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質問と答えに間があると、焦って答えを示唆してしまう~コーチングQ&A

質問と答えに間があると、焦って答えを示唆してしまう~コーチングQ&A

(2017年2月20日更新)

 
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相手の答えを引き出そうと質問をするのですが、どうしても誘導的な質問になってしまいます。

こちらの質問と相手の答えとの間に「間」があくと、焦ってしまい、こちらから答えを示唆するような形になってしまいます。たかが質問と高を括っていたのですが、思った以上に難しいと実感しております。また、コーチングの基本として、「ペーシング」が重要であると習いましたが、「ペーシング」を行おうとしてもなかなかうまくいきません。うまく行うコツは何なのでしょうか?

(太田一郎・チェーンストア店長〈仮名〉)

 

*   *   *

 

太田さんは、コーチングを現場で実践されて、いくつかの壁にぶつかっておられるようですね。コーチング初心者は誰でもこういう時期があるもので、そこであきらめてしまうか、がんばって乗り越えるかで、その後の部下とのコミュニケーションや部下の成長度合いが大きく変わってきます。

 

ペーシングとは

さて、ご質問の「ペーシング」は、話し方のペースをはじめ、表情、態度、身振り、話題などを相手のペースに合わせることです。確かにコーチングの重要スキルの一つですが、誤解を恐れずに言えば、初心者の間はここまで気を配る必要はないのではないかと思います。それよりも、相手の話に積極的な関心をもち、真剣に、丁寧に、相手の気持ちまですべて聴き取る、という姿勢で臨むことが大切で、それさえ心がければ、最低限必要なペーシングは自然にとれるものです。

逆に、コーチングの初心者がペーシングに注意を払おうとすると、何となくぎこちなくなってかえって相手が話しにくくなったり、相手の話の本質や相手の気持ちを聴き取ることがおろそかになったり、ということになりかねません。今の太田さんはこのようなレベルではないでしょうか。

コーチングの様々なスキルを使おうと意識することは大切ですが、最初からうまくできるほど簡単なものではないのです。「ちゃんと聴く・全部聴く」という最もベーシックな部分が自然にできるようになってから、さらにステップアップするためにペーシングを心がける、という流れで十分だと思います。

 

質問の前に心の準備を

次は質問のスキルに関するご質問ですが、これはプロのコーチでも苦労するところで、常に磨き続ける努力を必要とする、非常に難しいスキルです。「たかが質問」どころではないのです。

太田さんがあげている「誘導的になる」「相手の答えがなかなか出てこないと焦ってこちらから答えを出してしまう」という二つのケースもよくある例で、基本的には実践経験を積んでコーチングの質問に慣れていくしかないのですが、そのためにも、質問をする前に自分の心をきちんとセットする習慣をつけることが大切です。

例えば、「コーチングの主役は相手。相手を誘導してはいけない。答えは相手自身がもっている。それを探し出してもらおう」と自分によく言い聞かせておく。また、「答えが出なければ、じっくり待とう。沈黙に耐えよう」と自分に言い聞かせる。そういう心の準備をしておくことです。

 

上司として、意見・考えははっきりと伝える

それでも、どうも自分の考えと違う、修正させたい、気づかせたい、という思いに駆られることは当然あるでしょう。そういう時には、あえてコーチングの質問にこだわることなく、「君の意見はこういうことだね。僕は少し違う考えをもっているんだが、聞いてくれるかな」といった断りを入れてから、自身の意見・考えをはっきり言うことです。妙に誘導的な質問をするより、そのほうが相手もさっぱりするし、効果もあるでしょう。

また、もし相手から答えがなかなか出てこなくて、沈黙に耐えられなくなりそうになったら、「しばらく考えて、まとまったらまたきてくれないか」といったん席に戻す手もあります。相手も緊張から解放されて、違う角度から考え直すことができるかもしれません。

ともあれ、太田さんはコーチである前に上司なのですから、常にコーチングだけを使わなければならないなどということはまったくありません。上司として必要な指示やアドバイス、要求などをはっきりすべきです。

ただし、どの部下も無限の可能性をもっている、自分の「答え」をもっている、という信念だけは崩さないでいただきたいと思います。そうすれば、スキルが多少ギクシャクしても、必ず部下の反応は違ってきますし、太田さんのコーチングスキルも着実に磨かれていきます。がんばってください。

 

【POINT】

相手の話を「聴く」というコーチングの基本をマスターしてから個々のスキルに注意を払おう

 

 

出典:『リーダーのためのコーチング実践Q&A』(2005年8月/PHP研究所)

 

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【著者プロフィール】

星雄一(ほし・ゆういち)

1969年、松下電器産業株式会社(現・パナソニック株式会社)に入社後、(株)PHP研究所に出向。月刊「PHP」編集部、出版部、直販普及本部などを経て、1997年、同社取締役。2008年、専務取締役。2009年、任期満了により退任。営業・編集・出版・子会社設立運営・人材育成と多方面の経験を活かして、PHPゼミナールの企画運営や研修講師育成にあたる一方、経営幹部のマネジメント、リーダーシップ全般の研修も担当。また、「PHPコーチング」プログラムを企画開発し、自らもコーチング講師として講演・講師活動を行なう。現在、(株)PHP研究所客員。


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