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アドラー心理学に学ぶ「折れないチームづくり」

アドラー心理学に学ぶ「折れないチームづくり」

(2016年2月 8日更新)

 
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職場のメンタルヘルス不全は、ストレスチェックを実施して解決という問題ではありません。さまざまな対処法がありますが、アドラー心理学をベースにしたコミュニケーション研修では、予防、つまり折れないチーム・組織づくりを目指します。永藤かおる氏のコラムです。

 

*   *   *

 

ストレスチェックで終わりではないメンタルヘルスの問題

人材育成の研修を全国の企業、自治体で行なっているので、人事担当者の方々とお話しする機会が非常に多いのですが、そのたびに耳にするのが「メンタルヘルス不全でダウンしてしまう社員が……」という苦しいつぶやき。2015年12月から労働安全衛生法に基づくストレスチェックが義務化(従業員50人以上の事業所。50人以下は努力義務)されましたが、チェックをするだけで解決する問題ではありません。

 

あぶりだされた問題に対処するには、さまざまな方法があります。もちろん、ストレスが高い状態にあり就労が厳しいと判断された従業員には、医療機関への相談のうえ休職などの手続きがとられることになりますし、そもそもストレスが高いとされる部署には職場環境の改善という大きなテコ入れも必要になるでしょう。

 

しかしながら、アドラー心理学をベースにした広義のコミュニケーション研修を行う私たちに求められるのは、実はそこではなく、「予防」…ダウンしない、折れないチーム・組織づくりなのです。

 

行き過ぎた実力・成果主義の弊害

バブル崩壊、そしてリーマンショックが追い打ちをかけたこともあり、いわゆる「日本的な経営」……組織がひとつの家族のようにみなされ、終身雇用・年功序列が当たり前……の時代は終わりを告げました。実力・成果主義が台頭し、目に見える成果を追求することが第一義となり、自分が属する組織へのロイヤリティのようなものを否定する風潮が蔓延したのです。これ自体は、時代の流れとしていたしかたなかったのかもしれません。沈没しかかっている船から生き延びるには、おそらく周囲へのやさしさや思いやり、仲間意識よりもサバイバル能力のほうが大事だったのでしょう。

 

その結果、どうなったか。1998年から2011年までの14年連続で年間自殺者は年3万人を超え、非正規労働者がちまたにあふれ、サラリーマンのうつ病が爆発的に増え、休職者数も右肩上がり、そして冒頭のストレスチェック義務化、という流れです。

 

相互尊敬・相互信頼の職場づくり

なぜ実力・成果主義がこんなことを引き起こすか。アドラー心理学的見地から、そこに関わるキーワードは3つ。「安心感(所属感)」「信頼感」「貢献感」と捉えます。

 

前回「居心地のいい職場・悪い職場」にも触れましたが、組織で働く私たちにとって、20代前半~60代まで、人生のなかで最も長い時間と空間を過ごす場所が職場です。その職場にいる時間、とにかく誰よりも成果を上げねば、結果を残さねばと思うと、当然まわりはライバルになります。ライバルだらけの環境でまったく安心できない、居心地が悪い、いつもビクビクしているような状態だとしたら? まわりの人を信じられるわけもなく、常に不信感をもっているような心もちだとしたら? そんななかで、あなたはその組織に貢献しようと思えるでしょうか。

 

一方、仕事内容自体はシビアだとしても、自分がそこにいられる、いたいと思える(安心感・所属感)をもち、上司や同僚、後輩たちを信頼することができ、ともに働くことで力が湧いてくるような職場だとしたら、「自分はまわりのために何ができるだろうか」という貢献意欲が湧いてくるのではないでしょうか。

 

ではそのような職場をつくるには? 給料を上げればいい? 飲み会を増やせばいい? 社員旅行で親睦を深めればいい?

 

そんなことではない、ということはおわかりですね。大切なのは、同じ目標を共有し、そこに向かって各個人が(個性はどうあれ)相互尊敬・相互信頼をしあえるコミュニケーションが常に図れる風通しのよい組織づくりです。

 

年齢の上下や役職の有無にかかわらず、一人ひとりが自分の力を発揮しようと思える、そしてそのお互い同士を人として尊敬し、信頼しあえる。それが相互尊敬・相互信頼です。理想主義的かもしれません。でも、この思いがベースにあるかないかで、その組織のために発揮できる力は大きく変わってくるのも事実ではないでしょうか。

 

「アドラー心理学に学ぶ『勇気づけ』の職場づくり」一覧はこちら

 

 

 


 

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永藤かおる(ながとう・かおる)

(有)ヒューマン・ギルド研修部長。心理カウンセラー。1989年、三菱電機(株)入社。その後ビジネス誌編集、海外での日本語教育機関、Web 制作会社など、20年以上のビジネス経験のなかで、人事・採用・教育・労務管理等に携わる。どの現場においてもコミュニケーション能力向上およびメンタルヘルスケアの重要性を痛感し、勤務と並行して学んだアドラー心理学を生かして現在㈲ヒューマン・ギルドにてカウンセリング業務および企業研修を担当。著書に『「うつ」な気持ちをときほぐす 勇気づけの口ぐせ』(明日香出版社)、PHP通信ゼミナール『リーダーのための心理学 入門コース』(監修:岩井俊憲、執筆:岩井俊憲・宮本秀明・永籐かおる、PHP研究所)などがある。


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