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アンガーマネジメント―怒りの感情をコントロールしよう

アンガーマネジメント―怒りの感情をコントロールしよう

(2015年1月13日更新)

 
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怒りを中心とした感情に対する独自の見方と、それに基づく感情のコントロール法を、通信ゼミナール『リーダーのための心理学入門コース』のテキストからご紹介します。

 

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感情は自分のパートナーである

感情が激情レベルになり、周囲に破壊的な影響を与えるなど行き過ぎると問題ですが、一定の範囲内に収まっているとしたら、ものごと、状況、対人関係の機微を理解するためには欠かすことができないものとなるはずです。それは、喜び、楽しみ、感動などのような陽性感情だけでなく、怒り、悲しみ、焦り、寂しさなどの陰性感情でも同じです。
 
あなたには、なじんでいる感情があります。それらの感情は、私たちにある種のサインを発してくれています。たとえていえば、交通信号です。交通信号に青、赤、黄の3色があるように、感情は、ある状況で私たちの行動に対して「進め(go、青信号)」「止まれ(stop、赤信号)」「警戒せよ(watch、黄信号)」のサインを出しているのです。
 
そういう点では、あなたのパートナーとしてずっと寄り添って、理性の側面を補って助けてくれているわけです。
 
 

感情には目的がある

まずは、「感情は、ある状況で、特定の人(相手役)に、ある目的(意図)をもって使われる」ものだということを知っておいてください。
 
一般的には「感情は、原因があって起こる」と考えられているかもしれません。
 
しかし、「感情は、目的をもって使われる」と解釈したほうが、もっと幅の広い対応が可能になるのです。
 
たとえば、怒りの感情の目的としては、(1)支配、(2)主導権争いで優位に立つこと、(3権利擁護、(4)正義感の発揮、の4つが指摘できます。
 
怒りの感情を日常的に表している人は、支配的な人と見てほぼ間違いがありません。一方、根底には「……であるべき(should)」「……一しなければならない(must)」という信念があって、ある状況で特定の相手役に対して正義感を発揮して、怒りの感情をむきだしにしたような場合は、(4)の正義感の発揮が目的であるとみることができます。
 
相手役との関係でいえば、怒りは他の感情と比較すると、最も対人関係の要素、あるいは競争的な要素の強い感情で、「売られたケンカは買わねばならぬ」という状況に陥りやすい懸念があります。言い換えれば、「主導権争い」になりがちなのです。相手が挑発してきたときに、「メンツを傷つけられた」「負けてたまるか」という気持ちをもち、同じ土俵に上がってしまうから「どっちが勝つか負けるか」のゲームになり、余計収拾がつかなくなるのです。
 
しかし、そうした場合でも、誰も彼もと土俵上のゲームをしているかというとそうではなく、やはり、ある状況で、ある相手役に対して、ある目的(意図)をもって、ということになるのです。
 
 

感情はコントロールできる

感情を原因説だけでとらえていると、原因に出合うたびに条件反射的に同じ反応を繰り返し、何も進歩・向上がないことになります。しかし、「感情は、ある状況で、特定の人(相手役)に、ある目的(意図)をもって使われる」という仮説に立って、ある状況で感情的になったときに、自分の感情の動きを自覚的に見つめることができれば、従来の、原因が引き金になるパターンから卒業できます。このことが感情のコントロールを身につけることにつながります。
 
ここで、怒りの感情を中心としたコントロール法をまとめておきましょう。
 
(1)感情の相手役と目的を洞察する
感情にはまず、その感情を向ける相手がいます。怒りは多くの場合他者ですが、焦りは自分自身に向ける感情です。次に、感情には目的があります。つまり「誰に、どんな目的で?」ということで、それらを洞察するのです。誰かに怒ったエピソードを思い返して、「自分は○○さんを思いどおりに動かしたかったのだ」ということが理解できれば、怒りを使わなくとも冷静に対処する方法がとれるようになります。
 
(2)信念(should、must)を書き換える
怒りの根底にある「……であるべき(should)」「……しなければならない(must)」という信念を「必ずしも……とは限らない」「……に越したことはない」と書き換えるだけで、だいぶ気持ちが和らぎます。「部下は上司に従うべきだ」とすると、絶対命令になってしまい、命令に背くことを背信行為のようにとらえてしまいますが、「部下は必ずしも上司の思いどおりに動かない」と受けとめていると、相手の立場も認めることができ、寛容でいられるのです。
 
(3)一次感情を探す
怒りには、もともと別の感情が潜んでいます。それらに気づかずに、私たちは怒りをそのまま表してしまうことがあります。
怒りのもともとの感情は、落胆、心配、悲しみなどで「一次感情」と呼ばれ、怒りは「二次感情」といわれます。当人からは怒りの感情があらわになっているとしても、実は、心配のあまり怒っているのかもしれませんし、落胆を怒りのかたちで表明している可能性もあります。不安かもしれませんし、悲しみが潜んでいるかもしれません。
このように洞察することで、ふだんは怒りのまま感情をむきだしにするような場面でも、一次感情に目を向け怒りを使わずに表明すると、対人関係が主導権争いに発展することはありません。
 
 
(4)呼吸法を身につける
人は怒っているとき、呼吸が上ずって乱れているのが常で、深呼吸をすることで感情を穏やかにすることができます。
「息」という漢字はとてもよくできた字で、「自」と「心」から成り立っています。私たちは平素、呼吸を意識することなく無自覚的な呼吸に任せていますが、感情が乱れたとき、ここ一番で平静さを取り戻したいとき、深呼吸をすることで自覚的な呼吸に変更することが可能です。
 
以上のような感情のコントロール法を身につけることで、怒りのままに感情的に対応する従来のパターンを卒業して、穏やかに過ごすことができるようになります。
 
 
 
【出典】
 
PHP通信ゼミナール
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数多くの企業や教育現場で導入されている「アドラー心理学」をベースに、部下との間に信頼を築き、“勇気づけ”によって個々の力を最大限に引き出すための考え方と手法を解説。人間性重視のリーダーシップを発揮するための実践的なスキルを身につけます。
 
 
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【著者プロフィール】
 
岩井俊憲 (いわい・としのり)
1970年、早稲田大学卒業。外資系企業の管理者等を経て、1985年、(有)ヒューマン・ギルドを設立。代表取締役。1986年、アドラー心理学指導者資格を取得。上級教育カウンセラー。アドラー心理学に基づくカウンセリングや公開講座、カウンセラー養成を行うほか、企業・教育委員会・学校から招かれ、カウンセリング・マインド研修、勇気づけ研修や講演を行っている。
主な著書に、『失意の時こそ勇気を』『アドラー心理学によるカウンセリング・マインドの育て方』(コスモス・ライブラリー)、『勇気づけの心理学 増補・改訂版』(金子書房)などがある。
 
宮本秀明 (みやもと・ひであき)
1982年、スタンフォード大学中退。広告業界を経て、研修業界に入る。数社の研修会社にて講師、営業を担当した後、2012年、(有)ヒューマン・ギルド法人事業部長兼シニアインストラクターに就任。ロジカルシンキング、ファシリテーションからマナー教育まで、幅広いコミュニケーションの研修を担当している。
米国と日本双方のビジネス経験を生かし、それぞれのよさを融合させた、和魂洋才型の研修プログラムを独自に開発、多くの企業や自治体で採用されている。受講生の目線に立った、習得しやすいカリキュラムの構成力、また、やる気を促す講師手法には定評がある。
 
永藤かおる(ながとう・かおる)
心理カウンセラー。1989年、三菱電機(株)入社。その後ビジネス誌編集、海外での日本語教育機関、Web制作会社など、20年以上のビジネス経験のなかで、人事・採用・教育・労務管理等に携わる。
どの現場においてもコミュニケーション能力向上およびメンタルヘルスケアの重要性を痛感し、勤務と並行して学んだアドラー心理学を生かして現在(有)ヒューマン・ギルドにてカウンセリング業務および企業研修を担当。
著書に『子どもを勇気づける教師になろう』(岩井俊憲との共著、金子書房)がある。

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