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日本型成果主義――「社員を大切にする会社」の人事評価

日本型成果主義――「社員を大切にする会社」の人事評価

(2013年10月 3日更新)

 
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日本の企業が、1990年代後半から、従来の日本的経営を支えてきた年功制を捨て、成果主義の導入に踏み切ったのは、経済の沈滞が長引くなか、社員の士気や企業の競争力、業績を高めるためでした。

 

ところが、導入の意図とは裏腹に、弊害が生じた事例が相次ぎました。行き過ぎた成果主義により、社内が混乱し、業績が著しく悪化してしまった企業もありました。行き過ぎた成果主義が運用されると、士気や競争力が高まるどころか、企業と社員の価値を低下させる事態に陥ってしまいます。

 

行き過ぎた「成果主義」が企業と社員の価値を下げる!

成果主義というのは、一般的には、「成果」イコール「実績」、「成果」イコール「数値で測れる結果」であり、これらの評価に基づいて報酬や処遇を決めるやり方といえます。行き過ぎた成果主義では、短期的な実績、数値だけが重視され、成果に至るまでのプロセスは無視されてしまいます。そうなると、研究開発や部下育成をはじめ、長期にわたる目標の設定やチャレンジは不利になるなどの弊害が生じます。

 

人事評価は、プロセスにもフォーカスを当てなければ、うまくいきません。そして、プロセスにフォーカスを当てて評価するためには、「コンピテンシー」いわゆる行動目標が必要となります。

 

 

数値だけではない貢献を評価

プロセスにフォーカスを当てて評価をする場合、大きくは2つの要素を考慮する必要があります。

1つは期間です。業務によっては、単年度ではなく、もう少し長いスパンで見て、そのプロセスを評価する必要があります。長期的なプロジェクトの推進など、この目線が大切です。

 

もう1つは、直接的な数字だけではない会社に対する貢献です。会社に対する貢献としては、会社の方針に従って行動することができる「コーポレートロイヤリティ」(会社に対する忠誠心)や、部下・後輩の指導・育成などが挙げられます。

 

会社は、プレーヤーとして結果を出すということ以外のところでも、社員を評価しなければいけません。集団で仕事をしているわけですから、全体に対しての働きかけ、配慮なども評価に入れることが大切です。そうでないと社風を形成する上でも好ましくありません。

「結果さえ出せばいいんでしょう」

ということで、社風が荒くなってしまいます。

 

中堅・中小のベンチャー企業にありがちなのですが、結果だけを重視していると、

「俺は、朝、来なくても数字は出す。月末の数字を見てくれ」

というふうに、勤怠をはじめ身だしなみなども、たいへん無頓着になっていきます。そして、それを許容するマネジメントをしていると、大きなチームが作れない、社員の定着率が悪く、より報酬の高い会社へ移ってしまうなど、社風が荒れる以外の弊害も生じてきます。

 

また、結果だけを求めていると、人材を育てるプラットフォームが形成されず、普通の人が入社して頑張れるような会社ではなくなってしまいます。優秀な人が入ってくれば、それでよいということになり、語弊があるかもしれませんが、人材を使い捨てるような会社になってしまいます。

 

私が感じる良い会社、リーマンショックと東日本大震災後も成長し続けている会社には、社員を育てる風土があります。そういう風土がある会社には、行き過ぎた成果主義はありません。会社の理念や、周りに対する配慮、チームワークなどを、とても重んじています。

 

たとえば、東京・渋谷にあるウェブ関連の会社では、「スマイル手当」というのを定めて支給しています。周りに対してちゃんと笑顔が出せる、お客様に対してきちんと応対ができるということにマネジメントの優先順位を置いているのです。売り上げの数字を出すことはもちろん重要です。しかし、あえてそれを前面には出さず、目標・評価の仕組みをうまく工夫している会社のほうが、社員の定着率が高く、結果も出て、伸びているのです。私は、そういう会社を数多く見てきています。

 

プロセスを重んずる成果主義を「日本型成果主義」と呼ぶこともあります。私なりの解釈ですが、日本人には、アメリカ型の白か黒かという評価制度は向かないのではないでしょうか。「ほかの人は全く関係ない」「ほかの人を蹴落としてでも、自分さえ良ければいい」という社風の会社は伸びていないのではないでしょうか。

 

日本人には、やはり和を重んじ、協調性を持って、周りの人と一緒に事業活動に取り組むほうが合っているのです。売っている物は同じでも、「隣のデスクの人は関係ない」「自分さえ良ければいい」という殺伐とした雰囲気の会社よりは、「一緒にチームプレーで頑張ろう」「誰かが数字を取ったら、みんな笑顔で拍手しよう」というほうが、日本の社会には向いていると思います。

 

働く社員からしても、結果重視で殺伐とした会社と、プロセス重視で仲間と一緒に頑張ることができ、自分も成長できる会社とでは、どちらが働きやすいかといえば、間違いなく後者でしょう。

 

コンピテンシーを基に評価

プロセスの評価では、「コンピテンシー」が非常に重要となります。コンピテンシーとは、「仕事ができる人の行動特性」のことであり、「行動目標」や「プロセス目標」ともいわれています。

 

仕事ができる人の行動特性を分類し、バランスの取れた多面的な評価軸として活用します。成果を出すためのプロセスで、コンピテンシーに基づき行動改善目標を掲げ、それを一定のウエイトで評価するということです。

 

分かりやすく簡単に説明しましょう。たとえば、チームのアシスタントが「毎朝、遅刻をしないで、ほかの社員に対して笑顔で挨拶をする」という行動改善目標を掲げているとします。

 

チーム全体では売り上げ目標を達成するという成果目標を掲げているとしたら、その行動改善目標は、間接的かもしれませんが成果目標に連動しているのです。チームプレーで仕事をしている場合、そのチームの人たち全体のモチベーションが上がるか下がるか、それがとても重要になります。

 

アシスタントが、毎朝、遅刻をせずに、笑顔でチームの人たちに挨拶をして、きちんと身の回りの掃除などをすれば、みんなが気持ち良く仕事ができます。その積み重ねが、チームのパフォーマンスを最大化することにつながるのです。

 

プロセスの評価では、こうした行動改善目標をしっかりと設定し、それができたかできなかったか評価をすることが大切です。

 

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コンピテンシーの項目として、著者の高橋恭介氏が推奨しているのは、8群75項目のコンピテンシーです。これは、株式会社あしたのチームの望月禎彦社外取締役が監修されたもので、ビジネスシーンにおける仕事ができる人の行動特性を、重複なく網羅しています。

望月氏は、ユニ・チャーム株式会社の人事部を経て、人事政策研究所を設立し、独自のコンピテンシー理論を確立。8群75項目のコンピテンシーには、そのノウハウが詰まっています。

それを本書『「社員を大切にする会社」の人事評価』では、活用方法も含め、すべて公開しています。これからプロセス評価を取り入れたいという会社や、今までの人事評価・目標管理を見直したいという会社にも活用していただけたら幸いです。

 



高橋恭介  たかはし・きょうすけ

株式会社あしたのチーム代表取締役社長。1974年、千葉県生まれ。東洋大学経営学部卒業後、興銀リース株式会社へ入社。リース営業と財務に携わる。その後、設立間もないベンチャー企業、プリモ・ジャパン株式会社に入社。数十名だった従業員が500人規模へ躍進した同社の副社長を務め、人事にも深く携わる。台湾子会社代表も歴任。2008年、株式会社あしたのチームを設立。2013年、徳島県三好市にサテライトオフィスを開設した。

 

出典:

『「社員を大切にする会社」の人事評価』

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