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マタハラ研修は誰を対象に実施すべきなのか?

2020年6月19日更新

マタハラ研修は誰を対象に実施すべきなのか?

企業で必須となったマタハラ(マタニティ・ハラスメント)研修。その望ましいあり方を解説します。

マタハラ研修は事業者の義務

マタハラ(マタニティ・ハラスメント)とは、職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントのことです。

わかりやすい事例をあげますと「産前のつわりがひどいので負担の軽い業務に変えてください」と申し出た人に対して、担当を変更する代わりに降格するといったもの。こうした「不利益取り扱い」については、以前から法律により禁止事項とされてきました。

そして、2017年1月施行の改正男女雇用機会均等法および改正育児・介護休業法では、働く人への研修を行うこと、相談窓口を設けることなど、十分な防止措置を講じることが事業主に義務づけられました。

では、マタハラ研修はどういう人が対象になるのでしょうか。結論から言いますと、全従業員が対象となります。なかでも重要な、管理職に対する研修から解説しましょう。

加害者になりやすい管理職

管理職は、ハラスメント防止のリーダーとなる層であると同時に、加害者になりやすい層でもあります。制度を利用する人にとって、上司の発言はインパクトが強く、制度利用を阻害する程度が大きいため、1回の言動でハラスメントに該当すると見なされる可能性があります。

また、管理職は、制度利用者と職場のメンバーの調整役を担うことになります。妊娠や制度利用による量的戦力ダウンのしわ寄せが特定の社員に集中しないよう、業務調整(効率化、分担の見直し、人員補充)を行なうことが求められます。妊産婦、制度利用者に対して、円滑なコミュニケーションを図りながら業務にあたるという意識を啓発することも大切でしょう。

このようにキーマンとなる管理職に対しては、現場対応に必要な基礎知識を修得させるとともに、「制度利用者に対する適正な評価の在り方」をレクチャーする、妊娠報告を受けた際の上司の対応をロールプレイで研修するなど、十分な教育を行う必要があります。

非管理職にはマタハラ研修は不要?

今回の改正法では、日ごろから接する機会の多い職場のメンバー間でのハラスメント行為について言及し、社員一人ひとりのマタハラ行為を防止する啓発活動や組織づくりを求めています。

職場の同僚のなかでも、よく事例としてあげられるのが、先輩女性社員の言動です。女性の同僚は意図せず加害者になることがありますので、注意が必要です。

たとえば「私の時は、復帰してすぐに正社員としてがんばってきたわよ。あなたもがんばりなさいよ」「あなたの夫は育児に協力してくれないの? 協力があればもっと仕事ができるんじゃないの?」「いまは制度が充実しているから、いいわね」といった発言です。

本人を取り巻く状況や子育てに対する考え方は、それぞれに異なります。先輩女性が相手を慮ることなく、自らの経験に基づく一方的な意見を繰り返しまたは継続的に言うことによって、本人が精神的に苦痛を感じるようなケースも問題です。

制度利用者への啓発

一方、制度利用者の態度が問題になるケースもあります。たとえば、休業・休暇にそなえた情報共有や業務引き継ぎが不十分で周囲に迷惑をかけている。あるいは、制度の利用が当たり前という態度が周りの反感を買う。このような場合、周囲が妊産婦や制度利用者全般に対して否定的な評価をもつようになり、ネガティブな発言からハラスメントへと発展しかねません。制度を利用するには職場の同僚の協力が不可欠であり、配慮と感謝の気持ちを忘れてはならないことを啓発することが必要です。

企業としてのメッセージを伝える

マタハラ研修は、基礎知識を一方的に講義するよりも、身近に起こり得る事例をあげて一人ひとりに考えさせる方法が最適です。研修とあわせて、妊娠中、育児中も働き続けられる制度があることを伝えるリーフレットを作成し、配布するのも有効でしょう。

マタハラの研修を行うことは、企業として皆が働きやすい職場づくりを目指しているというメッセージを働く人に伝えることにもなります。働く人が存分に力を発揮できる職場づくりの一環として、積極的に取り組んでいただきたいと思います。

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大浦綾子(おおうら・あやこ)
弁護士。平成14年、京都大学法学部在学中に司法試験に合格。卒業後、ボストン大学ロースクールに学び(法学修士)、平成22年に卒業、ニューヨーク州司法試験に合格。帰国後は、外資系試薬会社法務部にて勤務。現在、野口&パートナーズ法律事務所に勤務。弁護士として日々数多くの事例やトラブルに接しており、豊富な知識・経験に基づく、具体的で実践的なアドバイスには定評がある。現在、子育て中の人気弁護士。

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