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安岡正篤先生にみる指導者の「徳」

2019年6月 3日更新

安岡正篤先生にみる指導者の「徳」

「背筋がすっとしておられる」――安岡正篤先生のお写真を眺めていると、いつもこんな言葉が頭に浮かんできます。

知識偏重の時代

この印象は、森信三先生や中村天風先生のお写真に接したときも同じでした。七十代、八十代にして背筋がすっとしている――これは現代では稀有なことかもしれません。老年に限らず若年、中年においても、背筋がすっとしているという印象の人に出会うことはほとんどなくなりました。「日本人が変わった」ということでしょうか。それこそ最近の日本人に欠けているのは、それこそ「背中に一本筋の通った生きざま」なのかもしれません。

ところで、言行一致は、リーダーにとって不可欠な条件の一つだと言われてきました。「有言実行」という言葉もありますが、「言ったことをやる」のは信頼関係を維持する上で最低限果たすべき約束です。本来、もっと大切にすべきことは、「不言実行」でしょう。

 「不言実行」とは、いわばその人の生き方であり、その人の背中です。生きざま、生きる姿勢――リーダーの背中にそういうものが感じられるからこそ、「あの人についていこう」という思いが生まれるのです。

しかしながら、現代は知識偏重の時代です。知識に頼り、言葉を武器として、安易に人を動かそうとし、結果を求めようとします。その結果、極論すれば「人間不在」といってもいいようなマネジメントが横行してはいないでしょうか?

徳性を高める

安岡正篤先生は、「論理的思考の危険」(CD集『人間の本質』より)について、次のように述べています。

「殊に文明人、それを代表する知識人とか教養人とかいうものになってくるほど、思惟・思考が発達するから論理が発達する。論理の発達は結構なようであるが、そのために往々にして、せっかくの事物、物事、物理、事理の一面にとらわれて、一面を抽象して、次第にその全部がわからなくなって、いわんや実践というものから遠ざかる。ここに論理的思考というものの非常な危険がある。(中略)われわれが本当に人間となるためには、本当に生というものを把握するためには、平たくいうと本当の人間となって進んでいくためには、他の動物と違って一番危険なのは、この論理的知識――知識・理論に欺かれること。そういうものを、非常に第一義のように錯覚すること――これです」

「物をつくる前に人をつくる」という言葉がありますが、この「人をつくる」とは、単に知識に秀でた人物を養成するという意味ではありません。むしろ、徳性をそなえた人物を養成することがその主眼といえるでしょう。安岡先生が指摘しておられるとおり、論理的思考は往々にして行動を阻害し、直感的な行動を邪魔します。

結局、大切となるのは人間の徳性なのです。それは、生きざま・生き方をいかに身につけていくか、そしていかに次世代に伝えていくかという問題でもあります。

再び、安岡正篤先生の言葉に耳を傾けたいと思います。

「東洋の学問というものは、(中略)『人間には徳というものが一番大切である。功利というものは、大切は大切であっても、これは手段的なものである』ということに徹した思想であり、教学である。これが腹に入るか、入らんかということが東洋教学――儒教であれ、仏教であれ、道教であれ、神道であれ、なんであれ、東洋民族共通の根本哲理、あるいは根本真理といっていい」(CD集『活眼をひらく』「ケインズの名言」より)

端的にいえば、自分の生きざま、自分の背中をどのように後進の者に見せていくか――それは後輩であったり、部下であったり、あるいは自分の子どもであったりすると思いますが――そのために、まず自分をどう磨いていくかということが問題となります。

まずは自分の背筋をすっと伸ばさなければ、と思うのです。

PHP研究所 教育出版局 林順一

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安岡正篤講話録 人間の本質

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安岡正篤講話録 「論語」と人間

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