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人が意欲的になるのはどんな時か【コラム】~中津留秀男

2013年3月21日更新

人が意欲的になるのはどんな時か【コラム】~中津留秀男

長年、ものづくりの現場で人材育成に携わってきた私には、今でも忘れられない思い出深い体験がありますので、ご紹介いたします。 

 

「基礎技能を持っているから、形にしよう」 そんな言葉から、Nさんの技能検定1級への挑戦が始まりました。Nさんは、入社して11年。聾唖のハンディを持ちながら、機械運転を担当、しかも機械加工作業もこなす、優秀な技能者でした。しかし、過去何度かの1級の国家検定にチャレンジするものの、学科試験に合格しない、自己流で学習しても、用語の意味がわからない、という状況が続いていました。

 

上司のT班長からは、「聾唖ということに甘えるな」と厳しい言葉も飛び交う中で、1級への挑戦意欲も薄れ、目標を失いかけていたある時、社内検定への挑戦をもちかけられました。社内検定の学科は日常の生産工程に関する内容であり、テキストを読めば理解できるはずなので「先ず2級を取得してみてはどうか」と打診したところ、本人は「いやだ」と言ってきました。実技技能に自信があった彼は、仕事に対するプライドから「1級でないといやだ」と言ってききません。  

 

1級は2級よりはるかに難しく、いきなりは無理だろうと周囲の人たちは判断したのですが、本人の意思は固かったので、職場メンバーの協力のもと、週2回、午前中2時間の実技練習を設定しました。仲間の聾唖者の方2名も2級に挑戦することで、静かな手話の世界で熱のこもった実技練習が始まりました。問題の学科は11単位、やはり専門用語には戸惑いがありましたが、わからない事は、現物やシミュレータを作成し、テキストと照らし合わせ、原理・原則を理解していくLearning by Doing手法を採用しました。

 

手にした資料はチェックの赤ペンで真っ赤になっていました。実技の厳しい精度を出す訓練にも耐え、工具箱を小脇に抱えての道場通いの後姿に、いつしか頭の下がる思いを感じました、とT班長、そして、3ヶ月間の言葉には言い表せない努力が身を結び、見事「合格」の通知が届いたのです!しかし、Nさんはそれに満足することなく「社内の技能競技大会で金賞を取れば、仕事のランクを一つ上げてくれるのですか」と、次の目標に向かって新たな意欲を掻き立てていました。

 

ハンディを乗り越えて、高度な技能検定に挑戦し続け、見事合格したNさんも立派なら、ハンディを認めながらも妥協を許さない、厳しくも、思いやりのある上司(T班長)にも感銘いたしました。

 

 


 

中津留秀男 なかつる・ひでお

昭和44年(1969)松下電器産業㈱(現・パナソニック(株)エナジー社)に入社。乾電池事業部に配属、乾電池設備開発設計に携わる。昭和57年(1982)機械技術センターで、海外プラントの設備設計・出荷・導入を行なう。平成3年(1991)テクノ運営室の設立に参画、教育・訓練の企画運営、平成13年(2001)モノづくり研修センター製造研修チームのチームリーダーとして、安全教育の体験型プログラムの開発を始め、モノづくり系社員の教育・訓練を企画・運営、行動学習「Learning by Doing」の手法を研修に取り込む。

現在、パナソニックバッテリーエンジニアリング㈱に在籍、現場力強化支援を初め、教育・訓練企画運営、講師を担当、チャレンジ、創意工夫が大好き、人と人、心と心の通った教育訓練企画、運営が信条。 

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