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女性リーダー育成のポイント【コラム】~藤野祐美

2015年3月12日更新

女性リーダー育成のポイント【コラム】~藤野祐美

女性社員のなかからプロフェッショナル・リーダーとして活躍する人材を育てるためには、どういう施策が必要なのでしょうか――外資系企業でリーダーとして活躍してこられた藤野祐美氏のコラムです。
 
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私は「男女雇用機会均等法世代」が施行されるのと前後して、国内メーカーで社会人としての一歩を踏み出しました。ここでは女性としての限界を感じることが多くありました。まだまだパワハラ・セクハラまがいもまかり通る時代。上司の親心からか、危険な国への出張をさせてもらえない。そんなこともあって、機会を得てヨーロッパ資本の企業の日本法人立ち上げに参画することにしたのです。
 
そこで、まず上司に言われたのが「この会社でやっていくために条件が3つある」ということ。一つは事業を3年で黒字にすること、二つ目は5年で業界日本一にすること、そして最後に、それができなかったら会社をやめてくれということです。そんな条件でしたから、私はビシバシ行こうと思いました。リーダーたる者、なめられてはいけない。そのかわり資金は潤沢にあるから、金払いをよくしよう。ターゲットをとらえた人のボーナスは現金で数百万円、未達ならゼロ。まさに「飴とムチ」のリーダーシップです。
 
しかし、2年目も終わりにさしかかるころ、どう考えてもこのままいくと目標をとらえられないとわかりました。そしてスタッフに「助けてほしい」と話をしたのです。資金は潤沢と言ったけれども、それは期限付きであること。このままでは皆で仕事をやめることになること。どうしたらターゲットをとらえられるか知恵を出してほしいとお願いしました。そうするとスタッフの顔色が変わってきたのです。皆が真剣に仕事に取り組むようになりました。皆から知恵やアイデアがどんどん出てくるようになりました。
 
当時の私は、リーダーシップのスタイルは一つではないということを知りませんでした。上から物を言って抑えつける「飴とムチ」の方法が唯一のリーダーシップだと思っていたのです。今考えると、それまで勤めていたメーカーの職場にロールモデルとなる人がいなかったこと、社外にネットワークがなかったことも原因と言えるでしょう。女性管理職自体が珍しい時代、男性社員ならばあるはずの「暗黙知」が得られなかったのも大きいと思います。松下幸之助さんは言っています。「衆知を集める」と。人を支え、助け、成功するために知恵をあつめ、皆の後押しするのもリーダーです。そしてリーダーの在り方によって道が開けることもあるのです。
 
私が外資系の企業に身を置いて驚いたことがもう一つあります。それは、当時から、女性の管理職は特別な存在ではなく、仕事ができるから管理職になっている。女性も男性も関係ないという職場風土があったことです。女性マネージャーは働きながら家庭を大事にし、子どもを育て、冬休み・夏休みを楽しんでいました。さらにノルウェーの企業には当時から女性の役員がいました。ノルウェーには、役員は男性も女性も4割を超えないといけないという法律があり、それができないと上場廃止になります。そのため、制度の整備はもちろん、女性リーダーを育てるための継続的な育成が行なわれていました。
 
ダイバーシティのなかでも比較的取り組みやすいといわれる女性活躍支援の問題。いささか取り残された感のある日本の企業は、どこから取り組めばいいでしょうか。「まずは制度をつくる」という企業が多いです。たとえば女性が働きやすくというので産休・育休の制度をつくるとします。最長で8年休める例もあります。ある女性がその制度を使って24歳から8年休んで、32歳で職場復帰するとします。さあ、あなたはこの女性をどう活かしますか? キャリアの基軸をつくる貴重な30歳までの期間が白紙になっていた女性を、リーダーとして育成できますか? 制度をつくるのは大きな一歩になります。しかし、仕事を免除するなど育児との両立支援に過剰に配慮した制度をつくると、その制度を利用することでスキルや経験差を生み出すことになり、かえって女性のキャリア形成を阻害することがあります。女性社員にどのように活躍してほしいのか、それを反映した制度づくりと運用が求められているのです。
 
厚生労働省の「平成23年度雇用均等基本調査」で、女性管理職が少ない・全くいない理由を尋ねた結果が公表されていますが、その第一位が「現時点では、必要な知識や経験、判断力等を有する女性がいない」という回答でした。これはそもそも女性の能力が低いということなのでしょうか。「ハーバードビジネスレビュー」誌に7000人のリーダーに対し、次にあげるリーダーシップ・コンピテンシーについて、男性、女性、どちらが優れていると思うかを答えてください、という調査結果が掲載されたことがあります。
 
【リーダーシップ・コンピテンシー】
1 指導力を発揮する
2 自己開発する
3 誠実で正直である
4 結果を出す
5 周囲の人を成長させる
6 周囲の人を鼓舞し、動機づける
7 人間関係を構築する
8 協力し、チームワークを発揮する
9 ストレッチゴールを設定する
10 変革を支援する
11 問題を解決し、課題を分析する
12 精力的に幅広くコミュニケーションをとる
13 社外ネットワークを持つ
14 革新を起こす
15 専門知識にたける
16 戦略的見解にたける
 
この調査結果は、1~12は女性が優れている、13、14、15、は、わずかに男性という回答が多いものの大差ない、16は男性が優れているという衝撃的なものでした。ここから考えられるのは、女性に能力がないのではなく、リーダーシップを発揮する機会を与えられていないということです。「やったことがない」と「できない」は混同されがちですが、これはイコールではありません。女性活躍を支援するには、機会を与えること。この認識が欠かせないといえます。
 
加えて「女性社員の意識改革」も重要な課題の一つです。一般に「ティアラ・シンドローム」といわれますが、女性はどちらかというと “目の前の仕事に全力を尽くしていれば、誰かが認めてくれて自然に昇進する”と考えがちです。そして、優秀な女性ほど何でも自分でやろうとします。しかし管理職や役員として活躍するには、自分の殻をやぶって周りを動かすことを学ばなければなりません。
 
意識改革を促すうえで、対象を「女性社員」とひとくくりにとらえがちですが、今の企業現場では相容れない三世代が同居しています。
 
sannsedai.png世代が異なると、やはり同じ施策では効果が見込めません。たとえば、ワークライフバランスを重視し“やりがい”ベースの自然体キャリアを志向している20代、30代をリーダーとして育成するには、まずもって早い段階で “兼業主婦”から“兼業管理職”へのモードチェンジを促す必要があります。30歳前後までにキャリア基軸を形成させ、管理職昇進の前にリーダーシップを養成し、管理職昇格後数年以内にリーダーシップを強化し、マネジメント理解を深めさせるといった段階的、体系的な育成が求められるわけです。
 
また、女性でリーダーとして長く活躍する人材が育ちにくい理由として、女性リーダーは数が少ないため何をやっても目立つということもあります。特に失敗をすると目立ちます。社外から招へいされる女性役員の例を見るとよく分かりますね。短期間で去っていく方がほんとうに多いです。「失敗ばかりが取り上げられて、やってられないわ」と去っていくわけです。女性役員の存在は目立ちます。風当たりも厳しいです。男性に比べて、失敗したときに再チャレンジする機会も与えられにくいといえるでしょう。しかし、一般的にリーダーを大きく成長させるものは修羅場経験だといわれます。女性リーダーにとっても、リーダーとして修羅場の経験を積むということは成長に欠かせません。外資系企業では、まったく経験のない部門で一定期間リーダーの責を果たすという、いわゆる「修羅場研修」があるほどです。継続して成長の機会を与える、これも欠かせない女性リーダー育成のポイントといえるでしょう。
 
女性活躍推進は、今やまちがいなく企業存続のためのマネジメント課題です。ここまで述べてきた制度の整備、活躍機会の提供、教育のほかにも、ロールモデルの提示、トップのコミットメントを含めた組織風土改革、上司の意識改革・育成スキルの習得、メンターによる支援など、点ではなく面での支援にもっていくという取り組みが欠かせません。その取り組みの一つとして、私たちが提案する研修を考えていただければと思います。
 
 
【講師プロフィール】
 
 
藤野祐美 (ふじの・ゆみ)
大手事務機器メーカーの販売企画、外資系企業の国際人事を経て、オランダ資本企業の日本法人立ち上げに参画、アジア地域の人事業務全般を担当。現在、企業・各種団体・学校向けに人材開発に関するファシリテーションやコンサルィングを行なうとともに、自身の体験をもとに女性リーダーの育成に全力投球中。著書に『上司は仕事を教えるな!』(PHP研究所)などがある。
 
 
 

 
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