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お茶っこ、飲みにきたよ~街のでんきやさん・川村電気商会

お茶っこ、飲みにきたよ~街のでんきやさん・川村電気商会

(2014年5月26日更新)

 
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パナソニックのお店への取材をもとにまとめられた『街の元気屋さん』(街を元気にプロジェクト著)から“心がほろっと温まるいい話”をご紹介します。第一回は、東日本大震災で被災され、みんなの支えがあって再開できたと語る街のでんきやさん・川村電気商会(岩手県下閉伊郡山田町)さんのお話です。
 
街の元気屋さん
 

*  *  *

 

「少しぱ電器屋らしくしたいと思いまして。わずかではあるけど、冷蔵庫や洗濯機といった大物商品も並べているんです」

 
お店に迎えてくれた社長の川村重孝さんが語ります。東日本大震災から1年4ヵ月、川村電気商会さんはプレハブの仮設商店街で、やっと小さな店舗を再開しました。
もともと川村電気商会さんがあったのは、岩手県下閉伊郡山田町の国道沿いにあった川向町。山田湾とは、ほんの200メートル足らずのところです。すでに他界されたおじいさん・お父さんから継いだ店舗兼自宅は、あの巨大な津波に襲われなくなってしまいました。
 
「唯一残ったのは、軽トラックニ台だけでしてね」
 
大津波警報が出たと聞き、大切な顧客データを持ち出す余裕もなく、とにかく着の身着のままの避難でした。
 
「それでも、電器屋をやめようとは思わなかったです」
 
あの当時、豊間根中学校の体育館に避難していた川村社長とお母さん。海沿いの老人ホームにいらしたおばあさんを1ヵ月間探し続け、荼毘に付します。
そんな辛い状況のなか、やっと道路も通れるようになり、避難先から地元の様子を見に行きました。
 
すると、かろうじて家が残ったお客さまから、「漏電していないか見てほしい」とか、「アンテナの修理をしてほしい」とか声をかけられます。
 
「じいさんの代から長年お付き合いくださっているお客さまの困難を、放っておくことなんてできない」
 
街のでんきやとしての使命感に突き動かされました。
そして、何もかも失って着るものさえなかった川村さんを、たくさんの電器屋仲間が助けてくれました。震災三日後には、電器屋仲間の岩手明徳会の方たちが、二トントラックに飲料水や食糧、着るもの、ラジオ、ライト、電池などをいっぱい積んで避難先まで駆けつけてくれたとか。
「顔を見たとたん、涙が出ました。その後も、全国の仲間たちが、仕事に必要な工具とかスーツまで支援してくれて。本当にありがたかったです」
いまでも感謝の気持ちでいっぱいだといいます。
 
「いま仲間と会うと、あの頃は顔が引きつっていたぞ、と言われるんです」
 
ずっと店舗のない状態で、仕事を続けていた川村さん。2012年7月13日からは、仮設商店街に店を構え、新たなスタートです。
 
「いつかまた店ができたら、アンタんとこで買うからね」
 
涙を浮かべながら声をかけてくださった、同じ境遇のお客さまの言葉が心の支えになりました。パートの佐藤沢さんのお父さんからは、「早く店を出してくれんと、うちの嫁の元気が出んよ」と励まされました。
 
「店を再開することが、少しでも、町の元気の一歩になるといい」
 
以前とは比べものにならないほど、こぢんまりとした店ですが、みんなの支えがあってこその再開です。
 
「お茶っこ、飲みに来たよー」
 
遠くの仮設住宅からも、昔なじみのお客さまが店に顔を出してくださいます。
「仮設だと、気も休まらんしねぇ」などと言い合いながら、あの頃のようにお茶を飲み、お母さんの郁子さんとたわいもないお喋りを楽しんでいます。
 
「これまで、こんなひとときさえ持つ余裕などなかったんです。人と会えるのが、私の元気の素かな」と郁子さん。
 
「お客さまも私も、折れそうな心を支え合いながら、何とか前を向こうと懸命の毎日なんです」
 
鉄道も家もなくなった荒涼とした更地の中で、ポツンと灯る川村電気商会の明かり。
「ふつうの暮らしが取り戻せる日まで、くじけないでいよう」
そんな物言わぬエールになっているように思えます。
 
 
 

 
 
【出典】
 
~心がほろっと温まる「街のでんきやさん」の話~
 
松下幸之助さん、街のでんきやは今日も元気です!
震災に負けない、お年寄りが多い街だからこそできるサービスがある。地元を愛するお店だからこそ語れる、ほろりとするちょっといい話。
 
 
【著者紹介】
 
街を元気にプロジェクト
ふとしたきっかけで、「街のでんきやさん」に興味をもち、全国各地のお店を取材して歩いている、コピーライター梶田あずさ、グラフィックデザイナー小亀沢・近藤義顕、カメラマン日野眞郷たちのチームです。取材を続けるうちに、“街のでんきやさん=街の元気屋さん”であることに気づき、つけた名前が「街を元気にプロジェクト」。街のでんきやさん、いつかお店に伺ったときは、よろしくお願いします。
 
 
 
松下幸之助経営塾
 

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