課長職にマネジメントの革新を!
RSS

初級管理者の役割と姿勢~部下を通して成果を上げる

初級管理者の役割と姿勢~部下を通して成果を上げる

(2012年10月26日更新)

 
  • はてなブックマーク
  • Yahoo!ブックマーク
  • Check

変化の激しい時代に求められるリーダーのマインド・知識・スキルとは何でしょうか。通信ゼミナール『【新版】管理者実践コース[初級]』は、初級管理者としての仕事の原理原則を9つのテーマで学習し、次世代リーダーにふさわしい人材を養成することをねらいとしています。
 

ここでは、本コースのテキストから「管理者に期待される役割と姿勢」について、営業課の横山係長のケースを通して学んでまいります。
 

*  *  *

【CASE STUDY】

 どのように頑張るのか!

 

「ちょっと欲張りすぎじゃないか? 本当に大丈夫なのか?」
「確かに今期の見込みも前年程度ですから厳しさはあります。しかし、今の状況に縛られて萎縮したら、さらに落ちてしまいます」
「それはわかるけど……。しかし設備投資も伸びる状況ではないし、それに、部下は本当にやれると言っているのか?」
「設備投資の見通しも聞いてはいますが、それにとらわれても仕方ありません。みんな頑張ると言っています」
「とらわれる必要はないが、うちの売上にとっては重要な要因だよ」
課長は、それでも不安な面がありましたが「必ずやりきる」という係長の言葉を尊重することにしたのです。

 

横山さんは営業課の係長です。今日は課長に来期の売上計画についてグループ内での検討結果を報告しています。課長が「本当に大丈夫なのか?」と心配しているのは、今期の売上見込みに対して約10%アップの計画を報告したからです。グループ内での会議の様子は、次のようなものでした。

 

「みんなが出してくれた数字を見たけど、全員、今期見込みプラスアルファ程度じゃないか。みんな、本気でやろうとしているのか?」
「もちろん、誰もがやる気でやっています。しかし、主要得意先の多くは設備投資が大きく伸びる状況ではありません。よくて今年並みです」
と、一番年長の部下の伊藤君が声をあげました。
「できない理由なんていくらでもあるよ。それでも、何とか頑張るのが営業だし、仕事というものじゃないか!」
「しかし、見通しが立たない目標を立てても仕方ないと思いますが……」
「仕方ないとはどういう意味だ。だいたい見通しなんてものは、やりながらつくっていくものだ。最初から見通しが立つことなんてありえないよ」
「それはわかります。では、係長の目安はどの程度ですか?」
「今期見込み対比で10%増かな」
「10%増! どんな見通しから出た数字ですか? とても無理です」
「太田君や五十嵐君はどう思うの?」
「……」
「とにかく私は10%増を基本にしたいと思う。業績も雰囲気も停滞気味なときこそ、思い切った目標を掲げるべきじゃないか」
「萎縮してはいけませんが、設備投資の見通しなども含めて、もっと話し合いの時間を持ったほうがよいと思うのですが」
「設備投資の見通しを含めてというが、その結果が“今年度見込みプラスアルファ”では意味がないよ」
こんな調子のやりとりが続きましたが、最終的には「10%増を基本に各自が売上目標案をつくる」ということになったのです。
 

翌日、横山係長が課長に報告した結果を部下に説明しました。
「昨日、課長に報告した。課長からは『私もこの計画を真剣に受け止める。とにかく実行あるのみだ』と言われた。絶対にやりきります、と言ってきた。私に恥をかかせないでくれよ。質問がなければミーティングは終わりだ」
3人の部下からは質問も意見もなくミーティングは終わりました。

 

今日は、同期でもう一つの営業グループの岡田係長と来期の計画についての話し合いです。
「うちは今年度の見込みに対して4%増ぐらいだけど、横山君のところ10%増だってね。ずいぶん大きな計画だけど、大丈夫?」
「雰囲気も停滞気味だから、思い切った目標にしないとね」
「部下たちは納得できているの?」
「もちろんだよ。最初はみんな今期見込みプラスアルファ程度の数字を出してきたんだ。そこで、みんなを集めて『君たちは本気でやる気があるのか』と怒鳴りつけたんだ。私の熱意を伝えるには効果があったと思うよ」
「本当にそうかなあ? 彼らが“今年度プラスアルファ”という目標を出してきた理由を聞いたの?」
「できそうなことしか言わないんだよ。だから、私から10%増を基本にするという指示を出したんだ。最初は『自信がない』と言っていたけど、『自信は実績を上げるなかで自然にできてくるものだ』と言ったら、その後は自信がないとは言わなかったよ」
「うちは、今回は今年度対比という考え方で計画をつくらないようにしたんだ。もちろん最終的には今年度対比という形でまとめるけど」
「どういうこと?」
「要は『昨年対比○○%』が先にあるのではなく、一人ひとりがどんな方法で、どれだけやろうとするのか、やりたいのかを基本にして個別の話し合いと全体の会議を繰り返して作ったわけだよ。過去の延長線上で考えてはダメだ、って言うだろ。その意味を考えながら、みんなで計画を作ったんだ」
「その結果が4%増なの?」
「そうだよ。利益率改善のための方策も計画に入れているから、全体としては今年度よりレベルアップできる計画だ」


*  *  *
 

新しい期がスタートしてすでに3カ月が過ぎようとしています。そんなある日のこと。
「あれほど、どうしてもやり遂げようと確認し合ったじゃないか! あのときの気持ちを忘れてしまったのか! このままでは、例年どおり前年実績とほとんど変わらない結果で終わってしまうじゃないか。それでいいのか!」
と、横山係長は部下を叱咤激励しています。


【解説】

 

ケースを読んでどんなことを感じましたか。あなたが横山係長ならどうしますか?
本章のテーマは「管理者に期待される役割と姿勢」です。
次回からこのケースについて、管理者としての意識改革や、管理するとはどんなことかについて、総論的に学習していきましょう。

 

管理者としての最低条件は「やる気」です。何とかして、もっとよくしたい、という気持ちがなければ、管理者は辞めたほうがよいのです。その意味でケースの横山係長は立派と言えるかもしれません。


ただし、「やる気」は最低条件であって、自分がやる気になってさえいればよい、というものではありません。その点を間違ってはいけないのです。こんなに私が一生懸命やっているのに部下がわかってくれない、という管理者を時々見かけますが、わかっていないのは管理者のほう、ということも多いのです。少なくとも、横山係長の場合、部下の意思や考え、問題意識を知ろうとしないところに問題があります。要するに年間目標という最も大切なテーマを上司・部下の相互理解がないまま決めてしまったのです。

 

ケースにあるように、「意見や質問がないかなんて言ってるけど、もともと人の意見など聞く気もないくせに」と、3人の部下は口を揃えて言っています。また、「3年連続で目標未達成だから、ここで踏ん張らないと後がないって感じかなあ」「本当にできると思っているのかなあ」などと、たいへん冷ややかな感じで受け止めています。

 

管理者としてやる気を前面に出すことは必要ですが、そのやる気は「部下のやる気」を引き出すものでなければ、管理者の暴走になりかねないのです。

 

新しい期がスタートして3カ月が過ぎた頃、「あれほど、どうしてもやり遂げようと確認し合ったじゃないか! あのときの気持ちを忘れてしまったのか! このままでは、例年どおり前年実績とほとんど変わらない結果で終わってしまう」と、目標設定時と同様に横山係長自身のやる気がカラ回りしているのです。

 

■目標の納得度と設定プロセスのデザイン

すべての人が100%納得できる目標を立てるのは難しいことです。しかし「なぜ、ここまでの目標に取り組むのか」の理解度・納得度を高めることは部下の力を引き出すうえで不可欠です。もちろん、部下に受け入れられる目標とは、部下の言いなりで部下の意見さえ取り入れればよいというものではありません。管理者としての方針を示すとともに、部下一人ひとりが抱えている問題、問題意識、希望などをぶつけ合い、その過程を通して理解度・納得度を高めることが必要です。言い換えれば、効果的な目標設定のプロセスをデザインし、実践することが管理者の大きな役割といえます。

 

そのためのポイントとして、

1)会社や部門の目標・方針の部下への浸透

2)職場の実績面、職場運営面に関する状況把握と問題の整理

3)自職場の目標に対する管理者としての考え方の提示

4)目標達成への方策案の提示

5)自由な討議の場づくり

 

などが挙げられます。ケースの横山係長が目標設定のプロセスをデザインできていなかったことは、明らかではないでしょうか。

 


■部下を通して成果を上げる

横山係長は、この大原則をあらためて確認する必要がありそうです。
会議やミーティングでは横山係長からの指示が中心で、メンバー全員で話し合うことも少ないようです。これでは集団活動とは言えません。役割と責任を受け持った一人ひとりが集まり、そのうえで互いに協力し合える職場をつくることが必要です。そのためには、互いの仕事の状況を知り、協力・助言がし合えるようなコミュニケーションの場を職場運営の仕組みとして確立する必要があります。

 

成果が上がらないのはやる気の問題だ、というのでは「頑張れ」という叱咤激励しかなくなってしまいます。「何を、どう頑張ればいいのか」、それを具体的な課題に仕上げてメンバー全員で取り組めるようにしなければならないのです。

 

横山係長に求められることは『人の上に立つことに対する意識改革』です。部下中心に成果を上げることが管理者の役割です。今後、横山係長がもっと多くの部下や、広い範囲の仕事を管理する立場に立ったとき、現状のままでは成果を上げられる管理者になることはできません。管理者としてさらに成長するには、「管理者に求められる役割とは何か」を学ぶ必要があります。

 

●監修・執筆講師―――

水井正明 みずい・まさあき

1938年、京都に生まれる。1960年、関西学院大学文学部哲学科卒業。1991年、南山大学大学院経営学研究科経営学専攻博士前課程修了。1996年、関西学院大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。1962年、経営コンサルタント活動を始める。1966年、兵庫県芦屋市に「産業社会学研究室」開室。
1968年、名古屋市に(株)産研を設立する。現在、産業社会学研究室室長。松下グループを始め各社で、行動科学、組織開発、社会学をベースにした教育、教育担当育成、海外での教材開発、講演活動、企業診断を担当する。著書多数。

 


 

通信ゼミナール
『【新版】管理者実践コース[初級]』

主任・係長・班長などチームリーダーおよびその候補者を対象とした3カ月コース。
実践的なケースから初級管理者として必要なマネジメントの原理原則を習得し、応用力を身につけます。


メールマガジン

更新情報をメルマガで!ご登録はこちらからどうぞ