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上司には人事評価における説明責任がある

2014年5月19日更新

上司には人事評価における説明責任がある

スターバックスコーヒージャパンなどのCEOを務め、店舗数拡大と増益を達成した岩田松雄氏は、日本的人事では上司の評価の説明責任の部分が疎かになっていることが多いと指摘します。『「徳」がなければリーダーにはなれない』(PHPビジネス新書)よりご紹介します。

 

長い期間で人を評価する

日本的経営には賛否両論があります。しかし、年功序列の人事方式はある意味とてもフェアな方法だと思います。日本の企業は、長い期間をかけて人を評価します。入社してから最初の約十年は、大きく差をつけることはしません。仕事ができる人は、「どうして、自分を評価してくれないのか?」と不満に思うこともあります。しかし、業績というのは、たまたまタイミングの良い時に、良い商品の担当になり数字が上がったり、それまで努力してきた人たちの結果が自分が携わっている時にちょうど実を結んだり、自分の能力以外の要素が絡み合って、結果に結びつくこともあります。しかし、その「ラッキー」がそれほど長い間重なることはありません。たとえば十年というスパンでその人物を評価していくと、本人の本当の実力が見えてきます。
私も若いころに、上司と折り合いが悪く最低の評価をつけられたこともありました。数年後にある斜め上の上司のおかげで三階級特進の異例の評価を受けて、リカバリーすることができました。人が人を評価する限界と上司との相性など本人の実力以外の要素もあり、とても難しいことだと思います。
社長を経験して、改めて人事の大切さ、難しさについて考えてみると、日本的な人事方式もとてもフェアで合理的なやり方なのだという気がしています。
最近は、能力主義の傾向が高まり、もっと個々人の能力や結果を見て、できる人材には短期間に相応のポジションを早く与えるべきだという風潮があります。ただ、その考え方には、その人物の「真の実力」を判断できるという前提があるのです。会社の規模にもよりますが、十~十二、十三年で課長となり、そのあたりから徐々に差が出始めるというのは、ある意味フェアで合理的な方法であると思います。
 
 

外資系企業の限界

そういう点では日本的な人事方式と比べて外資系企業は、時におかしな人事もありました。なぜ、この人がこのポジションにいるのかと疑問に思うことも多かったのです。よくありがちなのは、英語が話せるだけで、良いポジションにいるというケースでした。
部下から見ると、上層部は何も見ていないのではないかと疑いたくなるような人事が行われているケースは、社内でもよくあるのではないでしょうか。これは、私がある外資系に勤めていた時代にあったエピゾードです。「なぜこの人が役員に?」と思うことが何度もありました。
私はある事業部の部長として入社しました。それまでの経験を活かした分析や、戦略立案を行い、会社に貢献しようと意欲に燃えていました。秘書も、私が前の会社から連れてきたアシスタント。今までも本当に素晴らしいプレゼンテーション用の資料を作成してくれていた彼女が、この会社でも同じように、見やすく、わかりやすい資料を作成してくれていました。
ある時、私の直属上司ではない他の事業部の日本人役員が、私の秘書に向かって、「資料の色を減らせ!」と言ってきたのです。要するに、せっかく工夫して見やすい資料を作成したのに、わざわざクオリティを下げろと言ってきた。私は信じられませんでした。その人は、英語が得意なことに加え、外国人幹部に対してはイエスマンなのですが、下に対しては平気で理不尽なことを押しつける。部下の手柄を横取りしたり、外国人幹部の言う矛盾することを平気で受け入れてしまう。日本企業であれば、課長にもなれないような人だったのではないかと思います。
 
 

人事評価における説明責任

日本的な人事、外資系の人事、どちらにも善し悪しがあります。日本の場合は、年功序列で、長い時間をかけて評価するために、同期とはそれほど差がつきません。だから逆に、本人への人事評価についての説明責任の部分が疎かになるという点があります。
外資系の企業の場合は、人を評価したらその本人と面談を行い、評価の理由を説明します。その評価内容に対して、本人のサインをもらうのが通例です。上司が抜き打ちのような形で人を評価できないようにする仕組みです。
日産自動車時代に留学中、一年下の日産留学生と一緒に昇格試験を受けることがわかった時、とてもショックを受けました。実質、同期たちから私は一年以上も遅れを取っていたことに気がついたのです。
会社から留学に行かせてもらえるということは、ある程度会社から期待されているのだと思っていました。先に述べたとおり、当時、日本の大企業では、入社から十年はほとんど差がつきませんでした。昇進に一年もの差がつくというのは、長期療養で一年間休職をしていた、もしくは何か問題を起こしたなど、よほどのことです。私がさらにショックを受けたのは、その事実を、一切知らされていなかったことでした。
人を評価することは大切ですが、評価以上に大切なのは、きちんと面談を行い、「あなたの良い面はこういうところ、あなたの良くない面はこういうところ。だから、今回はこのような評価がついています」と、フィードバックを行うことです。そのため上司は評価をする権限を与えられていますが、それに伴って説明責任も問われるのです。
 
 

 
 
 
【出典】
 
~「エグゼクティブ・コーチング」がなぜ必要か~
 
元スターバックスCEOが教える社長の教科書。
組織作り、人事、戦略……リーダーにこそコーチングが必要だ。今、身につけるべきリーダー学。
 
 
 
 
 
 
 
【著者紹介】
岩田松雄(いわた・まつお)
 
元スターバックスコーヒージャパン代表取締役最高経営責任者、リーダーシップコンサルティング代表。
1982年に日産自動車入社。製造現場、飛び込みセールスから財務に至るまで幅広く経験し、社内留学先のUCLAビジネススクールにて経営理論を学ぶ。帰国後は、外資系コンサルティング会社、日本コカ・コーラビバレッジサービス常務執行役員を経て、2000年(株)アトラスの代表取締役に就任。3期連続赤字企業を見事に再生させる。2009年スターバックスコーヒージャパン(株)のCEOに就任。2011年リーダーシップコンサルティングインクを設立。
主な著書に『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』(サンマーク出版)、『スターバックスCEOだった私が社員に贈り続けた31の言葉』『スターバックスCEOだった私が伝えたいこれからの経営に必要な41のこと』(中経出版)、『ミッション』(アスコム)、『スターバックスのライバルは、リッツカールトンである。』(角川書店)などがある。
 
ホームページ http://leadership.jpn.com/
ブログ http://leadeshipjpn.blog.fc2.com/
フェイスブック https://ja・jp.facebook.com/matsuo.iwata

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