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初級管理者の役割と姿勢~どんなリーダーを目指すか

初級管理者の役割と姿勢~どんなリーダーを目指すか

(2012年11月 5日更新)

 
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中堅社員から初級管理者へ。昇進・昇格にともない、その役割も変わってきます。どのようなリーダーを目指すべきか、初級管理者の役割と姿勢を、PHP通信ゼミナール『【新版】管理者実践コース[初級]』のテキストからご紹介します。
 

 

*  *  *

 

矛盾こそ発展のエネルギー源

 

あなたは、これまで職場のベテランとして後輩や仲間の相談に乗ったり、不満のはけ口になったり、まるで苦情請負人のような存在だったかもしれません。だから「職場のまとめ役」として上司からも期待され、あなた自身もそんな自分を自認していたのではないでしょうか。後輩の不満を聞き、その一部を上司に上げることで、後輩からの信頼を得ていたはずです。

 

管理者になった今、今後は、部下の不満解消役になってやろうと思っていることでしょう。部下の不満に応えることは必要です。ただ、今までと同じように、「部下がこう言っています」と上司に伝えるだけでは、上司と部下の期待に応えることはできません。

 

管理者には、伝達役のほかに、不満や問題の解決役という役割が求められます。単に伝えるだけでは、上司の「能率の論理」に説得されてしまいます。能率の論理とは、多少の犠牲や我慢を強いても、目標達成を優先するということです。その結果、部下の不満に対し「組織とはそんなものだよ」と慰めるだけでは、誰も納得しません。

 

組織に矛盾はつきものです。だからこそ、組織は常に革新を必要とするのです。部下からは、我慢したあげく、爆発したかのような不満や要望を突きつけられることもあります。一方、上司からは目標達成を至上命令として突きつけられます。あなたは、「目標達成は当然だし、部下の言うこともわかる」という葛藤に悩むでしょう。

 

あなた自身がそうであっては困りますが、上司の中には、今までの手馴れたやり方にこだわりすぎて、変化を嫌う人がいます。そしてつい、慣性や惰性というカギをかけ、古い常識や経験だけで判断しようとします。逆に若い人は、新しいやり方を好み、「さらにもっと変化を」と提案してきます。それに対して、管理者は「時期尚早だよ」「以前、失敗した」という理由で、はねつけようとします。これも葛藤の種になり、組織活動の矛盾になります。管理者になったときに初めに出会うのがそうした矛盾です。

 

矛盾とは、居心地の悪い状態ですから、多くの人はそこから逃れようとします。しかし管理者は、矛盾から逃げずに、矛盾こそ発展のエネルギー源と考えなければいけません。

 

矛盾を生み出している原因を表に出し、全員の知恵を集めて改善への力とするのです。現状を一歩ずつ改善する力の原点に矛盾があるのです。

 

どんな管理者を目指すか

 

「リーダーシップ」という言葉には、集団を引っ張るというイメージがあります。しかし集団は、あなたの思うように簡単に引っ張ったり動かしたりできるものでしょうか。

 

部下の立場にいたときは、上司は簡単に集団を動かしていたように見えたかもしれません。しかし実際はそうではなく、お互いの関係が日頃からうまくいっていたために、協力して仕事ができていたのです。決して、上司が一方的な力で集団を動かしていたわけではないはずです。

 

あなたも、上司の能力や人柄、仕事への姿勢などを認めていたから協力し、共に頑張ったのではないでしょうか。そんな上司であれば、強引に引っ張られているとは感じないものです。

 

一方で、集団をまとめよう、引っ張ろうとしすぎるとかえってうまくいきません。それよりも、部下が成果を上げるために仕事がしやすいようにすることです。たとえば、適切な指示や指導をしたり、相談に乗ったり、問題を解決したり、部下の意欲を盛り上げたりして、まず管理者が部下に協力することです。そんな上司であれば、部下は認めてくれ、積極的に協力してくれます。

 

部下の成果の合計が管理者の成果になるのですから、これこそが、成果の上がるリーダーシップです。本当のリーダーシップは、管理者中心に動くのではなく、部下が動いて力を発揮するのです。そのためのお世話役が管理者なのです。

 

上司に対して働きかける

 

「部下を通じて成果を上げる」ために、部下に対してさまざまに働きかけることは当然です。しかし、それがすべてではありません。あなたには上司がいます。管理者として上司に働きかけ、動かすということは大切な役割であり、管理者能力の一つと言えます。ここでは「補佐」という観点から考えます。

 

補佐という機能には多く分けて「補完の役割」「補佐の役割」「テコの役割」の3つがあります。

 

(1)補完の役割
上司の足りないところを補完するという意味です。上司の考えを起点にしながら、違った視点から上司とあなたの考えを組み合わせることによって、上司の考えや方針をより強化することができます。

 

(2)補佐の役割
補佐の「補」も「佐」も助けるという意味です。「補って助ける」以上に「助けて務めを果たさせる」と解釈する機能です。上司の限られた時間や限られた知識、限られた経験を助けて上司の役割を果たさせる機能です。

 

(3)テコの役割
上司の意図を拡大したり、細かく解釈したり、集団に周知徹底したりする機能のことです。

 

組織の階層は、お互いが担いだり担がれたりする関係です。組織図には描かれていま一せんが、上位に補佐という役割が適正に働くと、組織活動はよりスムーズになるのです。

 

初級管理者の4つの顔

 

あなたは、実務の一部を直接担当しながら「部下を通じて成果を上げる」という二つの役割を担っていることでしょう。ただ、人の上に立つということは、担当者のように実務をこなすだけではありません。「自らこなす」から「部下にやらせる」という大きな転換が必要です。管理者には以下のような4つの顔があります。

 

(1)まとめ役の顔
集団のまとめ役としての顔です。部下一人ひとりの意欲を高めること、部下の能力や個性に合った仕事を分担させること、全員が協力できるようにチームアップすること、などの役割を果たします。もちろん、人材育成も含まれます。管理者になったとき、多くの人がイメージする代表的な顔がこの「まとめ役の顔」です。まとめ役が管理者のすべてと思う人がいるかもしれませんが、まとめ役はあくまで管理者の一つの顔にすぎません。

 

(2)問題解決の顔
仕事は問題解決の連続です。特に管理者になると、部下の問題解決を援助したり、職場全体の問題に取り組んだりします。また、お客様とのトラブルを解決したり、他部署と調整して問題を解決することも少なくありません。
部下だったときは、問題が起きれば上司に持ち込めばよかったのですが、今度は部下から相談や解決を持ち込まれる役割を担います。問題解決に弱いと、結果的に成果の上がらない職場になってしまいます。

 

(3)戦略家の顔
戦略家とは、今後、組織がどのような方向を目指すべきかを描く人のことです。そのような役割は、もっと上の人の仕事だと考えるかもしれません。しかし日常業務をこなすだけでなく、新しいことへの取り組みをプランして上司に提案し、部下に示すことも大切な役割です。
今後、管理者としてさらに成長するには、今から身につけたい重要な能力です。

 

(4)伝道師の顔
企業には経営理念があります。将来に向けての夢や具体的な計画もあります。また、今日まで積み重ねてきた歴史もあります。
理念や夢、歴史を共有化することにより、若い人たちは自分たちの仕事に意義や価値を見つけることができます。それにより一人ひとりの目標設定ができ、仕事のやりがいをつかむこともできます。管理者には歴史や理念を伝える役割もあるのです。

 

出典:通信ゼミナール「管理者実践コース[初級]」

 

課長研修

 

●監修・執筆講師―――

水井正明(みずい・まさあき)

1938年、京都に生まれる。1960年、関西学院大学文学部哲学科卒業。1991年、南山大学大学院経営学研究科経営学専攻博士前課程修了。1996年、関西学院大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。1962年、経営コンサルタント活動を始める。1966年、兵庫県芦屋市に「産業社会学研究室」開室。
1968年、名古屋市に(株)産研を設立する。現在、産業社会学研究室室長。松下グループを始め各社で、行動科学、組織開発、社会学をベースにした教育、教育担当育成、海外での教材開発、講演活動、企業診断を担当する。著書多数。


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