えるビッグチャンス到来!

 
加えて、ここ数年、団塊の世代の大量退職が続いて、上の世代がごっそりいなくなった影響も大きい。
 
失われた20年というのは、別の見方をすると、団塊の世代の互助会を維持するために改革が滞った時代とも言える。彼らはバブルが崩壊した時点でまだ40代半ば。それまでずっと給料は横並びで右肩上がりだったのに、いきなりレールを外されて、「これからは完全成果主義、完全能力主義でいきます」と言われると困ってしまう。皮肉なことに、ここで最も困るのは「我慢して長年やっていれば、放っておいてもヒラ取締役くらいにはなれる」と思っていたカイシャモデルに適応したエリートサラリーマンの人たちである。
 
だから、団塊の世代の現状維持圧力は相当根強いものがあった。なにしろ人数だけは多いから、社内力学的にそれを覆すのは容易ではなかったのだ。しかも、サバけた人事体系にしてしまうと、大量の社内失業が「見える化」してしまう恐れがあった。それがお互いに怖くて手をつけられなかったという面もある。
 
団塊の世代が会社を去った今こそ、改革を進めるチャンスなのだ。人手が余っているときよりも足りないときのほうが、組織のOSは書き換えやすい。しかも、今は生産年齢人口が減ったことによる人手不足が顕在化している。団塊の世代がいなくなり、ある日突然、巨大な脂肪の塊がボコッととれて、むしろ痩せすぎではないかというぐらい体脂肪率が急激に落ちた。今は過少体脂肪状態で、ちょっと遭難するとすぐに飢えてしまうほどだ。会社のカタチを21世紀バージョンへ、Gモードバージョンへと転換するビッグチャンス到来である。
 
 

 
 
【出典】
日本企業、反転攻勢の大チャンス到来! 過去の栄光にしがみつくのはやめて、本物のガバナンス、人事制度、事業選択法を手に入れろ。
 
【著者】
冨山和彦(とやま・かずひこ)
株式会社経営共創基盤(IGPI)代表取締役CEO
1960年生まれ。ボストン コンサルティンググループ、コーポレイト ディレクション代表取締役を経て、2003年、産業再生機構設立時に参画し、COOに就任。解散後、IGPIを設立、数多くの企業の経営改革や成長支援に携わる。
現在、オムロン社外取締役、ぴあ社外取締役、経済同友会副代表幹事、財務省・財政投融資に関する基本問題検討会委員、内閣府・税制調査会特別委員、文部科学省・国立大学法人評価委員会「官民イノベーションプログラム部会」委員、経済産業省・「稼ぐ力」創出研究会委員、金融庁・コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議メンバー、公正取引委員会・競争政策と公的再生支援の在り方に関する研究会委員等を務める。
著書に、『会社は頭から腐る』『結果を出すリーダーはみな非情である』(以上、ダイヤモンド社)、『カイシヤ維新』(朝日新聞出版)、『挫折力 ‐ 一流になれる50の思考・行動術』『30代が覇権を握る!日本経済』『なぜローカル経済から日本は甦るのか』(以上、PHP研究所)などがある。
 

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