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コーチングのつもりが命令になってしまう~コーチングQ&A

コーチングのつもりが命令になってしまう~コーチングQ&A

(2016年11月 2日更新)

 
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コーチングのスキルを早く活用できるようになりたいと思い、職場で実践しております。その中で、以下の3点が難しいと感じていますので、アドバイスをお願いします。

 

(1)座る位置関係 

研修で習った90度型やハの字型だと、対話する相手がそっぽを向いてしまうことがある。やはり正面から向き合うほうが良いかと思うのだが……。

 

(2)話の途中で切り込まないようにする

最初はそのように心がけて対話していても、こちらの話の途中で相手から切り込まれてしまうと、こちらもヒートアップしてしまう。すると、お互いにヒートアップして、今までどおり互いの話が良くわからない結果となってしまう。

 

(3)コーチングのつもりが、いつの間にか命令になってしまう

相手の話をきちんと聴き、それについてアドバイスしているつもりなのだが、相手には上司から指示されたものと受け止められ、「課長から指示された」というような形になっていることがある。相手の能力を引き出そうとしているはずなのにと、ギャップを感じてしまう。

(隅田一郎・サービス業・課長〈仮名〉)

 

 

*   *   *

 

隅田さんのご質問はかなり具体的で、コーチングを学んで使い始めた段階なら無理もないなと思えるものばかりです。以下、順次アドバイスさせていただきましょう。

 

(1)相手と対話する角度(座る位置関係)

このご質問の「そっぽを向く」の解釈に迷います。この言葉は、普通、相手の話を聴く気がないことの意思表示として違う方向を向く、というニュアンスで使われます。ここで書いておられる「相手」が部下であれば、部下が上司の話にそっぽを向くということはちょっと考えにくく、「目をそらす」といったニュアンスではないかと想像するのですが、いかがでしょうか。

一応そうだとして話を進めますが、「目をそらす」のには主に二つの原因があります。

一つは、特に理由はなくとも、上司と見詰め合うことに耐えがたく、つい目線を外してしまうケース。もう一つは、自分の意見・考えに自信がなかったり、申しわけないという気持ちがあったりして、どうしても目線を外してしまうというケースです。

このいずれも、上司の話を聴く意思はもっているのですが、目を合わせ続けることに耐えられないのです。とすれば、どうすればいいか、ご想像がつくのではないでしょうか。

アイコンタクトは質の高いコミュニケーションのための有効な手段ですが、部下にとっては、上司からじっと見詰められていたのではたまったものではありません。といって、視線を外しっぱなしでは関心が薄いととられかねません。そこで、相手の目を中心に、おでこからネクタイの結び目あたりの範囲で、少し視線を上下させるといいでしょう。

相手の目を見るのは全体の時間の30%ぐらいが適当と言われています。座る位置が、正面よりも90度型かハの字型がいいというのは、目を上げたときに正面に上司の目があると緊張が増すからです。相手の話に興味関心を示すのは大切なことですが、部下をビビらせないよう、配慮してあげてください。

 

(2)相手の話の途中で切り込まないようにする

「切り込む」というのは、相手の話をさえぎって口を挟むといったことでしょうか。これは傾聴とまったく相反する姿勢で、コーチングでは厳に慎むべきことです。とはいえ、コーチングを知らない部下が、こちらの話の途中でさえぎって口を挟んでくると、こちらもかっとして反論してしまう、その結果、話の流れが変わってしまう、ということなのでしょう。これはありそうな話ですね。

しかし、コーチングマインドをもって部下と接しようとするなら、この姿勢は極力避けなければなりません。難しいことですが、それがコーチのスタンスです。これは個人の性格的な問題もありますので、こうすればいいと簡単に申し上げることはできませんが、とにかく、部下と話をする前に、「心の姿勢」を整えることです。

具体的には、「部下の話をさえぎらずに全部聴こう」「部下には無限の可能性がある。それをできるだけ引き出してやろう」「答えは部下がもっている。それを見つけるサポートをしよう」「反論ではなく、質問とアドバイスで相手に考えさせよう」というようなことを、自分の心にしっかり言い聞かせてから部下との話に臨むことです。

コーチングの初心者はこうして自分の気持ちを整えておかないと、すぐに「普通の会話」になってしまいます。隅田さんも、まだコーチング修行を始めたばかりですから、こうした事前準備を心がけられることをお勧めします。

 

(3)コーチングのつもりが命令になってしまう

これもコーチング初級者にはありがちなことです。この点については、次の二つの方法をお勧めしたいと思います。

 

◎アドバイスではなく、質問を

例えば、部下が何かの案件で相談に来た場合、その内容を聞いた上で「それはこうしたらどうだ」というようにアドバイスするのがこれまでの上司の姿でした。コーチングでは、そのアドバイスをする前に、こんな質問を投げかけてみましょう。

「君はどうしたらいいと思う?」「どんな方法が考えられるかな?」「どんな状態になればいいと思う?」「その方法でやるには、どんな障害が考えられるかな」「それをやったら、どんなデメリットが出てくるかな」等々。

もちろんこれらには隅田さんなりの答えがあるのですが、それは置いておいて、相手の考えをできるだけ聞きだすようにするのです。そしてあなたの答えと同じかそれに近いものが出てくれば、「それはいいんじゃないかな。やってみてよ」というように結論づければ、相手は「自分の考えを認めてくれた」と感じるでしょう。

 

◎「一つアドバイスしてもいいかな?」と確認する

上記の対応でもどうしても相手から望ましい答えが出てこなければ、いよいよアドバイスすることになりますが、その場合も、このような質問を発して「ええ、お願いします」という返事を得てからにします。こうなると、アドバイスを求めたのは相手であり、あくまでも主人公は相手ですから、「上司にこういわれた」という受身の発想はグンと減るはずです。

アドバイスの仕方そのものにも学習すべきスキルがありますが、現時点ではこの二つに留意するだけでかなり変わってくるのではないかと思います。
 

 

【POINT】相手の話をさえぎる行為は“絶対に”避けよう

 

出典:『リーダーのためのコーチング実践Q&A』(2005年8月/PHP研究所)

 



 

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【著者プロフィール】

星雄一(ほし・ゆういち)

1969年、松下電器産業株式会社(現・パナソニック株式会社)に入社後、(株)PHP研究所に出向。月刊「PHP」編集部、出版部、直販普及本部などを経て、1997年、同社取締役。2008年、専務取締役。2009年、任期満了により退任。営業・編集・出版・子会社設立運営・人材育成と多方面の経験を活かして、PHPゼミナールの企画運営や研修講師育成にあたる一方、経営幹部のマネジメント、リーダーシップ全般の研修も担当。また、「PHPコーチング」プログラムを企画開発し、自らもコーチング講師として講演・講師活動を行なう。現在、(株)PHP研究所客員。


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