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事例研究系の研修技法 効果と課題

事例研究系の研修技法 効果と課題

(2016年9月20日更新)

 
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事例研究系の研修技法は、類似の問題や状況における問題の解決に必要な力を養成できます。長所と短所、実施上のアドバイスをご紹介します。

 

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事例研究系の研修技法とは

さまざまなビジネスの場面、職場の中、あるいは経済環境の中で、起きそうな問題を具体的な事例(ケース)として、個人またはグループで研究し、実務に役立つ原理原則を修得させ、実践力を高めようとする技法である。シカゴ大学で最初に行われたことから、シカゴ方式ともいう。受講者は提示された事例を、当事者の立場に立って解決していく過程を通して、類似の問題や状況における問題の解決に必要な分析力、判断力、洞察力、意思決定力等を養成することができる。最近ではMBA(経営学修士)をはじめ、ハーバード形式と言われるような現実の企業活動等を事例の素材として使用することもある。

業務遂行において、同じ情報がもたらされたとしても、その情報の捉え方(知覚)や処理の仕方(判断)は十人十色であり、決して同じ行動が導き出されるわけではない。事例研究を通じて、受講者は自身の判断パターン(思考の癖)を知ることも可能となり、自己理解の促進にも有効な技法である。この技法では、個人研究の後、その結果をグループで出し合い、ぶつけ合うことによって、相互に刺激し合うことが重要である。

なお、最も多く採用されている講義法の欠点を補う技法が討議法であるが、討議法の「抽象的、第三者的結論に陥りやすい」といった欠点は、個別的、具体的な事例研究法によって補うことが可能である。技法を組み合わせる必要があるのは、こうした技法の利点や欠点があるからだということがお分かりいただけよう。

 

【対象】

・主として中堅係員~管理者層、経営幹部

 

【効果】

・判断力、問題解決能力の向上

・視野の拡大、相互啓発の促進

 

【長所】

・一般論ではなく「事例」なので、集中して討議できる

・原理原則論を当てはめて考えるのに適している

・事例の模範解答でコメントできるので説得しやすい

・自分は体験していないが、起こりうることを事前に研究することができる

・自分の実際の立場や役割よりも、ワンランク上の立場での事例を疑似体験することができる

 

【短所】

・各自の共通問題事例として準備することが不可能

・ケースの「出来」が研修の出来を左右する

・事例のための解答で終わるきらいあり

・自分自身が当事者ではないので、とかく「他人事」になりやすい

・ケースを使った目的が十分に受講者に理解されるためには、フィードバックに十分時間をとることが必要

・自らの組織実態に合ったケースを開発する必要がある

・講師の力量が大きく影響する

 

【実施上のアドバイス】

・理屈だけのあるべき論に終わらせないように、現実にどのように行動すればよいのか、行動の手順まで考えるとよい

・事例指導のマニュアルや最適解に頼りすぎず、講師の経験などを踏まえた実践的な指導を心がけること

・グループ討議の最中は、グループの討議の軌道がずれたり、行き詰まったりしていないか、よく観察をして、必要に応じて発問等により軌道修正を行うこと

・討議をすることに意義はあるものの、講師としての見解は明快に述べるとよい

 

 

事例研究系研修の実施ステップ

 

◇計画

(1)研修の目的、事例研究の前提条件の確認

・人数、時間、受講者の知識レベル、研究テーマ等

 

(2)事例の選択(場合によっては開発)

・受講者の職務内容や研修テーマに沿ったもの、受講者の職場の実態にできるだけ近い状況のものを選択する

・事例は、教材ビデオ、小説、映画といったものから選択することも可能

 

◇実施

(1)事例の提示

・研究のねらい、実施要領を説明する

・「誰の立場に立って取り組むか」という問題分析の立脚点を明確にする

 

(2)個別研究

・問題解決者の立場や視点で事例を解釈し、とりうる行動の選択や判断、評価をさせる

 

(3)グループ研究

・個別研究の結果をもちより、グループで比較検討させる

・グループの統一見解(最適解)を集約して、模造紙などに書き出させ、グループごとに報告させる

 

(4)全体討議

・グループ研究の結果をさらに集約し、結論を一般化、普遍化し、理解を深めさせる

・グループ間で見解が異なる部分を、全体で自由討議させるのもよい

 

(5)講評と解説

・受講者の功をねぎらい、課題の捉え方や検討の仕方、議論の進め方や受講者の参加姿勢などに対して講評を行う

・事例の当事者としての望ましい判断や行動のあり方について、講師見解を述べ、解説を行う

 

◇評価

・受講者は意欲的に建設的な内容の発言を行ったか

・受講者全員がよく発言し、また討議は活発であったか

・問題が討議されないまま残るようなことはなかったか

・導き出された結論は、研修の目的に沿うものであったか

 

 

 

※出典:『[実践]社員教育推進マニュアル』(2009年1月・PHP研究所発行)

 


 

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【著者プロフィール】
茅切伸明(かやきり・のぶあき) 
株式会社ヒューマンプロデュース・ジャパン 代表取締役。
慶應義塾大学商学部卒業後、(株)三貴入社。 その後、(株)日本エル・シー・エー入社。 平成1年3月 住友銀行グループ 住友ビジネスコンサルテイング(株)(現SMBC コンサルティング(株))入社。セミナー事業部にて、ビジネスセミナーを年間200 以上、企業内研修を50以上担当し、他社のセミナーを年間50以上受講する。 平成18年4月 (株)ヒューマンプロデュース・ジャパンを設立。「本物の教育」「本物の講師」「本物の教育担当者」をプロデュースするという理念を掲げ、現在まで年間500以上、累計8,000以上のセミナー・研修をプロデュースするとともに、セミナー会社・研修会社のコンサルティング、セミナー事業の立ち上げ、企業の教育体系の構築なども手掛ける。 
著書に、『実践社員教育推進マニュアル』、通信教育『メンタリングで共に成長する新入社員指導・支援の実践コース』(以上、PHP研究所)、『だれでも一流講師になれる71のルール』(税務経理協会) 
 
 
松下直子(まつした・なおこ) 
株式会社オフィスあん 代表取締役。社会保険労務士、人事コンサルタント。 
神戸大学卒業後、江崎グリコ(株)に入社。新規開拓の営業職、報道担当の広報職、人事労務職を歴任。現在は、社会保険労務士、人事コンサルタントとして顧問先の指導にあたる一方、民間企業や自治体からの研修・セミナー依頼に応え、全国各地を愛車のバイクで巡回する。
「人事屋」であることを生涯のライフワークと決意し、経営者や人事担当者の支援に意欲的に向き合うかたわら、人事部門の交流の場「庵(いおり)」の定期開催や、新人社会保険労務士の独立を支援するシェアオフィス「AZ合同事務所」の経営など、幅広く人材育成に携わっている。
著書に、『実践社員教育推進マニュアル』『人事・総務マネジメント法律必携』(ともにPHP研究所) 、『採用・面接で[採ってはいけない人]の見きわめ方』『部下育成にもっと自信がつく本』(ともに同文舘出版)ほか。

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