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現場の人材育成力を高める多面観察とコーチング

現場の人材育成力を高める多面観察とコーチング

(2014年2月24日更新)

 
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社員が研修の「学び」を現場で実践するためには、現場の人材育成力が大いに問われます。そこで、現場上司の部下育成力を向上させる手法として、多面観察とコーチングをご紹介します。
 
*  *  *
 

現場の上司の「自己理解」――己を知るために、他を知る

 
現場の育成力とはすなわち、職場の上司の育成指向や育成行動である。研修で受講者が素晴らしい気づきを得たところで、「現場」に戻れば元通りになるのでは話にならない。現場の育成力を高めなければ、人材育成も集合研修もあったものではない。
 
個人において、自己成長の第一歩は「自己理解」である。それならば、現場の育成力向上においては、現場の上司が「自己の育成指向や行動」を「自己理解」する必要があるはずである。では如何にして、自己理解すればよいのか。
 
ひとつには、「他者理解」をすることである。まずは現場の上司が、他者や他組織を知ること。井の中の蛙、裸の王様にならぬよう、例えば、他部門や他社のマネジャークラスと、部下育成の悩み事や成功事例の情報交換を行ったり、他社と合同で部下育成の勉強会を実施したりする。その中で、自らの強みや弱みを認識したり、自己の課題が見えたりすることになる。
 
注意しなければならないのは、傷の舐め合いにならないようにすることである。部下育成の困難さを皆で嘆くのではなく、育成の価値を理解した上で切磋琢磨し合うというねらいを明確にしておくことが大切である。
 
 
【事例】
 
マスコミH社では、各部局の部課長が毎月交流会を実施している。目的は、部門間の連携と情報交換、そして何より切磋琢磨である。特に育成については、各部局の成功事例、失敗事例を積極的に交換し、互いにアドバイスをし合ったり、 事例を研究し合ったりしている。つまり、育成は全社で行うものという大前提を大切にしている。
 
 

多方面から己を観察する

 
もうひとつ、上司の育成行動の自己理解のためのツールとして「多面観察(360度評価)」がある。「多面観察」では、対象者について、その上司や部下、同僚、時には取引先などから得た評価と自己評価を比較する。現場の上司の育成指向や行動の実態を明らかにし、それを本人にフィードバックすることで、本人の気づきを促す「多面観察」は、上司のマネジメントの健康診断のようなものである。定期的に問題点を発見し、結果によっては迅速に改善していくための手立てになりうる。
 
なお、多面観察は、問題行動やパフォーマンスが低いことの原因がどこにあるのかを組織として認識し、また、本人に気づかせた上で、それをポジティブに改善していくための材料として使われるべきである。そのためには、各評価者が率直にありのままの評価を行うことが不可欠となる。多面観察を効果的に活かすには、給与・賞与、昇格・昇給などの処遇と直接に結びつけないほうがよい。多面観察は、人材育成のための鏡としてのみ活かされるべきである。
 
また、多面観察で注意しなければならないのは、現時点を映し出す「スナップショット」のようなものであるという点である。過去の積み重ねの結果である現状を反映こそしているが、そこに、未来へのメッセージが込められているわけではない。大切なのは、多面観察等を実施した後である。
 
 
【多面観察の一般的なねらい】
 
■行動変容や能力開発のきっかけとして
組織の中で、ポジションが上がるほど、業務に対して周囲からのフィードバックをもらう機会が少なくなる。周囲から行動を見られるという緊張感を意識することにより、自身の行動の強みや弱みが客観的に把握でき、行動変容や能力開発に向けた取り組みが具体化する。
 
■企業方針や組織風土の浸透手段として
ビジョンや、社員に求める価値観・バリューをブレイクダウンした評価項目を設定することにより、多くの社員が「期待される行動や果たすべき役割」を理解し、実践することにつながる。
 
■人事評価の補完として
組織のフラット化に伴い、部下の人数が大幅に増え、適切に評価できる(行動に目が届く)範囲を超えてしまっている場合がある。直属上司の評価だけではなく、本人の仕事ぶりをよく知る周囲のメンバーや部下の評価を補足情報として加えることにより、上司評価のブレやバイアスを補正することができ、評価の納得性が高まる。
 
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部下育成を支援するコーチング

「現場のマネジャークラス全員に、コーチング研修を導入しました」というセリフを、人事担当者から何度聞いたことだろう。コーチングという手法が日本に上陸して十数年になるが、いったんのブームを経て、育成ツールのひとつとしてある程度定着した感もある。
 
現場の上司に自己の育成行動の現状を理解させた結果、「では明日から具体的にどうやって部下を育成すればよいのか」という現実に上司は直面することになる。「教育こそ企業なり」と、教育担当者が声高に叫んでいるだけでは、現場の支援にはならない。そこで、部下育成のツールとして提供されているもののひとつが、コーチングである。
 
コーチングでは、「答えは相手の中にある」という考え方のもと、質問話法を中心とするスキルを活用することで、部下自身に思考させ、気づかせ、行動させるというプロセスを重視する。コーチングは、部下の自立と自律を支援するツールである。絶対的な答えがない変化の激しい時代に合った、有効な育成ツールだと言える。
ただし、コーチングも完璧ではないことに注意されたい。ほかにも、現場の育成力、ひいては組織活性化を目的としたツール、プログラムは、ここ数年、いくつも輸入されたり、生み出されたりしてきた(例えば組織開発のいち手法である『AI〈Appreciative Inquiry〉』など)。それぞれに特徴があるが、それらの実施や習得だけを目的としてしまわないことが大切である。
 
 
【コーチングとは】
 
「相手の自発的な行動を促すコミュニケーション技術である」
・ゴールを達成したり、障害を打開したりするための能力や考えはその人自身が持っている
・自らの答えや能力を引き出し、目標達成に向けての行動をサポートし、自発的な行動を促進するのがコーチング
・なぜ失敗したのかではなく、どうしたらうまくやれるかという問題解決、未来志向型の考え方
・失敗から学び、それを次に活かしていく改善活動
・問題は外にある(他責)のではなく、もしかしたら自分にある(自責)かもしれないという主体的なとらえ方
・どうなりたいのか? そのために何をしたらよいのかを常に頭において行動すること
 
 
【ポイント】
・まず現場の上司に己の育成力の現状を認識させること。現状理解なくして成長なし
・「多面観察」や「コーチング」などを有効活用する
 
 
 ※出典:『[実践]社員教育推進マニュアル』(2009年1月・PHP研究所発行)
 
 

 

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【著者プロフィール】
 
茅切伸明  かやきり のぶあき 
慶應義塾大学 商学部卒業後、(株)三貴入社。 その後、(株)日本エル・シー・エー入社。 
平成1年3月 住友銀行グループ 住友ビジネスコンサルテイング(株)(現SMBC コンサルティング(株))入社。セミナー事業部にて、ビジネスセミナーを年間200 以上、企業内研修を50以上担当し、他社のセミナーを年間50以上受講する。 
平成18年4月 (株)ヒューマンプロデュース・ジャパンを設立。「本物の教育」「本物の講師」「本物の教育担当者」をプロデュースするという理念を掲げ、現在まで年間500以上、累計3,000以上のセミナー・研修をプロデュースするとともに、セミナー会社・研修会社のコンサルティング、セミナー事業の立ち上げ、企業の教育体系の構築なども手掛ける。 
著書に、『実践社員教育推進マニュアル』、通信教育『メンタリングで共に成長する新入社員指導・支援の実践コース』(以上、PHP研究所)、『だれでも一流講師になれる71のルール』(税務経理協会) 
 
 
松下直子 まつした・なおこ 
株式会社オフィスあん 代表取締役。社会保険労務士、人事コンサルタント。 
神戸大学卒業後、江崎グリコ(株)に入社。新規開拓の営業職、報道担当の広報職、人事労務職を歴任。現在は、社会保険労務士、人事コンサルタントとして顧問先の指導にあたる一方、民間企業や自治体からの研修・セミナー依頼に応え、全国各地を愛車のバイクで巡回する。
「人事屋」であることを生涯のライフワークと決意し、経営者や人事担当者の支援に意欲的に向き合うかたわら、人事部門の交流の場「庵(いおり)」の定期開催や、新人社会保険労務士の独立を支援するシェアオフィス「AZ合同事務所」の経営など、幅広く人材育成に携わっている。
著書に、『実践社員教育推進マニュアル』『人事・総務マネジメント法律必携』(ともにPHP研究所)、『採用・面接で[採ってはいけない人]の見きわめ方』『部下育成にもっと自信がつく本』(ともに同文舘出版)ほか。

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