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「ほめまくる」ことに疑問を感じる~コーチングQ&A

「ほめまくる」ことに疑問を感じる~コーチングQ&A

(2016年8月10日更新)

 
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コーチングは、上手く使えば確かに部下の指導育成において有効性の広いスキルだろうと感じます。しかし、相手をほめまくることにどうしても疑問が残りますし、実際、上手くほめることができません。また、話し相手の行動や言葉を真似することも上手くできません。何かアドバイスがあればお願いします。

(多田三郎・自動車整備会社班長〈仮名〉)

 

*   *   *

 

多田さんは、研修で学んだコーチングスキルを実践活用しようとしていくつかの問題にぶつかっておられるようですね。ここに書かれていることに限って言えば、失礼な表現ですが、少し勘違いをしておられる可能性がありますので、その点を中心に記させていただきましょう。

 

「ほめる」の意味を再確認する

まず一点目ですが、「相手をほめまくる」という言葉が出てきます。少し気になる言葉です。

「ほめる」は「承認」の一部であり、コーチングでは非常に重要なスキルですが、これは「いいな」と心に感じたことをそのまま相手に伝えるという行動が基本であって、決してオーバーにほめたり、心にもないことを言ったりすることではありません。

そのストレートな承認が、相手には「自分の価値を認めてもらえた」という喜びとして響き、モチベーションがアップするのです。

一方、「ほめまくる」という言葉には、お世辞・おべっか・追従・おだて等々も総動員して相手のいいところを伝えることで相手をいい気持ちにさせ、結果として相手をこちらの意のままに動かそうという「意図」が感じられます。あるいは、相手の欠点や問題点は無視してとにかくオーバーにほめる、というニュアンスでしょうか。

 

なぜ不自然と感じるか

いずれにしても、自分の感じたことをそのまま伝えるのではなく、何らかの加工をしようとするわけですから、不自然であり、コーチングで言うところの承認とは、ニュアンス的にかなり違います。これでは多田さんが「疑問が残る」とか「上手くできない」と書いておられるのも当然でしょう。

とにかく、相手(部下)の言動を温かい関心をもって見守り、「これはいいな」と感じたらその気持ちをそのまま相手に伝える、それも、伝えてどうこうさせようという意図なしに、単に伝えるということにまずは徹していただきたいと思います。それであれば、さほど難しいということもないでしょう。

そしてそれに対して相手がどう反応するか、どんな影響が出るかを引き続き観察してください。あなたの期待どおりかどうかは別として、何らかの変化が感じられるはずです。それがコーチングの成果の第一歩なのです。

 

「真似」ではなく「合わせる」と考える

二点目も、「真似する」という言葉がいささか気になります。これはいわゆるペーシングのことを指しているのだと思いますが、ペーシングは相手の行動や言葉を真似することではなく、そのペースに「合わせる」ことです。

相手がゆったりした雰囲気でゆっくり話しているのであればこちらもゆったりしたペースで、相手が急いでいるようであればこちらもてきぱきと、というように、“波長の合った対応”をすることだと考えてください。それがコミュニケーションの効果をより高めるのです。

しかし、「真似」となると、真似られたほうもあまりいい気持ちではないでしょうから、よいコミュニケーションになるとは思えません。

多田さんは、それほど深い意味ではなくこうした言葉や表現を使われたのかもしれませんが、読み手の私は多田さんの「誤解」「勘違い」ではないかと受け止めてしまいました。もしそうでなかったら失礼な話なのですが、言葉とは、そしてコミュニケーションとは、それほど難しいものだということも改めて心にとどめていただければ幸いです。

 

【POINT】「いいな」と感じたら、率直にその気持ちを「そのまま」相手に伝えることを心がけよう

 

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【Key Word】「ペーシング」

ペーシングとは、コミュニケーションの相手に合わせることによって、警戒心や身構えをといて親密な関係をつくりだすことです。具体的には、話のテーマ、仕草や振る舞い、声の調子や言葉遣い、話すスピード、呼吸のペースなどです。

相手の感情を共有、共感することも大切な要素です。こうしたことを意識して実践する中から、意図的に充分な相互理解と信頼関係、つまりラポールをつくりだすことができます。そういう状態ができれば、こちらの態度や振る舞いに対して相手も自然にペーシングしてくるようになります。

 

 

出典:『リーダーのためのコーチング実践Q&A』(2005年8月/PHP研究所)

 



 

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【著者プロフィール】

星雄一(ほし・ゆういち)

1969年、松下電器産業株式会社(現・パナソニック株式会社)に入社後、(株)PHP研究所に出向。月刊「PHP」編集部、出版部、直販普及本部などを経て、1997年、同社取締役。2008年、専務取締役。2009年、任期満了により退任。営業・編集・出版・子会社設立運営・人材育成と多方面の経験を活かして、PHPゼミナールの企画運営や研修講師育成にあたる一方、経営幹部のマネジメント、リーダーシップ全般の研修も担当。また、「PHPコーチング」プログラムを企画開発し、自らもコーチング講師として講演・講師活動を行なう。現在、(株)PHP研究所客員。


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