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人材の多様性が進まないのはなぜか

人材の多様性が進まないのはなぜか

(2014年5月 2日更新)

 
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人材の「多様性」とは何か。なぜ、日本の組織ではそれが進まないのか。マッキンゼーを経て、郵政改革、国会事故調に関わり、組織の強い同質性による「マインドセット」に警鐘を鳴らす宇田左近氏は、その原因は「オジサン」問題にあると指摘します。『なぜ、「異論」の出ない組織は間違うのか』より、ご紹介します。

 

ボトルネックとなる「オジサン」問題

 

考え方の多様性はなぜ生まれにくいのか、その原因は何だろうか。多様性あるいは多様性の許容と言ったほうがよいが、それは残念ながら日本の多くの組織において以前から必要性は認識されながらも、実際は思うように進んでいない。

 

この場合の多様性というのは外国企業等における多様性の問題の議論とは根本的に異なる。外国企業ではそもそも大学卒業後、年次に縛られて生涯一組織で過ごすことは前提ではない。また主要なポジションに当該国以外の外国人が就くことなども当たり前と考えられる。

一方日本の場合、多様性というと主として女性の責任あるポジションへの登用、あるいはグローバル企業における外国人の登用、さらには大学卒業で入社した人以外の中途採用者への機会提供など、強い同質性を前提とした極めて日本的な議論が展開される。それにしてもその必要性が言われてから長い時間がたつ。

 

1980年代から90年代初頭、私はコンサルティングプロジェクトでグローバル化を目指す企業のグローバル人事戦略のプロジェクトに多く従事した。その時の多様性の活用を前提とした人材戦略・人事制度の提言は大筋今でも多くの企業に通用するのではないかと思う。

 

実はこの多様性が進まない原因であり、改革の抵抗勢力になるのは、本社側の「オジサン」たちのマインドセットにあることが多い。「オジサン」とはここでは「一見物わかりがよさそうで実は最も保守的なセグメント」の総称だ。役員手前なので、自らは社内競争の渦中にあると考えている。もしこのタイミングで社外、グループ外に出てしまったら自分だけでは何もできることはないとの自覚もある。少しでも長く社内にとどまることでキャリアリスクのヘッジをしている。言い換えれば最もキャリアリスクを取るリーダーになりにくいセグメントということになる。

 

日本企業の仕組みでは、この「オジサン」セグメントに、会社が組織へのコミットメントを求め、同質性のさらなる強化を図るが、「オジサン」たちがその職の使命にキャリアリスクを賭け、改革のリーダーになるという動機づけはできていない。またそのマインドセット転換の機会も提供していない。

 

私が関与した多くのプロジェクトにおいて、グローバル人事の仕組みの導入はこの「オジサン」セグメントにマインドセットの転換を促すものではあったが、実際にはその後も遅々として転換は進んでいない。いまだに女性管理者の割合を増加させた、外国人の執行役員が増えたといった企業のニュースが先行すること自体、そこにはまだ同質性の強い「オジサン」たちが多様化の進展を自身でコントロールしたがっている姿が浮かび上がる。

 

形だけの多様性の弊害

 

たとえ形だけの多様化は進んでも、それだけでは何も生み出さない。いきなり人事の仕組みを変えても結局大きな転換は難しい。多様な人材が共通の価値観、目的を持って異なる意見をぶつけ合い、新しい価値を生み出していく環境が創出できない限り、同質な人たちの集団の中では、形だけの多様化はやがて消滅する。結局人材の多様性が進まないので、多様な意見も生まれない。したがって「異論を唱える義務」を負うという組織環境も生まれない。

 

そのような組織では、仮に「異論を唱える義務」という行動規範があったとしてもそれは形骸化し、そしてそれが故に多様な優秀人材も集まらないという悪循環に陥ることになる。多様な考え方、異なるキャリアの可能性を持った優秀な人材、「オジサン」セグメントに至る前の若手の人材たちは、「オジサン」たちの限界をとうに見通しているのである。

 

 


 

宇田左近 なぜ、「異論」の出ない組織は間違うのか

 

『なぜ、「異論」の出ない組織は間違うのか』

異論を唱えるのは、ビジネスパーソンの義務である。

民間・官僚機構、大小の別なく、組織というものには、◎責任回避 ◎先送り ◎不作為 ◎前例踏襲 ◎改善の否定 ◎組織の利益優先という組織を腐敗させ、停滞させる元凶である「巨大生物」が潜んでいる。 そして、その巨大生物の多くは、組織の上層部にいる「オジサン」たちに巣くい、不祥事が生じたときに、「私は聞いていなかった。速やかに原因を究明し、再発防止に努める」と、まるで当事者意識のないコメントを口にさせることになる。

本書は、マッキンゼーを経て、郵政改革、国会事故調に関わった著者が、改革の足を引っ張る巨大生物の姿を明らかにしつつ、抵抗勢力を駆逐し、異論を唱える義務を負う組織へと変革させる手法を説いた一冊。

政策研究大学院大学アカデミックフェローの黒川清氏による「【解説】異論を唱える義務――私たち一人ひとりが『今』やらねばならないこと」収録。

 

【著者紹介】

宇田左近(うだ・さこん)

ビジネス・ブレークスルー大学(学長・大前研一)経営学部長・教授。原子力損害賠償支援機構参与・東京電力調達委員会委員長、荏原製作所独立社外取締役、日米医学医療交流財団学術委員等。東京大学工学系大学院修士、シカゴ大学経営大学院修了(MBA)。日本鋼管(現JFE)、マッキンゼー・アンド・カンパニー、郵政民営化有識者会議委員、日本郵政株式会社専務執行役および郵便事業株式会社専務執行役員、東京医科歯科大学医療経営学寄付講座客員教授、東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(委員長・黒川清、通称「国会事故調」)調査統括等を経て現職。専門は経営戦略、企業変革。特に、民営化、自由化等の非連続的な環境変化下における金融機関、公的機関、医療機関等の経営戦略、組織改革、企業変革に多数従事。


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