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「気づき」を促す上手な質問とは?~コーチングQ&A

「気づき」を促す上手な質問とは?~コーチングQ&A

(2016年9月 8日更新)

 
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私はまだ、管理職ではなく部下がおりませんが、来るべき時に備えて日々コーチングの練習をしようと試みています。

相手の話の聞き方については、うなずきや繰り返しなど、少しずつスキルを身につけてきたと思っています。それ以外で難しいと感じているのは次の2点です。

 

(1)相手に対する気づかせ方、質問の仕方がうまくできず、ついつい議論になってしまったり、自分からアドバイスをして終わってしまうことがよくあります。うまく質問をして、うまく本人に気づかせるためのコツをご教示ください。

 

(2)コーチングのスキルを持たない上司と、意思の疎通がうまく行きません。部下の立場からコーチングのスキルを使ってうまくコミュニケーションをとることは可能なのでしょうか? あるいは、この問題を解決するためには別のスキルが必要なのでしょうか?

(前田二郎・住宅営業〈仮名〉)

 

*   *   *

 

前田さんは、まだ部下を持たない立場ながら、将来に向けてコーチングの実践訓練に取り組んでおられるとのこと、素晴らしいことですね。必ずその効果が表れる時がくるものと信じ、継続していただきたいと思います。

 

コーチング最難関のテーマ

さて、ご質問の(1)ですが、「うまく質問をして、うまく本人に気づかせる」コツは、これこそコーチングの真髄ともいうべきもので、プロのコーチもそのために日々苦労し努力しているテーマです。

いわばコーチングの最も難しい部分ですので、簡単に説明し、簡単に理解実践していただけるというものではありません。何といっても前田さんは「コーチング修行」を始めたばかりなのですから、うまくいかない部分があるのが当然で、だからこそ継続的な実践訓練が必要なのです。

 

反論や否定を質問の形で返す

そこで、現在の前田さんに有効であろうと思えるアドバイスを一つだけさせていただきましょう。それは、前田さんがもっている「答え」を、議論やアドバイスの形で部下・後輩に示す前に、形を変えて質問で返す、ということです。

例えば後輩が何かの提案をもってきたとしましょう。その内容は前田さんの知識経験から見ればきわめて考えの浅いものであり、いくつもの問題点が見えるかもしれません。それを指摘したくなるのをぐっとこらえて、「よく考えたね」とか「なかなか面白い着眼だな」のようにいったん承認した上で、「その提案を実現するとすれば、どんな障害があるだろうね。一度考えてくれないか」といった質問を返すのです。

後輩が提案をもってきたときには、本人はその提案のプラスの部分にばかり目がいっている場合が多いので、今度はマイナスの部分に目を向けるような質問をし、彼自身の考えを深めさせるということです。

相手は必ず自分なりの答えをもっているものですが、それはこちらが期待するレベルにはほど遠いものであったり、十分に深く考えられたものではなかったりする場合が普通です。そこをさらに考えるようにサポートするわけです。

そこで彼が考えて、いくつかの障害を見出し、これではこの提案の実現は無理だと思えば、自らこの提案を取り下げるかもしれません。提案が日の目を見ないという結果は同じであっても、自分で考えて取り下げるのと、上司・先輩から問題点を指摘されて却下されるのとでは、本人のその後の意欲はまったく違ってきます。

このように、提案に限らず、部下・後輩の意見や考えに反論したいことや否定したいことが浮かんだときには、それを質問という形に変えて相手に投げかける、という練習を積まれることをお勧めしたいと思います。

ほかにも、GROWモデルやチャンクアップ、チャンクダウンなど、活用してほしい質問のスキルはいくつもありますが、まずは今申し上げたことを意識して、自分の心の中に「まず質問」というスタンスが常に存在するような状態が出来上がるように習慣化することが大切ではないかと思います。その他のスキルは、その後、徐々に練習し使い込んでいけばいいでしょう。

 

上司に対するコーチングは難度が高い

ご質問の(2)については、コーチングは普遍的なコミュニケーションのスキルですから、上司に対して使うことももちろん可能です。

ただし、上司という存在は、一般的に部下に対して「コーチャブル(コーチングを受け入れやすい状態)」であることは少なく、部下を指導し指示命令するのが自分の役割だと思い込んでいる人が大部分でしょうから、部下・後輩に対するコーチングよりもはるかに難しいことは確かです。

傾聴のスキルは上司に対してこそ使いやすいでしょうが、承認や質問のスキルをうっかり使うと逆効果にもなりかねないでしょう。

 

上司に対するアプローチ、二つの方法

そこで、上司に対してはとりあえず次の二つの方法のいずれかをお勧めしたいと思います。

 

1)上司にコーチングの意義を伝える

第一は、上司と二人で少しゆっくり話す時間がとれたときに(ノミュニケーションの場でもいいでしょう)、研修で学んだコーチングの概略を説明し、これを自分は部下・後輩に対してできるだけ使っていこうと思う、といった話をして、コーチングに対する上司の認識を高めてもらうということです。

上司がコーチングに肯定的な関心をもち、その効果に期待をもってくれるようになれば、それは上司自身の心をコーチャブルな状態に近づけることにつながります。例えば、自分も部下である前田さんの話をもう少し真剣に聴くようにしようかと思う、といったことです。

 

2)コーチングをある程度マスターするまで待つ

こうした上司との会話と環境づくりが難しければ、第二の方法として、前田さんがコーチングの実践訓練を積んで使い方のコツを自分なりにマスターし、自信をもてるようになるまで、残念ながら上司へのコーチングはお預けにしておく、ということしかないのではないかと思います。

コーチングを使えば必ずコミュニケーションは改善し、相手の自主性・可能性は発揮されるということを信じて、使い続け、磨き続けていってください。

 

【POINT】相手に対する反論や否定はそのまま言わずに、「質問」という形で返してみよう

 

 

出典:『リーダーのためのコーチング実践Q&A』(2005年8月/PHP研究所)

 



 

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【著者プロフィール】

星雄一(ほし・ゆういち)

1969年、松下電器産業株式会社(現・パナソニック株式会社)に入社後、(株)PHP研究所に出向。月刊「PHP」編集部、出版部、直販普及本部などを経て、1997年、同社取締役。2008年、専務取締役。2009年、任期満了により退任。営業・編集・出版・子会社設立運営・人材育成と多方面の経験を活かして、PHPゼミナールの企画運営や研修講師育成にあたる一方、経営幹部のマネジメント、リーダーシップ全般の研修も担当。また、「PHPコーチング」プログラムを企画開発し、自らもコーチング講師として講演・講師活動を行なう。現在、(株)PHP研究所客員。


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