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聴き上手になれない。自分のスタイルを強要してしまう~コーチングQ&A

聴き上手になれない。自分のスタイルを強要してしまう~コーチングQ&A

(2016年3月24日更新)

 
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私は現在のところ部下はいませんので、後輩に対するコーチングについておたずねします。自分の担当業務に関して後輩を指導する場合、以下の点に問題があるかなと感じています。

1)自分のスタイルを強要してしまう傾向にある

2)スピードを優先してしまい、きめこまかいアドバイスができない

3)後輩の能力を十分発揮させるサポートが上手くできない

4)自分の意見を先に言う傾向にあり、相手の意見がうまく聞き出せない

また、業務以外の面でも、後輩や同僚に対してもうひとつ聴き上手になれていないように感じます。聴き上手になるためのポイントなどを教えていただければと思います。

(矢田一郎・団体職員・主任〈仮名〉)

 

*   *   *

 

矢田さんのご質問は、ある意味でコーチングスキルのすべてに関わることで、これらを改善克服していく過程がコーチングを修得する過程そのものだといえます。つまり、これらはコーチングを学んで活用しようとしている人の誰もが多かれ少なかれぶつかる壁であって、難しいからとあきらめるか、自分自身の訓練と考えてがんばって実践し続けるか、ここがその分かれ目だとも言えるでしょう。ぜひがんばっていただきたいのですが、これらのご質問は非常に幅が広く、とても簡単にコメントできるものではありません。

そこで、これらのご質問のすべてに共通するベースとなる考え方についてアドバイスをさせていただくことにします。

 

「先輩・後輩」と「上司・部下」の違い

まず、後輩との関わり方について考えてみましょう。「先輩・後輩」の関係は「上司・部下」の関係とは異なり、お互いに、管理・育成の責任や指示命令に従う義務はないのが普通です。

ただし、上司から先輩に「今年はA君の指導を頼む」、A君にも「彼の指導を仰ぐように」と明確な指示があった場合には、上司の指導責任の一部を分担する形になりますので、A君としても先輩の指導に従って業務を遂行する義務が発生すると考えられます。この場合は、A君の意志は原則として無関係です。

しかし、多くの場合は、そのような明確な指示はなく、後輩の成長に先輩として自主的に関わっていこうということでアドバイスや指導をするという形が一般的でしょう。

この場合は、後輩のほうに、この先輩のアドバイスや指導を受け入れようという意志があるかどうかが大きな問題になります。本人にそういう気持ちがないのに先輩があれこれアドバイスすれば、快く受け入れられないどころか、口うるさい先輩と敬遠されることにもなりかねません。

したがって、前者であれば矢田さんが気づいたことはどんどんアドバイスすべきですが、後者であれば、後輩の自主的な相談に応えるというスタンスを基本にすべきだと思います。矢田さんのケースがこのどちらであるかわかりませんが、まずここのところをはっきりと区分けし、それによって、ご自身の基本スタンスを明確に認識していただきたいと思います。

 

指導する側の人間性が問われる

なお、先に述べた、この先輩のアドバイスや指導を受け入れようという後輩の意志は、上司の指示に従って先輩の指導を受ける場合にも必須の要素であり、これがなければいかなる指導も効果は薄いといえます。要するに、先輩に対する信頼感や尊敬が根底にないと、形だけは受け入れても心の中では否定したり反発したり、ということになってしまうということです。

言いかえれば、指導・助言する中身やそのやり方よりも、指導・助言する側の能力とか人間性のほうが大きな意味をもつということであって、これは部下指導・人材育成に共通の原理であるように思います。

 

「教える」と「引き出す」

以上の「先輩・後輩」の関係を確認していただいたうえで、ご質問に戻りましょう。

まず前半のご質問ですが、この記述内容からは矢田さんがご自身の課題を明確に把握しておられることが窺えます。それはとても素晴らしいことだと思います。

ところで、この四項目は別々のテーマではなく、いずれも大いに関連がある内容だと思えますので、その共通点に主眼を置いて考えてみましょう。

部下や後輩の「指導」ということを、矢田さんはどう捉えておられるでしょうか。指導には、大きく分けて、「教える」という要素と、「引き出す」という要素があります。この両者とも必要なのですが、注意を要するのは、相手に応じてそのウェイトが異なるということと、「教える」ことには大きな限界があるということです。

「教える」ことの限界とは、

(1)自分がもっているもの以外は教えられない

(2)それが客観的にベストであるとは、あるいは相手にとってベストであるとは限らない

ということです。

したがって、新入社員や部署異動したての若手などに対しては「教える」部分が大きくなるのは当然ですが、ある程度経験を積んだ人に対しては、その考えや持ち味、スキルなどを最大限引き出すことを主眼に置き、“相手がどうしてもわからないところに限って教える”という姿勢に徹するべきだと思います。

この四項目を拝見すると、矢田さんは指導の力点をどうも「教える」ことに置いておられるように感じるのですが、いかがでしょうか。

 

相手の能力・可能性を引き出すには

研修で学ばれたとおり、コーチングの基本スタンスは、相手の能力や可能性を「引き出す」ところにあります。そのコツというか、意識すべきポイントは、主に以下のような点です。

1)できるだけ教えない。教えるよりアドバイスを

2)主人公は相手。相手が相談や質問にきたらアドバイスする

3)アドバイスする前に必ず質問をする

4)アドバイスの前に、「一つアドバイスしてもいいかな」のように相手の意思を確認する

5)アドバイスは、「これは自分の考え・やり方」という限定つきで。決して無理強いしない

 

このうちの(3)が非常に重要で、かつ難しいのですが、どういう種類の質問をしたらいいか、基本パターンをあげておきます。

 

イ)課題は何か。いつまでに何をしなければならないのか

ロ)どこまでできているのか。何が残っているのか

ハ)何がわかっているのか、わからないことは何か

ニ)何がうまくいっているのか、うまくいっていないことは何か

ホ)うまくいかない理由は何だと思うか。何があればうまくいくと思うか

ヘ)特に制約条件がなければ、自分としてはどういうやり方でやってみたいと思うか

 

こうした質問を投げかけることで、相手の考えを深めさせ、自分なりの答えを発見させるわけです。それなりに時間がかかりますから、緊急の場合にこうした対応をとるのは不適切で、すぐ指示して動かす必要があります。

しかし、後輩の本質的な成長を願うなら、可能な限りこうした質問のスタンスで対応していただきたいと思います。

 

部下の話は宝の山

なお、後半のご質問(「聴き上手」になるためのポイント)も、以上述べたことと大いに関連がありますが、もう一つ、重要な考え方をあげておきましょう。

それは、「部下の話は宝の山」ということです。一見取るに足らないことに見えても、部下の話の裏には、意外な情報やヒント、相手の本音などが隠れていることが多いものです。

また、話をちゃんと聴くことで相手の満足度は大いに上がり、やる気がアップします。部下の話をちゃんと聴くことは、このようないろいろな宝を得ることができるということを意味します。

だからこそ、上司にとって部下の話を聴くことは最も重要な仕事なのです。これは部下に限らず、後輩や、そのほかどんな相手に対しても基本的に共通です。

後輩や同僚の話を聴くことが自分にとってものすごく価値があり意味があることなのだ、そう認識することができれば、スキルなどは関係なしに、自ずから聴き上手に大きく近づくことは間違いないでしょう。

 

【POINT】「教える」よりも「引き出す」に重点をおいて部下・後輩と接しよう

 

出典:『リーダーのためのコーチング実践Q&A』(2005年8月/PHP研究所)

 


 

 

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【著者プロフィール】

星雄一(ほし・ゆういち)

1969年、松下電器産業株式会社(現・パナソニック株式会社)に入社後、(株)PHP研究所に出向。月刊「PHP」編集部、出版部、直販普及本部などを経て、1997年、同社取締役。2008年、専務取締役。2009年、任期満了により退任。営業・編集・出版・子会社設立運営・人材育成と多方面の経験を活かして、PHPゼミナールの企画運営や研修講師育成にあたる一方、経営幹部のマネジメント、リーダーシップ全般の研修も担当。また、「PHPコーチング」プログラムを企画開発し、自らもコーチング講師として講演・講師活動を行なう。

現在、(株)PHP研究所客員。

 


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