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研修で学びましたが成果が出ません~コーチングQ&A

研修で学びましたが成果が出ません~コーチングQ&A

(2016年1月10日更新)

 
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研修で学んだコーチングについては非常に大きな可能性を感じました。研修後、相手の能力やプラス面を引き出すために、あらゆる場面で相手の話をよく聴く姿勢に徹するよう努力しています。

休憩時間では、雑談の中で拡大質問をうまく使えていると思いますが、業務時間内での仕事に関するコーチングはなかなか難しいと感じています。先日も、部下の半年間の業務目標シートの見直し面談をするときに、多少コーチングはしたものの、時間も短く、決して満足のいくものではありませんでした。

また、性格的に口数の少ない人との対話が難しいと感じています。そういう人は、あらかじめ「1対1でコーチングしましょう」と言ってもいやがると思われますので、雑談的な話をしながら少しずつ仕事に関するコーチングをしていこうと考えています。

いずれにしても、研修から2カ月あまり、まだはっきりとした成果は見えてきていません。

(本田一郎・メーカー製造課長〈仮名〉)

 

*   *   *

 

本田さんは、研修で学んだコーチングスキルを業務面で活かそうと取り組みながら、なかなか思うように行かず、難しさを感じておられるようですね。さもありなんと思います。これは本田さんに限ったことではなく、多くのコーチングの初心者に共通の傾向なのです。

したがって、踏ん張って乗り越えるか、あきらめて手放すか、ここがコーチングの達人への道を進むかどうかの分かれ目だということになるでしょう。ぜひ乗り越えていただきたいものです。そのために、いくつかのアドバイスをさせていただきましょう。

 

 

コーチングの達人になるための三つのポイント

 

(1)コーチングにとらわれすぎない

本田さんは、コーチングに可能性を感じ、興味をもたれたのだと思います。それは素晴らしいことです。しかし、「だからコーチングを使わなければ」とあまり強く思い込む必要はありません。というより、それはかえって逆効果です。

本田さんはプロのコーチになるわけではなく、あくまで管理者・マネジャーなのですから、マネジメントに必要なスキル、使えるスキルは何でも使えばいいのです。コーチングもその一つであって、コーチングが有効だと思えるときには使えばいいし、今はそんな場合ではないとか、コーチングが通用しそうもない相手に対しては、あっさりとコーチングを手放し、指示、命令、叱責、あるいはカウンセリングと、しかるべきスキルを使ってください。

これからのリーダーは、できるだけ多くのコミュニケーションスキルを身につけ、相手や状況に応じて使い分けることが望ましいと言われていますが、それは将来の課題として、現時点では、コーチングは使えるときに使えばいい、ぐらいの軽い気持ちで取り組んだほうが、かえってうまくいくのではないかという気がします。

 

(2)特別な時間は不要

なかなかコーチングの時間がとれない、というのは、多くの忙しい管理者に共通の悩みですが、これも気楽に考えましょう。つまり、コーチングのための特別の時間をとる必要はないし、部下に「コーチングします」と言う必要もない、と割り切ってしまうのです。

部下とのコミュニケーションは、時間の長短にかかわらず、日常頻繁に行なっているはずですから、その中で、(1)に述べたように、「使えるときに使う」というスタンスで臨機応変にやればいいのです。例えば、以下のようなことです。

・部下が報連相にきたら、とにかく話を全部聴く

・「こうしたらいいよ」とか「こうしてくれ」と言う前に、「君はどう思う?」と一回だけ質問する(時間の余裕があれば質問を2~3個続ける)

・部下が挨拶したら必ず挨拶を返す(声に出して)

・「いつも机の上がきれいだな」とか「君の電話の声がでかいんでこっちも元気が出るよ」のように、承認のメッセージを一人に一日一つは投げかける

こういう習慣が、自分のコーチングスキルを徐々に磨くとともに、部下との関係に好ましい変化を生むものなのです。まずはここらあたりからしっかり取り組むことをお勧めします。

なお、目標設定面談などのように少しまとまった時間がとれるときは、特に「傾聴」を意識して、じっくりと聴くことを心がけていただきたいと思います。

 

(3)「コーチングマインド」だけはしっかりと

スキルについては気軽に考えたほうがいいと申し上げましたが、コーチングの基本の考え方だけはしっかりと保ち続けていただきたいと思います。端的に言えば、どの部下にも無限の可能性がある、どの部下も自分の答えをもっている、ということを絶対的に信じ続けることです。

これを私どもは「コーチングマインドをもつ」といっていますが、このマインドさえあれば、部下への対応は自然に変わり、相互の関係も自然に変わってくるものなのです。スキルは徐々に鍛えていけばいいのですが、マインドだけは、今、この瞬間に、ご自身の心の中にきっちりとリセットしていただきたいと思います。

 

 

雰囲気・風土の変化を当面の目標に

なお、本田さんの文面に「口数の少ない人との対話が難しい」とありますが、こういう人にこそコーチングは効果的です。ただし、それには上司の側にある程度の「ゆとり」が必要です。せかさず、追及せず、ゆったりした雰囲気で相手の話を聴く、温かい関心のこもった質問や承認のメッセージを投げかける、ということを心がけてください。こちらがイライラすると、相手はますます萎縮して話せなくなるものです。

ともあれ、コーチングで早く何らかの成果を出さなければ、と焦る必要はありません。まずは、管理者である本田さん自身の考え方や態度・行動が、コーチングマインドにのっとって少しずつでも変化することです。そこから、部下との関係が変わり始めます。それは双方にとって必ず好ましい変化であるはずです。そして、これまでよりも話しやすい雰囲気、風通しのよい職場風土というものが醸成されていきます。

具体的に誰がどうなったという成果よりも、こうした雰囲気・風土の変化を当面の目標とされるほうがよいと思います。繰り返しますが、それは本田さんご自身の変化から始まるのです。
 

 

【POINT】

コーチングの要諦は「待つこと」「焦らないこと」と心得よう

 

 

出典:『リーダーのためのコーチング実践Q&A』(2005年8月/PHP研究所)

 


 

【著者プロフィール】

星雄一(ほし・ゆういち)

1969年、松下電器産業株式会社(現・パナソニック株式会社)に入社後、(株)PHP研究所に出向。月刊「PHP」編集部、出版部、直販普及本部などを経て、1997年、同社取締役。2008年、専務取締役。2009年、任期満了により退任。

営業・編集・出版・子会社設立運営・人材育成と多方面の経験を活かして、PHPゼミナールの企画運営や研修講師育成にあたる一方、経営幹部のマネジメント、リーダーシップ全般の研修も担当。また、「PHPコーチング」プログラムを企画開発し、自らもコーチング講師として講演・講師活動を行なう。

現在、(株)PHP研究所客員。

 


 

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