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65歳定年制が個人に与える影響を考える

65歳定年制が個人に与える影響を考える

(2016年6月21日更新)

 
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65歳定年制は働く人にどのような影響をもたらすのでしょうか。前回にひきつづき、海老一宏先生が解説します。

 

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雇用制度の変化がもたらすもの

2013年に65歳雇用延長の法律が施行され、2025年4月からは完全に義務化されること、実は一昔前の1998年までは55歳が定年だったということをお話しました。

※前回の記事(「65歳定年制を考える~企業側の問題」)で、この20年足らずの間に人間の寿命も会社の環境も大きく変化しているのを実感します。

また、55歳から60歳への定年延長化に伴って企業の人事制度は定年前の中高年人材の有効活用を考えた抜本的な改善とはならず、役職を外して賃金を下げてそれなりに雇用するという従来の人事制度のマイナーチェンジ型で切り抜けたと考えられることを書きました。

 

このマイナーチェンジ型の雇用制度と、以前からの日本企業の人事の一つの特徴であるゼネラリスト養成型の人事体制とが、多くのホワイトカラーの管理職層の働き方と定年後の人生に大きな影響を与えたと私は考えています。結論からいうと定年前の数年間に責任が少ない働き方となり、絶頂期の輝きを無くしてさみしい定年を迎えている人が少なからずいるのです。

 

多くのゼネラリストは年齢とともに居場所が無くなる

その弊害は2つあります。言うまでもなく高度成長期のように企業の組織が拡大して支店長や営業所長などのポジションがどんどん増えている状況では優秀なゼネラリストが必要でしたが、拡大よりも質や生産性が重視される現在の状況では、組織ピラミッドは拡大せず、多数のゼネラリストの雇用に無理があります。そしてゼネラリスト重視の方針は終身雇用という大前提が背景にあることは言うまでもありません。終身雇用ではゼネラリストとして横断的に仕事をすれば、仕事の幅も広がり企業経営者候補として人脈もできますし、マネージメントができれば実務は部下がやってくれるので、企業の中では専門性が無くても肩書があればなんとかなるのです。また、ある程度貢献したゼネラリストは、会社人生の余生を過ごす形で数年勤めて定年を迎えていました。それが、終身雇用化での一つの幹部管理職への御褒美でもあったのです。

つまり多くのゼネラリストは年齢とともに居場所が無くなっているのです。

このような企業人生の晩年の過ごし方は多くの管理職にとって「まだまだバリバリ仕事ができるのに役職も仕事も取り上げられてショックだ」と仕事の意欲の減退を生じました。そして個人にとっては何よりも重要な賃金の減少を伴っています。

 

もう一つの弊害は、役職定年でポジションから外されたり、会社に未来を見いだしたりできずに転職したゼネラリストは、ついこの前まで「課長」や「部長」という肩書があったにもかかわらず、それが案外役に立たないということを思い知らされるということです。確かに転職エージェントをしている私は、社長の後継者とか事業部長などのゼネラリストの求人を見ていますが、それとて同じ業界出身者などの即戦力を求められており、一流大企業で部長をしていたからどこでも通用するということはありません。つまり、時代はゼネラリストではなく個人としてどれだけパフォーマンスが高いのか、何の分野のスペシャリストなのかということが大事な時代になっています。逆に転職市場では、以前の会社でそれほど高いポジションではないけども高い専門性のある人が、すぐに転職して活躍していることがよくあります。

 

個人としての65歳雇用延長への対応

さて本題の個人としての65歳雇用延長への対応の仕方です。

今までの話でおおよそ見当はついているかと思いますが、これからは55歳で役職定年となり、給与も半減するのでその後は出世をあきらめ、あくせく働くこともやめて、いただく給与なりに働けばいいという考えでは、大事な残りの20年か30年の人生を台無しにしてしまう可能性があると言うことです。

2025年には完全に65歳までの雇用となりますが、仮に55歳で役職定年になったとすれば、会社にいる時間だけでも10年間あります。この間の会社の過ごし方は本来仕事の集大成の時間として、そしてさらに定年後の新たな人生への導入部分として重要な期間なのです。

「給与は低いがその分責任もないなら、退職金が満期となるまでのんびりと過ごして何が悪いのか?」そういった疑問がでそうです。確かに仕事も急に少なくなり責任が無くなったからとのんびり過ごしていける人も確かにいるでしょう。しかし私が見ている多くの中高年は違います。多くのホワイトカラー管理職の方は、50代までに培った経験を何か別のことで活用して自己実現と社会貢献をしたいという強い欲求があるのです。当たり前かもしれませんが、優秀な方にとっては、誰からか必要とされていることが生きていることの証でもあるのです。

50歳後半や60代の前半は、体力も気力もまったく問題はありません。気力などは若いころよりも高まっている人もいます。

 

充実した老後の準備は50代から始める

そしてもうひとつお金の視点で考えても、仕事をまったくせずに退職金と貯金を取り崩して月々の年金と合わせて暮らす人は、残りの貯金を計算する生活になり、消費が少なくなる傾向がある一方、退職後もスペシャリストとして誰かの役に立ち、毎月10万でも収入がある仕事を続けていける人は、貯金は少なくても消費が多く人生を楽しんでいるという報告があります。

収入がないけど自由だらけの老後と、少ない収入でもやりがいを感じる仕事がある老後とどちらを選択するかです。

私は、人生は自分だけの居場所=オンリーワンの人生を見つける旅だと考えていて、ゴールや完成はなく、つねに精進あるのみだと思っています。

そこには悩みも苦しみもつきまとうかもしれませんがそれこそ人生です。

 

いい人生とは暇な人生ではありません。誰かに必要とされる、自分を表現できる忙しい人生がいい人生ではないでしょうか?

その準備を始めるのは遅くとも50代からなのです。

 

「大転職時代の人材論」一覧はこちら

 

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【著者プロフィール】
海老一宏 (えび・かずひろ)
人材紹介コンサルタント。キャリアカウンセラー。アクティベイト株式会社代表取締役社長。
1957年、宮城県仙台市生まれ。中央大学卒業後、東証一部上場企業 品川白煉瓦株式会社(現、品川リフラクトリーズ)に入社。人事、経理、営業に携わる。1992年に起業し、レンタルビデオ・CDショップを開業。1店舗からのスタートで、FC本部の経営まで事業を拡大。2000年に人材紹介会社に入社し、トップエージェントとして活躍。2005年に独立し現職に。財団法人みやぎ産業振興機構のビジネスプロデューサーも務める。エージェント歴は15年。面談者は6000名以上。エン転職コンサルタントで6年連続利用者評価NO.1(当社調べ)。
著書に『40歳からのサバイバル転職成功術』(ワニブックスプラス)、『一流と言われる3%のビジネスマンがやっている誰でもできる50のこと』(明日香出版社)。

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