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業務命令とコーチングの使い分けが難しい~コーチングQ&A

業務命令とコーチングの使い分けが難しい~コーチングQ&A

(2016年12月 1日更新)

 
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部下との対話の流れの中で、コーチングすべき時と、業務命令を出す場合の使い分けが難しく感じます。

業務目標的な場面では「業務命令」として行い、その目標に対して個人的な目標を設定する場合はコーチング、と使い分けるようにしているのですが、どうしても一方に偏ってしまいます。

また、コーチングと直接、関連があるわけではないのですが、自主目標管理制度における目標設定・達成度判定と、人事上の処遇がなかなか一致しない(本人が納得しがたい)ケースがあるため、モチベーションの維持に苦慮しています。

(潮田一郎・メーカー営業課長〈仮名〉)

 

*   *   *

 

日常の部下との関わりにおいて、コーチングを活用しようと思いながらなかなかうまくいかないという潮田さんの悩みは、よくわかります。特に上記1については、コーチングを学んだ多くの方が現場で同様の問題にぶつかるようです。では、基本的なアドバイスをさせていただきましょう。

 

管理者的役割と育成者的役割

上司には、部下とともに業務を円滑迅速に遂行するという管理者としての役割と、部下の能力や可能性を最大限に引き出すという育成者としての役割があることは言うまでもありません。

そして、前者においては指示命令が、後者においてはコーチングが、より有効である、ということが基本的な原則と言えるでしょう。潮田さんもこのあたりはよくご承知のことでしょうが、その線引きが難しい、ということでしょう。

それも当然で、この両者は截然と分かれているわけではなく、ほとんどの場合は複雑に入り組んでいるものなのです。ですから、指示命令する場面とコーチングをする場面を、予め頭の中で区分けしておくのではなく、「可能な限り、時間の許す限り、コーチングを使う」と考えてはどうでしょうか。

コーチングは、ある程度まとまった時間に、まとまったテーマに関してのみ使わなければならないというものではなく、日常の業務関連のやり取りの中で細かく使っていくことが可能なのです。

 

三分間の積み重ねで何かが変わる

例えば、部下が指示を受けにきた、あるいは相談にきた時、即刻対応しなければならない場合以外は、「それはこうしたらいいよ」「こうしてくれ」という前に、「君はどう思う?」「どういう方法が考えられる?」というような質問を一つ挟むということです。その答えを聞いた上で、「よし、それでやってくれ」とか「それでは問題があるからこうしてくれ」と指示を出すのです。

これなら三分か五分もあればできるでしょう。さらにもう少し時間の余裕があれば、いくつか質問を続けて部下の考えを深めさせることもできます。

現実の仕事の場において、三分も余裕がない、即刻指示しなければならない、などという事態は、実はそう多くはないのではないでしょうか。トラブルや事故など、いちいち部下の考えを聞いていては間に合わないというケースは実際にあるとしても、それ以外は、実は時間の余裕がないのではなく、そういうやり取りをするための上司の心のゆとりがないことがほとんどではないかと思われますが、いかがでしょうか。

大切なことは、できる限り部下の話を聴こう、部下に問いかけて考えを深めさせようと、上司が常に思っていることです。言い換えれば、「常にコーチングマインドをもって部下と接する」ということです。このスタンスがあれば、指示命令とコーチングを使い分ける場面を予め定めておく必要はないと思います。

 

「承認」と「傾聴」について

質問項目の2つめについて一言。自主目標管理制度に部下がもし不満や疑問をもつとしたら、それは評価と処遇がズレるということよりも、上司が正しく評価してくれない、あるいは上司の評価が納得できない、ということによる場合が多いのではないでしょうか。

評価と処遇のズレは確かに人事制度上の問題であり、会社として改善を検討する必要があるでしょう。しかしその前に、公正公平に評価するという評価能力と、それを的確に伝えるというコミュニケーション能力が上司に求められているのです。

これはコーチングと無関係ではありません。特に、温かい関心をもって部下を見守り、その「いい面」をしっかりと見る「承認のスキル」と、部下自身の自己評価や努力のプロセスを真剣に聴く「傾聴のスキル」は重要です。

上司が自分のことを正しく見てくれている、上司は自分の味方だ、と部下が思えれば、制度に関わる不満はかなり軽減されると思います。その欠陥のある制度のもとで、味方である上司自身も評価されているのですから。


【POINT】リーダーには“心のゆとり”が大切

 

出典:『リーダーのためのコーチング実践Q&A』(2005年8月/PHP研究所)

 

コーチング研修ベーシックコース

 

 


 

【著者プロフィール】

星雄一(ほし・ゆういち)

1969年、松下電器産業株式会社(現・パナソニック株式会社)に入社後、(株)PHP研究所に出向。月刊「PHP」編集部、出版部、直販普及本部などを経て、1997年、同社取締役。2008年、専務取締役。2009年、任期満了により退任。営業・編集・出版・子会社設立運営・人材育成と多方面の経験を活かして、PHPゼミナールの企画運営や研修講師育成にあたる一方、経営幹部のマネジメント、リーダーシップ全般の研修も担当。また、「PHPコーチング」プログラムを企画開発し、自らもコーチング講師として講演・講師活動を行なう。現在、(株)PHP研究所客員。


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