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磨けば輝く人間の本質~松下幸之助「人を育てる心得」

2016年9月14日更新

磨けば輝く人間の本質~松下幸之助「人を育てる心得」

人間はダイヤモンドの原石のように、光り輝く本質をもっている。しかし、このすぐれた本質も、磨くことなしには発揮されない。

お互い人間はどうあるべきか、どう生きるべきか、そのあり方を考える際にいちばん基本となるのは、"人間とはどのようなものか"という人間に対する認識、いわゆる人間観ではないでしょうか。人間というものをどのように考えるかによって、みずからの生き方自体も、あるいは他人との接し方なども変わってくると思うのです。

人間とは何か、ということについては、これまで学問的にも宗教的にも、あるいは暮らしの体験などからも、いろいろな見方がされているようです。たとえば知恵ある動物と見たり、社会的存在と見たり、神性や仏性をもつものと見たり、逆に迷える凡夫だとか欲のかたまりと見たり、また強いものであるとか弱いものであるとか、さまざまな見方がされてきました。

これらはいずれも人間の一つの側面を表わすものといえましょうが、私は基本的には、人間というものは非常に偉大にして尊い存在であると、いつのころからか考えるようになりました。

生来、あまり丈夫なほうではなかった私は、独立して電気器具の製造を始めてからも病気がちで、寝たり起きたりの半病人のような姿で戦争のころまで仕事にあたってきました。

ですから、自分で先頭に立ってあれこれやりたいと思っても、なかなか思うようになりません。そこで、いきおい、しかるべき部下の人に任せてやってもらうことが多かったのです。また任せるについても自分がそのような状態でしたから、中途半端に任せるのではなく、「大事なことだけぼくに相談してくれ。あとは君がいいと思うようにやってくれ」というように思いきって任せざるを得なかったのです。しかし、任されたほうは「大将が病気で寝ているのだから、任された自分がしっかりやらなければならない」と大いに発奮し、十二分の力を発揮してくれました。しかも、そのように燃えている人たちが、みずからの力を存分に発揮しつつ、一つの目標に向かって他の人と協力していくことによって、一プラス一の力が三にも四にもなるという姿が生まれ、組織としても大きなことができたということが、たびたびありました。

そのようなことを経験していくうちに、人間とは偉大なもので、その能力や可能性というものには限りがないのではないか、と思うようになったのです。

私は、人間というものは、たとえていえば、ダイヤモンドの原石のような性質をもっていると思うのです。すなわち、ダイヤモンドの原石は、もともと美しく輝く本質をもっているのですが、磨かなければ光り輝くことはありません。まず、人間が、その石は磨けば光るという本質に気づき、一生懸命に磨きあげていく。そうしてこそ、はじめて美しいダイヤモンドの輝きを手に入れることができるのです。

お互い人間も、このダイヤモンドの原石のように、見た目には光り輝くものかどうか分からない場合もあるけれど、磨けば必ず光る本質をそれぞれにもっている。つまり、各人それぞれにさまざまな知恵や力など限りない可能性を秘めている。そのことにお互いが気づいて、個々に、あるいは協力してその可能性を磨いていくならば、人間本来のもつ特質、よさが光り輝くようになってきます。そこに世の中の繁栄も、平和も、人間の幸福も実現されてくると思うのです。

私たちは、この人間の偉大さというものに案外気づいていないのではないでしょうか。むしろ、人間というものは弱いものである、あるいは、信頼できないものである、自分勝手なわがままなものであり争いを好むものである、といった見方に立っている。そこに今日生じているさまざまな混迷の一つの基本的な要因があるようにも思います。

お互いにこの人間の偉大な本質に目覚め、自信をもつということが大切だと思います。そして、ダイヤモンドの原石を磨くように、人間を本来の人間たらしめようと、これに磨きをかけていく。そうすれば、人間が本来もっている偉大さが花ひらき、そこにはきっと大きな成果があがってくると思うのです。

【出典】 PHPビジネス新書『人生心得帖/社員心得帖』(松下幸之助著)

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