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社員を蝕む大企業病~その特徴と克服方法

2015年12月 8日更新

社員を蝕む大企業病~その特徴と克服方法

社員個人が罹る大企業病の特徴と克服方法を、海老一宏氏が実例を交えて解説します。

 

*  *  *

前回、「大企業病の症状とは」と題しまして大企業病の問題点を指摘しました。

 

大企業病の問題のポイントを再度整理しますと、次の3点です。

(1)普段は特に症状はでないが、知らず知らずのうちに組織を弱体化させる

(2)個人が転職したり、退職して組織を離れると大企業病の症状が出やすい

(3)特に幹部やエリートが罹る

 

そして大企業病の特徴や、なぜ罹ってしまうのかについて説明しました。

 

今回は、「個人が患う大企業病」に焦点を当てて、恐ろしい大企業病の正体を、実例をあげてお話します。

 

大企業病に罹る体質は入社時から

大企業の社員、特にエリート候補は入社した時から大企業病に罹る体質だということをご存知でしょうか?

それは「高い学歴」や「大きくて有名な企業への入社」それ自体が、心の中に「優越感」とか「プライド」のようなものを生み育てているからです。この「優越感」や「プライド」は良い仕事をするために必要な意識でもありますが、一歩間違うと常に「人よりも上にいる」という意識で仕事をすることになります。

そして、ここに大企業ならではの給与条件や就業環境、さらに福利厚生などの恵まれた労働条件と細分化されてセクショナリズムのある組織、豊富な人材や、ともすると上から目線での仕事が可能な企業の強いブランドなどが加わると、もともとの「優越感」や「プライド」が見事に大企業病を引き起こす種となってしまうのです。つまり、大企業病は大企業に属し、将来管理職の可能性がある社員であれば誰でもが若いうちから少しずつ罹ってしまう可能性があるのです。

 

なぜ今、大企業病が注目されているのか

この大企業病ですが、なぜ最近注目されているのでしょうか?

それは、このところの大企業の度重なる不祥事の原因としても関係がありそうですが、もともとは1990年代に終身雇用の崩壊が進み、転職が当たり前になったことが考えられます。

それまでは、役職定年近くになると天下りや子会社や関連会社への出向転籍という形で、大企業病が発症しても表に出にくい状況から、まったく利害関係のない企業への転職が一般化して、その症状の重さが表面化したのです。

これはどういう現象かというと、一言で言えば、中小企業が大企業出身の社員をその経歴や実績を見込んで採用してみると、実は自分でゼロからも1からも仕事はできずに、元の職場との比較で文句だけは多いという役に立たない人材だったということなのです。

 

大企業病の実例

実際の例をいくつかご紹介しましょう。

 

●実例(1)

入社1週間で首になった元地方銀行の常務取締役A氏

A氏は、地方の中堅流通業に役員含みの営業本部長で採用されました。

しかし、1週間目の朝に社長の出勤前の机の上に頼まれもしない「戦略とは何か?」というレポートを自信満々に提出したのです。

これを見た社長は「俺に戦略を語るとは何事だ!」と即座に首を言い渡しました。中小企業は乏しい資産を目いっぱい利用して活路を見出しています。その社長の経歴や努力を無視したかのような上から目線が社長の逆鱗に触れた一例です。

 

●実例(2)

入社わずか3日目の工場実習中に首になった元家電大手総務部長B氏

強烈なオーナー社長で有名な大手家電出身であることから、ある精密機械メーカーのオーナー社長がその政治力や気配りを期待して採用を決めましたが、入社3日目の工場実習中に書いた実習日報をオーナー会長が読んで激怒して、首を言い渡しました。そのレポートには「こういう実習は時間の無駄ではないか?」と書かれていました。大企業から中小に「来てやっている」という甘えがついつい本音として出てしまったことが大失敗となったのです。

 

●実例(3)

入社半年で自ら退職した同業界最大手の営業部長C氏

地方のベンチャー企業の社長が、自らの右腕人材として同じ業界の最大手で営業部長経験者のC氏を採用しましたが、結局半年経ってもまったく機械の構造や機能も理解できず、営業成果もゼロで、成果どころか見込み客すら開拓できずに自信をなくして退職しました。大手企業の営業部長と言っても実は大企業から離れるとそれほどの実力がないことが原因の例です。

 

さて、ではなぜこのような情けないと言ってもいいほどの状況になってしまうのでしょうか?

それは、大企業の持つインフラの大きさを自覚していなかったと言えるのです。

その大企業の持つインフラとは主に次の7つです。

(1)会社のブランド

(2)資金力

(3)組織力

(4)永年の経験値

(5)替わりの利く優秀な部下

(6)逆らえない外注先や取引先

(7)昔からの顧客との関係

 

一方で中小企業のオーナーはいかがでしょうか?

創業期にリヤカーを引いて商品全て売れるまで夜遅くまで商売をしていたとか、他社より劣る仕事をもらうために何百回も土下座して営業をしていたなど、まったくインフラが無い状態からスタートしているのです。このギャップに気がつかないことが原因と言えます。

 

大企業病を克服するには?

それでは、どのようにして大企業病を克服すればいいのでしょうか?

それは中間管理職として身につけるべき基本的態度を若いうちから意識して身につけることです。

それは、一個人としての人間力を磨き、会社の肩書ではなく、一個人として周囲からの協力を得られるようになることです。

入社したてはともかく、数年も仕事をしているとついつい自分の力でなく会社や組織の力で仕事をする癖をつけてしまいます。それが人間関係や仕事環境の見方を鈍らせてしまうのです。

先ほどの例でも、現場で一からスタートした社長への気配り不足、入社した会社の歴史や習慣への配慮不足、会社のブランドでの仕事を自分の実力と勘違いしていたこと、自分の方が立派な会社にいたという驕り高ぶり。このような感覚の乱れが大企業病を引き起こしているのです。

 

大企業病を予防するには、新入社員のうちから、先ほどの大企業が持つインフラをあたかも自分の実力の一部と過信したりしない「常に現場や末端や下請けを大事にする意識」、学歴や肩書きなどで仕事をするのではなく「一個人としての能力」を磨いて仕事をするということを教育する必要があります。

具体的に言えば、「人の上に立つ」とは人より仕事が抜群にできるから管理や教育ができるのであって、学歴や自分以外の能力があるからではないということを教えることです。さらに、「人の上に立つ」とは、尊敬されてこそ成り立つのであって「上から目線」ではないということです。

上司も大企業病の可能性があるので外部の講師に依頼して徹底的に教育することです。

 

今まで見てきたように、大企業病は会社の成長にも個人の人生にもマイナスです。皆さんの企業でも、その実情に合わせて教育を体系化する必要があると感じます。大企業の不祥事の遠因にもなっている可能性があるからです。

 

 
 

「大転職時代の人材論」一覧はこちら

 

 
 
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【著者プロフィール】
海老一宏 (えび・かずひろ)
人材紹介コンサルタント。キャリアカウンセラー。アクティベイト株式会社代表取締役社長。
1957年、宮城県仙台市生まれ。中央大学卒業後、東証一部上場企業 品川白煉瓦株式会社(現、品川リフラクトリーズ)に入社。人事、経理、営業に携わる。1992年に起業し、レンタルビデオ・CDショップを開業。1店舗からのスタートで、FC本部の経営まで事業を拡大。2000年に人材紹介会社に入社し、トップエージェントとして活躍。2005年に独立し現職に。財団法人みやぎ産業振興機構のビジネスプロデューサーも務める。エージェント歴は15年。面談者は6000名以上。エン転職コンサルタントで6年連続利用者評価NO.1(当社調べ)。
著書に『40歳からのサバイバル転職成功術』(ワニブックスプラス)、『一流と言われる3%のビジネスマンがやっている誰でもできる50のこと』(明日香出版社)。

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