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組織における人間性と生産性

組織における人間性と生産性

(2014年2月 5日更新)

 
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通信ゼミナール「リーダーのための心理学入門コース」のテキストからご紹介する第2回。組織における人間性と生産性について考えてみたいと思います。
 

「生産性の原理」の弊害

 
どんな組織も、生産性と人間性の2つの軸のうち、いずれを欠いても成り立つことはできません。
 
「よいものを、早く、安く」という生産性の追求は、企業社会においては不可欠な要素です。一方で、企業を成り立たせているのはその構成員、すなわち社員です。社員は血も涙もある人間であり、生産性・効率性の観点のみではとらえられない存在です。つまり、組織のリーダーは、業務の遂行としては生産性を追求しつつ、組織運営としては人間性に配慮しなければならない立場にあります。
 
ところが、人間性の原理を無視して、生産性の原理のみで組織を動かそうとするところに、メンタルヘルスの問題をはじめとする近年の組織のひずみがあります。
 
組織のなかの「生産性の原理」「人間性の原理」とを対比すると、次のようになります。
 
 
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なぜ「生産性の原理」だけで組織を動かそうとすると問題が生じるのか、生産性の原理の6つの特徴とそれぞれがもたらす弊害を述べておきましょう。
 
(1)短期的な成果を求める(工業的)
早く結果を出さなければならないために、時間をかけて人材を育成するという観点が乏しくなります。日本企業の人材開発のための予算は、1990年代以降、国際比較で見ても大幅に減らされています。
 
(2)理性的な営み(情的な部分の排除)
共同体を構成する人々に対する情的な部分が切り捨てられ、論理的な思考力だけを養うような、理性的な風土が形成されます。
 
(3)競争原理
組織内・組織問の競争が激しくなり、自分の周囲の人たちが協力者・仲間でなく、まるでライバルのようになってしまいます。
 
(4)欠点是正
人間を育てるのに長所よりも欠点に目が向く傾向が強くなります。ものづくりならば悪い点を撲滅すればよいのですが、人間を対象にしたときに同じやり方をすると、恐れや不安が先行し、器が小さくなります。
 
(5)結果がすべて
「結果よければすべてよし」という風潮で、プロセスを見なくなります。よい結果を示せた人はよいのですが、望ましくない結果だった人は敗北者扱いされてしまいます。
 
(6)whyを繰り返して徹底的に原因究明(意思は介在しない)
本人の意思・意図を置き去りにして、「なぜ、どうして(why)」を繰り返し、徹底的に原因究明をはかろうとします。現象やできごとに関して、あるいは成功に結びついた要因に対して“why”の質問をするのはよいのですが、人間の行動や失敗に関して“why”を乱発するのは、完全に相手の勇気をくじくばかりか、相手との信頼関係を否定する、非協力的な態度に映ります。
 
 
 

「恐怖によるモチベーション」からの脱却を

生産性の原理は、製造現場などモノを扱う場面などでは極めて高い効果を発揮しますが、上司と部下の人間関係にもちこめば、とても冷たい、人間性を欠いた対応になります。
 
こうした関係のもとでは、部下の行動を促す原理として「恐怖によるモチベーション」が使われる傾向にあります。恐怖によるモチベーションとは、脅迫や罰によって相手を動機づけようとすることで、次の3つに代表されます。
 
(1)人格否定
行為に対して注意を促すつもりが、結果的に人格を否定している。
例:「お前はいつも、しくじるじゃないか」
 
(2)ダメ出し
達成できている側面を見逃し、できていないダメな側面に過剰に反応する。
例:「これはよくても、ここはまるでなっていないじゃないか」
 
(3)結果がすべて
努力の過程に目を向けず、結果しか評価しない。失敗すれば徹底的に批判。
例:「何だかんだ言っても、結局成果があがっていないじゃないか」
 
「恐怖によるモチベーション」は、職場の構成員にたいする尊敬・信頼に欠け、人間性をないがしろにするものです。20年スパンで研修受講者の姿を見てきて、恐怖によるモチベーションに基づく「勇気くじき」を受け、年々活力を失っていく社員の姿が実に多いことを感じます。
アメとムチしか学んでこなかったリーダーは、アメに相当する金銭的な報酬の原資がなくなり、昇進・昇格を与える組織的な余地がなくなると、自分がされてきた恐怖によるモチベーションに頼るようになるようです。
企業は、今こそ恐怖によるモチベーションを卒業して、血も涙もある人間に配慮した「人間性の原理」を回復しなければなりません。
 
 (次回に続く)
 
 
 

 
 
【出典】
勇気づけ”で部下を伸ばす、組織を変える
 
近年注目を集めるメンタルヘルス不全やパワーハラスメントといった職場の問題の多くは、「人間性の原理」に基づいたマネジメントによって防ぐことができる――。
本コースでは、数多くの企業や教育現場で導入されている「アドラー心理学」をベースに、部下との間に信頼を築き、“勇気づけ”によって個々の力を最大限に引き出すための考え方と手法を解説。人間性重視のリーダーシップを発揮するための実践的なスキルを身につけます。
 
 
【監修者プロフィール】
岩井俊憲 いわい としのり
 
1970年、早稲田大学卒業。外資系企業の管理者等を経て、1985年、(有)ヒューマン・ギルドを設立。代表取締役。1986年、アドラー心理学指導者資格を取得。上級教育カウンセラー。アドラー心理学に基づくカウンセリングや公開講座、カウンセラー養成を行うほか、企業・教育委員会・学校から招かれ、カウンセリング・マインド研修、勇気づけ研修や講演を行っている。主な著書に、『失意の時こそ勇気を』『アドラー心理学によるカウンセリング・マインドの育て方』(コスモス・ライブラリー)、『勇気づけの心理学 増補・改訂版』(金子書房)などがある。
 

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