課長職にマネジメントの革新を!
RSS

経営者がもつべき「新しい人間観」~松下幸之助が考え続けたこと

経営者がもつべき「新しい人間観」~松下幸之助が考え続けたこと

(2014年11月14日更新)

 
  • はてなブックマーク
  • Yahoo!ブックマーク
  • Check

自らの経営人生で「企業は人なり」ということを強く感じていた松下幸之助は、「正しい人間観をもつ」ことの大切さを終生説いていました。

そして、『人間を考える -新しい人間観の提唱-』を上梓し、その翌年には渡部昇一氏を座長に「新しい人間観の研究」会を開始。この研究会は幸之助没後の現在もなお、継続されています。

 

PHP研究所ではこの度、経営者の皆様に、松下幸之助の想いを伝え、活かしていただく「経営者・経営幹部のための PHP『人間を考える』講座」を企画しております。今回は、松下幸之助の人間観と、本講座が目指すものについて、PHP研究所研修事業部・土井系祐がご紹介します。

 

*  *  *

 

先日、尚美学園大学の理事長を務める松田義幸氏から興味深い話を伺いました。松田義幸氏はPHP研究所が主催する「新しい人間観の研究」会のメンバーで、現在は大学での活動の他、森永エンゼル財団の理事として「グレート・ブックス・セミナー」などの活動を推進されています。

 

「どうも、千利休は、当時日本に来たイエズス会の宣教師たちと堺で会って、そのミサに参加していたのではないか。ミサで行われている儀式と、お茶の所作とに共通点がたくさんある」

松田先生はそうお話されていました。

 

日本の茶道とイエズス会? イエズス会と言えば、豊臣秀吉が禁教令で追放したことや、植民地への先兵のごとく進出していくような印象程度だったのですが、それからしばらくして、たまたま書棚を何ともなしに見てみると、『物とこころ』という本が目に飛び込んできました。この本は、松下幸之助と千宗室氏との対談本で、1973年に読売新聞社から出版されています。「お茶」と「千宗室」という連想から、手に取ってみたところ、すぐにその箇所が見いだされ、驚かされました。

 

千(宗室) 「利休自身は大徳寺の笑嶺や古渓和尚と仲よく、しかも正親町天皇から勅許で居士号をいただいておりますし、禅宗の在家出家でもあったわけですが、新しい思想として、カトリックの思想もとりいれました。ですから、西洋的なものと、東洋的なものの宗教的実践が、茶道で大成されたといえるのです。まさに西洋の科学と東洋の哲学を一つにさせたといえます」

松下(幸之助)「東西の文化というものを茶に吸収したというわけですね。」

と、あまりにもあっさりと書かれており、しばしあっけにとられました。

 

新しい人間観の研究

 

さて、「新しい人間観の研究」会について少しご説明しますと、1983年6月に開始され、現在までに300回以上、30年を超える研究会です。さらにこの研究会の親会が、民間の新政策研究提言機構として同年4月に発足した「世界を考える京都座会」。混迷する日本と世界の状況に不安を持ち、これに対処するために衆知を集めようと、学識経験者11名が集結しました。

 

松下幸之助を座長に、天谷直弘(産業研究所顧問)、飯田経夫(名古屋大学教授)、石井威望(東京大学教授)、牛尾治朗(ウシオ電機会長)、加藤寛(慶應義塾大学教授)、高坂正堯(京都大学教授)、斎藤精一郎(立教大学教授)、堺屋太一(作家)、広中平祐(京都大学教授)、山本七平(山本書店店主)、渡部昇一(上智大学教授)という錚々たる面々の諸氏にお集まりいただきました。

 

この座会からは、「学校教育活性化のための7つの提言」で臨教審の議論に影響を与えたり、『日本再編計画~無税国家への道~』で日本の財政再建を求めたり等々、ここではご紹介しきれない成果があり、現在のPHPシンクタンク活動へと引き継がれています。

この分科会「新しい人間観の研究」会は、渡部昇一氏(上智大学教授)を座長に、木村治美(千葉工大教授)、谷沢永一(関西大学教授)、土居健郎(国立精神衛生研究所長)、松田義幸(筑波大学助教授)という諸氏が集結したのでした。


この「新しい人間観」というのは、松下幸之助にとって非常に大切なものでした。座会発足の前年に『人間を考える -新しい人間観の提唱-』を発刊した折、松下幸之助は「これができたら、もう思い残すことはない」と語ったそうです。戦後の荒廃を見てPHP活動を思いたった時から、さまざまな方々と語りあい、「人間観」が変わらないと人間社会はよくならないと考えての想いではなかったでしょうか。そして、そのことを松下幸之助は日々の経営を通じて考え続けて来たという点に驚かされます。しかも、この発刊時は82歳です。

 

その冒頭にはこう記されています。

 

「宇宙に存在するすべてのものは、つねに生成し、たえず発展する。万物は日に新たであり、生成発展は自然の理法である。 人間には、この宇宙の動きに順応しつつ万物を支配する力が、その本性として与えられている。人間は、たえず生成発展する宇宙に君臨し、宇宙にひそむ偉大なる力を開発し、万物に与えられたるそれぞれの本質を見出しながら、これを生かし活用することによって、物心一如の真の繁栄を生み出すことができるのである。 かかる人間の特性は、自然の理法によって与えられた天命である。 この天命が与えられているために、人間は万物の王者となり、その支配者となる。すなわち人間は、この天命に基づいて善悪を判断し、是非を定め、いっさいのものの存在理由を明らかにする。そしてなにものもかかる人間の判定を否定することはできない」 (『人間を考える -新しい人間観の提唱-』)

 

松下は、人間こそが万物の王者であり、物心一如の繁栄を生み出す力が与えられていると考えました。松下は、いかに人々の繁栄、平和、幸福を実現できるかを問うなかで、人間の本質を理解することが何よりも重要だと考えたのです。

 

先述の『物とこころ』でも、本書『人間を考える』のことが、松下幸之助と千宗室氏ふたりの話題になっています。

 

松下「これはね、読んで面白い本ではないんです。考える本ですよ。」

千「わたしもこの本を読ましていただいて、たしかに会長(松下幸之助)のいろいろお考えになっていること、底に流れているものは身近にわかるのでございますけれども、それじゃどうすればいいんだろう……というような問題までは提示なさっておりませんですね。」

松下「ええ、これはね、そういう具体的に、「これからはこうだ」ということはいっておりません。その人なりに考えて、それを求めないといかんのです。だから、これは各論が将来出てくるでしょうな、人々によって各論が。また、私自身としても、各論を書かないといかんと思うわけですよ。」

 

いま、ますますこの「人間を考える」ことを続けていかなければならないときだといえるように思えてなりません。

 

経営者・経営幹部のためのPHP『人間を考える』講座

 

さて今回、渡部昇一氏に「リーダーに求められる人間観」というテーマで特別講演をお願いしています(2014年11月27日、東京にて)。渡部氏には、『松下幸之助の発想』(学習研究社、1989年。現在は『現代講談 松下幸之助』としてPHP文庫。現在重版未定)という著作があり、松下幸之助の経営者、実業家としての面のみならず、思想家、哲人としての多面的な全貌を描かれています。また、『知的生活の方法』(講談社現代新書、1976年)、『ドイツ参謀本部』(中公新書、1974年)などを著されており、今回は松下幸之助から託された研究の内容を踏まえつつ、リーダーに求められる人間観、資質、発想法等について持論を熱く語っていただきます。

 

「人間を考える」という言葉は少し重く、忙しい毎日を送っていると、なかなか考える機会もないかもしれません。しかし、そもそも経営活動は人間が担うものであるがゆえに、経営の任にあたる方は人間の本質を正しく理解する必要があります。同講座では、各界一流の講師陣を迎え、古今東西の叡智を紐解きながら、経営トップの皆様とともに、人間の本質について議論を深めていきたいと考えています。

 

この講座の目標は、日々の経営を高め、事業を通じて社会を豊かにするための新しい発想・行動へと繋がる実践知を得ることです。そういう気づきを得て、多面的な視点を持つことが、経営者としての決断の質を高め、企業と社会に繁栄をもたらすものと信じます。そして、気づきから無限に広がっていく知恵や、そこから出会う人と人とのネットワークが、人生の羅針盤となることを願ってやみません。

 

「経営というものは、人間が相寄って、 人間の幸せのために行なう活動だと言える。 したがって、その経営を適切に行なっていくためには、 人間とはいかなるものか、どういう特質を持っているのか ということを正しく把握しなくてはならない。 いいかえれば、人間観というものを 持たなくてはならないということである」 [松下幸之助著『実践経営哲学』(PHP研究所刊)より]

 

※文中の肩書は当時のものです。

松下幸之助経営塾


メールマガジン

更新情報をメルマガで!ご登録はこちらからどうぞ