課長職にマネジメントの革新を!
RSS

伸び続ける自動車ディーラー・滋賀ダイハツ販売の経営の原点~後藤敬一

伸び続ける自動車ディーラー・滋賀ダイハツ販売の経営の原点~後藤敬一

(2013年5月30日更新)

 
  • はてなブックマーク
  • Yahoo!ブックマーク
  • Check

環境問題、資源問題、長引く世界的不況、国際摩擦、若者の自動車離れ等々、日本の基幹産業である自動車業界には、さまざまな深刻な問題が横たわっています。ところがそうした厳しい状況下にありながら、滋賀県内で40年以上にわたって新車販売台数トップを維持し続けている自動車ディーラーがあります。

 36歳の若さで6代目社長に就任し、滋賀ダイハツ販売を牽引してきた後藤敬一氏に、企業が元気であり続ける秘訣、同氏の経営者としての原点を語っていただきました。2回連載でご紹介します。


<取材・構成:森末祐二>

 

外の世界を経験してから祖父がつくった会社に就職

 

滋賀県の膳所高校を卒業したあと、私は静岡大学農学部に進学しました。農学部を選んだのは、自然を愛する気持ちが強かったからです。音楽も非常に好きだったことから、学生時代はバンド活動を楽しんでいました。大学卒業後は、電子楽器メーカーである静岡のローランドという会社に就職しています。当時、滋賀ダイハツ販売を継ぐ考えは持っておらず、親からも何も強制されることなく、ただ自分が好きな道を選んだのです。

 

ローランドで働き始めて4年ほど経ったある日、父の昌幸から一本の電話がかかってきました。会社を辞めて滋賀県に戻ってこいという話でした。一般的に、就職して5年目あたりで何らかの役職がつくことが多いものですが、そうなってから辞めると会社に多大な迷惑をかけることになってしまいます。父はそのタイミングを見計らって、まだ平社員のあいだに呼び戻そうとしたようです。

 

私は逡巡しましたが、父から「この会社はお前のおじいさんがつくったんだぞ」と言われて、気持ちが大きく変化していくのを感じました。自分がこの会社を守っていくのだという自覚が芽生えた瞬間でした。そして1984年、26歳で故郷に帰り、滋賀ダイハツ販売に入社したのです。

 

(中略)


社員の幸せを第一に考える

 

長浜の子会社で1年と3カ月、貴重な経験を積んだ私は、1994年4月に本社復帰し、同年10月に行われた創業40周年記念式典において社長に就任しました。このときまでに、私は自分なりに経営ビジョンにあたるものをつくろうと思いました。

 

そこで、当社を創業した祖父が、草創期に何を願っていたのかを想像してみたのです。熟慮を重ねるうちに、5つの幸せを実現しなければならないという結論に達しました。これを「五幸」と名づけ、前述の式典における社長就任あいさつの中で、次のような形で発表したのです。

 

五幸
 (1)お客様の幸せ
 (2)取引店の幸せ
 (3)ダイハツグループの幸せ
 (4)社員の幸せ
 (5)地域の幸せ

 

人間は幸せを追求して生きる存在であり、顧客満足第一主義の考え方に基づいて努力すれば、事業は必ずいい方向に進んでいくと思っていました。ところが現実にはそうはいかなかったのです。顧客満足を優先すればするほど社員の苦しみが増していき、相次いで数人の退職者を出してしまいました。このときは多くの社員に無理をさせてしまったのかもしれません。また、私が社長に就任した年、ライバル他社が発売した新型車が大ヒットしたことで、ダイハツ車全体の売上が下がっていきました。新米社長である私は、いきなり苦境に立たされたといえます。

 

そんなとき、「日本経営品質賞」の講演会に行く機会があり、そこで「社員の幸せをいちばんに考えないといけない」という話を聞きました。いわく、「お客様は、自社のサービスや商品に満足できなかったとしても、他社で満足を得ることができる。しかし、社員が自社に不満を感じたとしても、簡単に他社に移ることはできないし、たとえ転職しても満足を得られる保証はない。だとしたら、まず第一に社員の幸せを実現するべきである」という内容でした。私は目が覚めるような思いがしました。そこで「五幸」の文言を少し変え、優先順位を次のように変更したのです。

 

五幸の基本方針
 (1)社員の幸せ
 (2)お客様の幸せ
 (3)お取引店様の幸せ
 (4)ダイハツグループの幸せ
 (5)地域の人々の幸せ

 

ともに働く仲間であり、ファミリーである社員の幸せを実現すれば、当然仕事へのモチベーションが高まります。社員の熱意が高まれば、サービスは向上し、結果として顧客満足も向上していきます。満足度が向上することによって、多くのお客様がリピーターとなってくださり、業績も向上していきます。企業活動とは本来こうあるべきではないでしょうか。ここにきて、私はようやく大切なことに気づいたのです。

 

 

☆本サイトの記事は、雑誌掲載記事の一部分を抜粋したものです。記事全文につきましては下記本誌をご覧ください。(WEB編集担当)

 


 

後藤敬一(ごとう・けいいち)

滋賀ダイハツ販売社長 

1958年生まれ。静岡大学農学部を卒業後、ローランド株式会社に就職。’84年に滋賀ダイハツ販売株式会社に入社し、営業などいくつかの部署で勤務したのち、子会社に出向し経営者としての経験を積む。’94年社長に就任後、さまざまな改革に柔軟に取り組んで業績を伸ばし、自動車業界において独自の存在感を放っている。

PHP研究所ではこの度、滋賀ダイハツ販売と叶匠壽庵「寿長生の郷(すないのさと)」を訪問し、後藤敬一氏(滋賀ダイハツ販売株式会社 代表取締役社長)、芝田清邦氏(株式会社叶匠壽庵 代表取締役会長)のご講義をいただく特別セミナーを開催します。
多くのお客様に愛され地域とともに発展する経営を、現場発で考える経営者、後継者、経営幹部の方々を対象とした勉強会です。ぜひご参加ください。

 


 


メールマガジン

更新情報をメルマガで!ご登録はこちらからどうぞ