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ヤン・カールソン「真実の瞬間こそが会社の成功を左右する」

ヤン・カールソン「真実の瞬間こそが会社の成功を左右する」

(2016年10月 7日更新)

 
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「ブランド体験」を取り戻すことで、赤字転落必至と言われていたスカンジナビア航空を見事に再建したヤン・カールソンの人材育成論をご紹介します。

 

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39歳の敏腕経営者・リーダー、ヤン・カールソン

「ブランドを広告するのではなく、ブランドを体現せよ」は「マーケティングの神様」と言われたフィリップ・コトラーの言葉である。企業がブランドイメージを構築しようとして最初に思い浮かべるのは広告だが、もし広告と企業の提供する製品やサービスの間にギャップがあったとすれば、せっかくの広告も「嘘をついた」ことになり、かえって企業の信頼を低下させることになってしまう。

ブランドはたしかに広告で一瞬は築くことができるが、ブランドを築き上げ守るためにはお客さまに「ブランド体験」を提供する社員の力が欠かせない。社員による「ブランド体験」を取り戻すことで、赤字転落必至と言われていたスカンジナビア航空を見事に再建したのが、1980年当時39歳の敏腕リーダー、ヤン・カールソンだ。

 

「真実の瞬間こそが会社の成功を左右する」

航空会社リンネフリュを再建した手腕が見込まれての抜擢だ。リンネフリュ時代、カールソンは大幅な運賃値下げと増便、大胆なコストカットで再建しただけに今回も同じやり方を取ると思われていたが、まるで違うやり方に出た。

既にスカンジナビア航空は、コストの一律カットにより顧客離れと社員の士気低下を招いていたからだ。航空会社の評価は規模の大きさとは別に、お客さま一人一人がサービスに満足しているかどうかで決まる。カールソンが調べると、スカンジナビア航空の利用者1000万人はそれぞれ5人の社員と接し、1回の応接時間は平均15秒だ。

つまり、全利用者には一年間に5000万回、スカンジナビア航空の印象が刻み込まれる。カールソンはその一つ一つを「真実の瞬間」と呼び、「真実の瞬間こそが会社の成功を左右する」と考えた。そこでカールソンは最前線でお客さまに接している社員こそが重要と考え、彼らに自分のビジョンを徹底した。そのうえで、アイデアを出し、決定し、実施する責任を委ねることにした。

問題が起こるたびに上司の決裁を仰いでいてはお客さまが後回しになってしまう。お客さまにとって何が良いことかは、現場を知らない上の人間ではなく、現場の人間こそがよく知っている。こうした「真実の瞬間」を積み重ねることがお客さまの満足を得て、たくさんのファンをつくることになる。

カールソンは現場に権限を移し、4000万ドルのコスト削減の一方で、4500万ドルの投資を行って20000人の社員にビジョンを伝える冊子などを配布した。権限と情報を与えられた社員は熱心に職務に取り組むようになった。

結果、スカンジナビア航空はカールソンが社長に就任した初年度に8000万ドルの収益増を達成、1983年には『フォーチュン』が選ぶ「ビジネス旅行客にとって世界最高の航空会社」となった。

 

「顧客第一」を実践できているか

多くの企業が「顧客第一」を掲げているが、心の底から「顧客第一」を信じている企業はどれだけあるだろう。あるいは、自分たちのやっていることのすべてが本当に「顧客第一」になっているだろうか。企業はお客さまの支持があるからこそ存在できる。だとすればお客さまと日常的に接している社員を大切にして、社員に権限と誇りを持たせることこそが企業の成長につながっていく。

カールソンの言う「真実の瞬間」は今日でも最も大切な考え方の一つである。

 

参考文献 『真実の瞬間』(ヤン・カールソン著、堤猶二訳、ダイヤモンド社)、『運が開ける!名経営者のすごい言葉』(桑原晃弥著、PHP研究所)

 


 
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【著者プロフィール】

桑原晃弥(くわばら・てるや)

1956年、広島県生まれ。経済・経営ジャーナリスト。慶應義塾大学卒。業界紙記者、不動産会社、採用コンサルタント会社を経て独立。人材採用で実績を積んだ後、トヨタ式の実践と普及で有名なカルマン株式会社の顧問として、『「トヨタ流」自分を伸ばす仕事術』(成美文庫)、『なぜトヨタは人を育てるのがうまいのか』(PHP新書)、『トヨタが「現場」でずっとくり返してきた言葉』(PHPビジネス新書)などの制作を主導した。

著書に『スティーブ・ジョブズ全発言』『ウォーレン・バフェット 成功の名語録』(以上、PHPビジネス新書)、『スティーブ・ジョブズ名語録』『サッカー名監督のすごい言葉』(以上、PHP文庫)、『スティーブ・ジョブズ 神の遺言』『天才イーロン・マスク 銀河一の戦略』(以上、経済界新書)、『ジェフ・ベゾス アマゾンをつくった仕事術』(講談社)、『1分間アドラー』(SBクリエイティブ)などがある。


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