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承認として「ほめる」ことが逆効果になる~コーチングQ&A

承認として「ほめる」ことが逆効果になる~コーチングQ&A

(2017年1月20日更新)

 
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「承認のスキル(ほめる)」について、極端な例ですが、店長が全員に対して「ほめる」を励行すると、「何でこの程度のことでほめるんだ」「ほめるのは店長の性格から来ているんだ」「店の業績が悪い時になぜ厳しく詰めないんだ」というような見方を部下からされ、かえって逆効果になるというようなことはないでしょうか。

また、そう思われないために気をつけるべき点を教えてください。

私自身の経験なのですが、いつも叱ってばかりでめったにほめない上司から、たまにほめられた時はとても嬉しく感激したことがあります。

(西田三郎・量販店店長〈仮名〉)

 

*   *   *

 

「承認のスキル」について、興味あるご質問をいただきました。研修の中では十分にご説明できませんでしたが、正確に言うと、「承認」と「ほめる」とは同じことではありません。

 

承認の三つのパターン

承認とは基本的には「その人の存在を肯定的に受け止める」ということであり、「ほめる」はその一部分であると考えていいでしょう。少しばかり理屈っぽくなりますが、「承認」には以下の三つのパターンがあることを、前提として理解しておいてください。

 

(1)存在承認

仕事のプロセスや成果にかかわりなく、その人が同じチームに(自分の部下として)存在していることそのものが素晴らしいことであり、その部下は「無限の可能性」を秘めた存在であると信じていることを折に触れて伝えていくことです。これは「ほめる」とは次元の違う話ですが、これこそが承認の原点です。

 

(2)結果承認

よい成果・結果を心を込めて承認することです。これは一般に言う「ほめる」です。特別に優れた成果でなくとも、期待に沿う成果、以前よりよい成果などに対しては、必ずほめてあげるべきです。これをしないと、相手のモチベーションは間違いなく落ちます。

しかし、「相手のモチベーションを落とさないために」ほめるのではなく、よい結果に対する自分の素直な感謝や感動を示す行為として自然に行なうべきものです。

 

(3)事実承認

結果や成果のいかんにかかわらず、そこに至るプロセスにおいて行なった努力や工夫、あるいは日常の言動や習慣など、「これはいいな」と思えることを率直に伝えることです。これもほとんどの場合「ほめる」ことにあたりますが、これは通常当人自身がほめられることを期待していないので、一段と嬉しく感じモチベーションが高まるものです。

 

よいと感じたら堂々とほめる

ところで、西田さんの文面からは、「部下に嫌われないために部下におもねっている、と見られるのではないか」「部下に甘い上司と思われるのではないか」といった心配をしておられるように感じられます。そのお気持ちはわかりますが、それは「ほめ方」が間違っている場合のことです。

ほめているその対象が事実であり、自分が心から感心したことを素直に伝えているのであれば、決してそんな心配はいりません。「自分がよいと感じたことは必ずほめる」というポリシーを貫くことが大切で、そうすれば他の部下も、店長はよく部下のことを見ているなと感心しこそすれ、とやかく言うことはないでしょう。自信をもって、堂々とほめてあげていただきたいと思います。

 

ほめるだけ、叱るだけは逆効果

ただし、ただほめるばかりで、注意もしない、叱りもしない、ということではちょっと問題です。部下に対しては厳しい要求者であり、間違ったことは厳しく叱責する、教え諭す、という姿勢が一方にないと、「甘い」と思われてもいたし方ないでしょう。

西田さんは、「叱ってばかりいてめったにほめない上司から、たまにほめられると感激した」との思い出を語っておられますが、それはよくわかります。

しかし、逆もあります。普段はほめてばかりだが、ごくまれに何か間違ったことをすると厳しく叱責される、という上司であれば、その叱責が骨身に応えることでしょう。一方だけでは、やはり弱いのです。

それから、西田さんが書いておられるその上司は、きっと西田さんの存在と日頃の努力を認め、時々に声をかけていたのではないかと想像します。めったにほめなかったかもしれませんが、西田さんの存在を肯定的に受け止めた「声かけ」や「ストローク」を実践していたのではないでしょうか。

「叱責」が主体であれ「ほめる」が主体であれ、優れた上司に基本的に共通するのは、部下の存在を肯定的に認め、可能性を信じ、その成長を心から願う、というスタンスではないかと思います。

 

【POINT】「ほめる」と「叱る」は車の両輪

 

出典:『リーダーのためのコーチング実践Q&A』(2005年8月/PHP研究所)

 

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【著者プロフィール】

星雄一(ほし・ゆういち)

1969年、松下電器産業株式会社(現・パナソニック株式会社)に入社後、(株)PHP研究所に出向。月刊「PHP」編集部、出版部、直販普及本部などを経て、1997年、同社取締役。2008年、専務取締役。2009年、任期満了により退任。営業・編集・出版・子会社設立運営・人材育成と多方面の経験を活かして、PHPゼミナールの企画運営や研修講師育成にあたる一方、経営幹部のマネジメント、リーダーシップ全般の研修も担当。また、「PHPコーチング」プログラムを企画開発し、自らもコーチング講師として講演・講師活動を行なう。現在、(株)PHP研究所客員。


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