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下請法 4つの遵守義務~発注者のコンプライアンス

2013年10月23日更新

下請法 4つの遵守義務~発注者のコンプライアンス

「下請法」の4つの遵守義務と発注者のコンプライアンスについて解説します。

「下請法(下請代金支払遅延等防止法)」とは

ある事業者が、業務の一部を他の事業者に委託する下請契約。一般に、業務を委託する親事業者が、業務を委託される下請事業者よりも優位な立場にあります。取引先からの委託製造が売上の大きな割合を占めている中小零細企業にとって、取引先の機嫌を損ねることは、まさに死活問題。自社にとって不利な取引を一方的にいわれても受け入れざるをえない状況も少なくありません。
このような、親事業者が下請事業者に対して優越的地位を濫用する行為を取り締まる法律を「下請法(下請代金支払遅延等防止法)」といいます。

下請法に違反するとどうなる?

下請法違反をすると、その企業は、公正取引委員会から勧告を受けます。たとえば下請金額を減額した場合、減額した金額を支払うこと、違反行為を行なわないよう取締役会で確認すること、再発防止措置を従業員に周知することなど、違反した行為の是正を求められます。
また、勧告を受けた企業は、企業名と違反事実の概要が公表されてしまいます。
公正取引委員会・中小企業庁では、年に1回、合計数十万社に対して、下請法違反の有無についての調査を実施しています。下請事業者が訴え出ることがなくても、この調査で下請法違反が発覚するケースが多くあります。
また、公正取引委員会に、下請法違反を申告する仕組みがあります。窓口や書面、インターネットでの申告などを利用して下請法違反を訴え出ることが可能です。
コンプライアンスに対する意識が高まるなか、下請いじめともいえる違反行為が世に知れ渡れば、企業イメージは大きくダウンすることになります。下請法への対応は不可欠です。

下請法 4つの遵守義務

下請法では、親事業者が下請事業者との取引において守るべき4つの義務が定められています。

(1)発注書面を交付する義務

口頭での発注はトラブルのもとになります。下請事業者が不利益を被ることがないよう、発注書を作成し、透明性の高い発注が求められます。

(2)下請代金の支払期日を事前に定める義務

下請事業者は、資金面でも弱い立場にあります。支払いが不当に引き延ばされて資金繰りが悪化。そのような状態を防ぐためにも、発注した物品等を受領した日から数えて60日以内のできる限り短い期間内で、下請代金の支払期日を定めなくてはなりません。

(3)書類の作成・保存の義務

下請取引が完了した場合、親事業者は、給付内容・下請代金など取引に関する書類を作成して、2年間保存することが義務づけられています。これは下請取引のトラブル防止と、公正取引委員会や中小企業庁による迅速、正確な調査や検査に役立てることが目的です。

(4)遅延利息の支払義務

支払期日までに下請代金が支払われなかった場合、物品を受領した日の60日後から実際の支払いまでの期間について、年率14.6%の遅延利息を下請事業者に支払う義務が生じます。

コンプライアンス違反行為~下請法

下請法では、親事業者に対して違反行為を具体的に定めています。そのなかから、代表的なものについて見ていきましょう。

事例1:不当返品

アパレルメーカーC社は、下請事業者D社から仕入れた商品を不良品でないにもかかわらず、販売シーズンが過ぎたという理由で返品しようとした。

下請事業者に責任がないにもかかわらず、発注した物品等を受け取った後に返品することは禁じられています。
のケースでは、親事業者は、返品した商品を引き取ること、下請法違反行為を今後行なわないことを取締役会で確認すること、再発防止措置をとり従業員に周知徹底するという勧告を公正取引委員会から受けました。

事例2:不当な経済上の利益の提供要請

E社は、下請事業者F社に対し、F社以外の商品も倉庫まで運搬するように依頼した。F社は、その依頼に応えるため、通常よりも多い配達人員で積み下ろし作業をサービスで行なった。

自社のために、下請事業者に現金やサービス、その他の経済上の利益を提供させ、下請事業者の利益を不当に害することは禁じられています。また、下請事業者が、自ら行なった場合でも違反となるので注意が必要です。
このケースでは、無償で提供させた役務の提供費用に相当する金額の支払い、取締役会で再発防止措置を講じること、従業員に周知徹底することなどが親事業者に求められます。

事例3:買いたたき

親事業者G社は、下請事業者I社に対し、100個、500個、1000個それぞれの製造を前提とした単価の見積りを提出させ、1000個製造の単価で100個製造するように発注した。

大量の発注を前提とした見積りを提出させ、その見積単価で少量の発注しかしない下請代金を決める行為は禁止されています。このケースでは、100個製造時の単価で計算した差額を支払うこと、取締役会で再発防止措置を講じること、従業員に周知徹底することなどが親事業者に求められます。


親事業者があってこその下請事業者。そのような態度をとっていないでしょうか。
請法違反は、調査による発覚や当事者からの訴えがなければ発覚しにくいものです。だからこそ、親事業者は率先して下請法違反にならない透明性の高い取引を行なわなければなりません。
下請事業者は、親事業者の仕事を支えてくれている、いわばパートナーともいうべき大切な存在です。つまり、自分たちだけがよければいいという発想ではなく、下請事業者もいっしょになって成長していく。そういう発想をもって、日々の仕事にあたることが大切なのではないでしょうか。


※本記事はDVD『早わかりシリーズ 企業コンプライアンス編 これだけは知っておきたい「下請法」』の内容を基に作成しました。

DVD『これだけは知っておきたい「下請法」』はこちら

【監修】
木目田 裕(きめだ・ひろし)
東京大学法学部卒業。東京地方検察庁特別捜査部検事、米国ノートルデイム・ロースクール客員研究員、法務省刑事局付検事、金融庁総務企画局企画課課長補佐等を経て、弁護士。独禁法違反、インサイダー取引を含め、危機管理、訴訟を専門とする。著書多数。

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