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ジェネレーションギャップ~世代差による職場の軋轢にどう対処するか

2016年9月 9日更新

ジェネレーションギャップ~世代差による職場の軋轢にどう対処するか

ジェネレーションギャップ、世代間の軋轢のない、風通しのよい職場を実現するには? アドラー心理学に学びます。

「さとり世代」「ドローン型」というニックネーム

このコラムをお読みくださっている方は、何世代と言われた経験をお持ちでしょうか? 直近のゆとり・さとり世代に始まり、団塊ジュニア、バブル、新人類、団塊など、とかく私たちは「自分以外の」世代になにかしらのニックネームを付けたがりますが、自分たちが「あの○○世代」と言われることを嫌がります。そういう私は、バブル入社の新人類世代。四半世紀以上経った今でも「使えない」「おバカな」世代の代表格とされていることにうっすらと憤りを感じたりもしています。自分で選んでこの世代に生まれてきたわけではないのに、十把一からげにされていることに対してもどかしさを覚えるのです。そんな思いをされている方はいらっしゃいませんか?

上記の世代名もそうですが、公益財団法人日本生産性本部が3月末に発表する「新入社員のタイプ」をご存じの方も多いでしょう。「今年の新人は○○型」と言われるものです。その前年に流行したものに若干無理やり関連付け、まだ入社さえしていない新人をとにかくカテゴライズしようとしている感が否めません。ちなみに平成28年度の新人は「ドローン型」。「強い風(就職活動日程や経済状況などのめまぐるしい変化)にあおられたが、なんとか自律飛行を保ち、目標地点に着地(希望の内定を確保)できた者が多かった。さらなる技術革新(スキルアップ)によって、様々な場面での貢献が期待できる。」(公益財団法人日本生産性本部2016年3月23日プレスリリースより)だそうです。

しかし皆さんの目の前にいる、今年入社の佐藤君や鈴木さん、高橋君や吉田さんは、画一のドローンではないはずです。とくに、人事・採用担当の方であれば、一人ひとりをじっくり見てきてお気づきでしょう。彼らはユニークで、自分の意見をもち、きらりと光る個性があるはずです。「あいつら新人は」「あいつら若手は」とおおざっぱにくくってしまうのには惜しい面白さをもっているのではないでしょうか。日本の平成28年度の新入社員全体像はドローン型だとしても、です。

経験による認知と周囲の声による認知

私たちは、人やものごとを見て判断をする際、自分の認知を駆使します。「認知」というメガネをかけ、そのレンズを通して人やものごとを見ているのです。そうした認知のメガネの度数やレンズの色は、それまでの経験に基づき形づくられることがほとんどで、一人ひとり異なっています。

たとえば、溺れた経験のある方は「水は恐ろしいもの」という認知をもち、なるべく水辺に近づかないようにする傾向があるでしょうし、犬に噛まれた経験がある方は「犬=危険」という認知をもち、子犬でさえ避けがちになっているかもしれません。

そして、私たちは自分の経験以外にもう一つ認知の判断基準をもつことがあります。それは「周囲の(もしくはマスメディアの)目、声」です。しかも声が大きい人が言ったことに私たちはなびきがちです。「今年の新入社員、ドローン型らしいよ」「ああ、きっとうちの新人もそうだろう」。そう思うと、ドローン型の特徴と目の前の人を照合し、ひとつでも合致しているものがあれば、「ほらやっぱり」となります。「バブル世代は使えないなぁ」「ああ、うちの課長、バブル入社らしいですね」。そうなると、課長がちょっとしたミスをしただけで「やっぱりね」となります。

しかしながら、この判断基準、誰にとって有益なのでしょう?

「認知」のメガネをはずす

もし皆さんの職場にこんな世代に対する固定概念が存在するとしたら、一度その認知のメガネを外してみてください。そして、そこにいる個人を見てみていただきたいのです。その個人の行動やふるまいに何か違和感を覚えるとしたら、それを世代の特徴として捉えるのではなく、その人固有のものと捉えてみるのです。

業務遂行や目標達成を妨げるような目に余る振る舞いがあったとしても、それはその個人の問題であり、彼や彼女が属する世代の問題として捉えない癖をつけることが大切です。立場が上の者が、安易に「あの世代は」と言わなくなり、意味のない「世代のカテゴライズ」を否定するようになれば、下の世代も視点が変わります。これを徹底するのです。

生まれた年が違えば、流行も文化も社会情勢も変わります。「違うことは当たり前」をまず受け入れることが必要です。新人と退職目前のベテランとでは、経験も、体力も、仕事への向き合い方も、ITリテラシーの概念も違うのは当然です。そうした違いがあり、多様性があるからこそ、さまざまなことに柔軟に対応できるしなやかで強い組織となれるのです。

世代のカテゴライズをなくし、個を認める。違うからこそ補い合う。業務上違ってはならないことだけを修正する。そして、相互尊敬・相互信頼(「非正規社員のモチベーション・マネジメント」の回で詳しく解説しています)を徹底させることによって、意味のない世代意識は薄れていき、世代間に軋轢のない、風通しのよい職場を実現できるでしょう。

「アドラー心理学に学ぶ『勇気づけ』の職場づくり」一覧はこちら

通信教育「リーダーのための心理学入門コース」はこちら

【著者プロフィール】

永藤かおる(ながとう・かおる)

(有)ヒューマン・ギルド研修部長。心理カウンセラー。1989年、三菱電機(株)入社。その後ビジネス誌編集、海外での日本語教育機関、Web 制作会社など、20年以上のビジネス経験のなかで、人事・採用・教育・労務管理等に携わる。どの現場においてもコミュニケーション能力向上およびメンタルヘルスケアの重要性を痛感し、勤務と並行して学んだアドラー心理学を生かして現在㈲ヒューマン・ギルドにてカウンセリング業務および企業研修を担当。著書に『「うつ」な気持ちをときほぐす 勇気づけの口ぐせ』(明日香出版社)、PHP通信ゼミナール『リーダーのための心理学 入門コース』(監修:岩井俊憲、執筆:岩井俊憲・宮本秀明・永藤かおる、PHP研究所)などがある。

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