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部下とのコミュニケーションが必要な「本当の意味」

部下とのコミュニケーションが必要な「本当の意味」

(2015年8月31日更新)

 
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「辞めさせない」マネジメントで求められるのは、部下とのコミュニケーション。しかし、これは、単に部下と仲良くなることではありません。石田淳著『「辞めさせない」マネジメント』からご紹介します。

 

*  *  *

 

コミュニケーションの量と離職率の関係

「上司とのコミュニケーションの量が少ないほど離職率は高く、コミュニケーションの量が多いほど離職率は低い」といわれています。
コミュニケーションの量が多い……つまり、上司が自分のことを「気にかけてくれている」「よく見ていてくれている」ということから、部下は上司に信頼を寄せ、結果として、会社を離れるという選択をしなくなるわけです。
しかし、コミュニケーションの効用は、単に「信頼関係づくり」だけではありません。
前述のとおり、コミュニケーションによって部下の動機付け条件を探り出し、把握することで、部下を育成するための「打つ手」が取れるのです。
最近では、「ある日、突然、部下が辞めてしまった」という事態が多いようですが、この“突然”というのも、じつは上司側の思い込みである場合が多いものです。
つまり、若い社員は、会社に対する、あるいは仕事に対する何らかの不満をずっと持っていた。そのシグナル(前兆のようなもの)は、コミュニケーションの量さえ多ければ、上司には見て取れたはずだということです。
「今の20代は、シグナルをはっきり出さない」と決めつけることはできません。それは世代とは関係なく人それぞれ、ということになるでしょう。また、シグナルとは、実際の言葉だけとは限りません。以前と比べて表情が暗くなった、口数が少なくなったなど、いわゆる「雰囲気」でも、人の変化はわかるはずです。
日常のコミュニケーションによってシグナルを察知できれば、「最近悩んでいることがあるのか?」「仕事の何が難しいのか?」など、相手の先回りをして相談に乗ることもできるはずです。
「自分は自分の仕事を頑張る。若いやつらは、好きにやらせるのが一番だ」
プレイングマネジャーの立場にある上司には、マネジメントの要素を軽視し、自身の実績を上げることに注力する人もいるでしょう。
結果として、部下とのコミュニケーションは不足し、部下のことを観察せず、わかろうとせず、溝ができていく……。
“見てもらえない”“わかってもらえない”部下は、不満を募らせて、辞めていく……。
部下にとっては、決して「突然」ではないのです。
 

話を聞く「土壌」をつくる

「おい、お前、顔が暗いぞ。何か悩みがあるんだろ? 話してみろよ」
部下をよく観察し、シグナル(と思われるもの)を察知した。だからといって、いきなりこんな言葉がけをするのは、NGです。
これは行動科学うんぬん以前に、人としてのデリカシーに欠けるもの。そんな上司に
「じつは……」と、悩み事の詳細を語る部下もいないでしょう。
だからこそ、「普段からの」コミュニケーションが大事なのです。
天気の話、最近のニュースの話、家庭の話など、普段からなるべく仕事に関係ない「世間話」的な質問を繰り返し、「話を聞いてもらえる土壌」をつくっておかなければなりません。
「昨夜はすごい雨だったけど、そっち(部下の自宅)は大丈夫だった?」
「渋谷に新しくできた商業ビル、なんていったっけ? もう行った?」
「グーグルの新しいサービス、使ってる?」
「お父さん、元気?」
“今の20代はプライベートには触れられたくない超個人主義”……そんな思い込みから、こうしたパーソナルな質問を避ける上司もいます。しかし、それはまさに思い込み。「人それぞれ」という前提はありますが、マネジメントにおける「上司の習慣」としては、部下に世間話的質問をすることは、とても大事なことです。
こうした習慣が、部下の「辞める・辞めない」といったヘビーな悩み(上司にとっても、会社にとっても、です)を聞き出す土壌をつくるのです。
 

部下に話すべきこと、話してはいけないこと

ここで勘違いしてはいけないのは、前にもお話ししたように、「コミュニケーションとは、部下と親しくなること」ではない、ということです。
信頼関係と親密度はイコールではありませんし、部下の動機付け条件を把握したり、問題を抱えているか否かのシグナルを察知したりするために、相手と仲良しになる……という必要もありません。
実際によくいるのが、部下と仲良くなろう、好かれようとするあまり、自分の話ばかりする上司。しかも、自分の“自慢話”です。
「俺はあの案件で〇〇万円稼いだね」
「××社の契約を取ったのは、じつは俺の力なんだよね」
などと、自分の成功体験を嬉々として語るのです。
上司としては、自分の成功を語ることで、部下に尊敬してもらおう、好かれようと思っての発言です。つまり、「好かれること」が第一義となっているわけです。これでは、土壌づくりにはなりません。
あるいは純粋に、自身の成功体験を部下に語ることで、部下に対して「仕事のお手本」を示そうとしているのかもしれません。
しかし、部下にとっては、上司が“一方的に”語る成功体験は、単なる「自慢話」にしか感じられません。
「すごいなあ。自分もそうなりたいなあ」
価値観が多様化している今の20代にとっては、誰もがそんなふうに感じるわけではありません。
「別に仕事なんてできなくてもいいよ」
「そんなふうに(上司みたいに)は、なりたくないんですけど」
と思う部下だっているでしょう。
また、仕事関係のみならず、プライベートでの自慢話を披露したがる上司もいます。
「俺、学生時代は20人くらいの女と付き合ったよ」
「若い頃はやんちゃしててさあ、よく池袋でケンカもしたなあ」
いわゆる「武勇伝」の披露です。これも本人にしてみれば、部下に「すごい」と言われたい、好かれたいという目的からなのでしょうが、部下はといえば、「それがどうした?」です。
「最近の若いやつは、人の話に興味を持たないんですよねえ……」
そう話していたのは、20代の部下を持つ、40代後半の知人でした。
それは彼が、相手にとって興味のない話をしているだけだからなのです。
マネジメントとは、「部下と仲良くなること」ではありません。
 ・部下に、仕事ができるようになってもらうこと
 ・部下を、辞めさせないこと
それが、マネジメントの目的である「会社の業績アップ」につながります。
コミュニケーションはその「手段」。「観察」し、「動機付け条件」、つまり「本当に望んでいること」を探るために、コミュニケーションはあるのです。
 
 
 
「辞めさせない」マネジメント
 
【出典】
若者が辞めていく組織は危ない。何を考えているかわからない20代に成果を上げさせるため、リーダーは行動科学マネジメントを学べ。「辞めたいヤツは辞めればいい」「やる気のないヤツはいらない」こんなことを言っているアマチュア・マネジャーが、会社を潰す! 30万部突破『教える技術』シリーズ著者が明かす、「優秀な若手不足」を解決する新しいマネジメントの仕組み。
 
 
【著者プロフィール】
石田淳(いしだ・じゅん)
社団法人行動科学マネジメント研究所所長。株式会社ウィルPMインターナショナル社長兼CEO。米国行動分析学会会員。日本行動分析学会会員。アメリカのビジネス界で絶大な成果を上げる行動分析、行動心理学を軸にしたマネジメント手法を、日本人向けに改良し、「行動科学マネジメント」のメソッドとして体系化。意志の力に頼らない再現性の高い方法論として、人材育成や組織活性化に悩む企業にとどまらず、教育、スポーツの現場でも幅広く成果を上げている。
著書に、『教える技術』(かんき出版)、『なぜ一流は「その時間」を作り出せるのか』(青春出版社)、『行動科学マネジメント入門』(ダイヤモンド社)などがある。

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