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上司はすべての能力で部下より優れている必要はない~コーチングQ&A

上司はすべての能力で部下より優れている必要はない~コーチングQ&A

(2017年5月15日更新)

 
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部下が年長であったり担当部署での業務経験が長い場合には、技術面の知識が豊富で、上司よりも優れた能力をもつことがあります。

そうしたケースでの、部下へのコーチングを解説します。

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・コーチングを進める中で、聴くスキルを優先しブロッキングをなくしていくことが必要だと頭ではわかっているのですが、実践するのは難しいと感じております。

部下の意見と自分の意見に相違があった場合、どこで折り合いをつけるかを優先して考えてしまい、コーチングがうまくできていないように感じます。今後、経験を積めばうまくいくようになるのか不安です。

・部下が先輩の場合や、年下であっても担当業務の経験が長い場合、業務や技術面の知識が自分より高くコーチングにおける要素を見いだすことが難しく適切なコーチングができているのか不安になります。また、部下からの信頼が得られているのか不安になります。

・現状(処遇等)に満足しているのか向上心があまり感じられない部下に対して、目標や動機づけをしてモチベーションを向上させていくにはどのように接していったらよいのでしょうか。特に年上の部下の場合、考えてしまいます。(有田一郎・電力会社営業所次長〈仮名〉)

 

*   *   *

 

有田さんは、現場でコーチングを進める上で「うまくいかないこと」として三点あげておられますので、順にフィードバックさせていただきます。

 

部下との意見の相違があった場合

まずは「部下が違う意見をもっている事実」を受け入れることが大切です。しかし、これは部下の意見を丸ごと認めるということではありません。部下と自分とでは、経験・知識・性格などまったく異なるのですから、「意見が違うのが当たり前」「違う意見にこそ価値がある」というぐらいの感覚で受け止めるほうがいいでしょう。

その前提のもとに、違う意見を否定せず、評価せず、まずはそのままじっくりと聞く、これが「受け入れる」ということです。

そして、意見の内容を理解するだけでなく、そういう意見を述べる背景、理由、気持ちなどを積極的に傾聴してください。それをせずして、「違い」にばかり関心を向け、否定しようとする心理がブロッキングにつながります。

意見の違いは、上司にとっては部下の意見の「不備・不十分・見当違い」として見えることが多いので否定・批判したくなるのですが、「部下の意見にも必ず何か検討に値する価値が含まれているはず」と考え、その「違い」について質問や提案という形で相手の考えを確認し、あるいは深めさせることが大切です。

もし実際に不備があるのであれば、質問によって部下自身にそのことを気づかせ、部下自ら考えた結果として自ら訂正を加えるという状況を作り出すことがポイントです。

また、よく聴いてみると部下の意見のほうに理があるという場合には、素直に認め、採用する度量が必要でしょう。ただし、判断し決定するのは上司の役割であり、その結果責任も上司にあることはしっかり自覚しておく必要があります。

 

部下のほうが上司より業務および技術面で知識が豊富な場合

こういう時こそコーチングの真価が発揮される場面です。コーチングは「教える」のではなく相手の中にある「答え」を引き出すコミュニケーションスキルですから、自分よりもいい答えをどんどん引き出せばいいわけです。

なお、上司が知識・技術・経験などすべての面で部下より優れていなければ部下の信頼を得ることはできない、などというのはまったくの誤解です。自分より優れた面を存分に発揮できるようにしてあげるのが上司の役割です。

経験・知識が豊富な君がいてくれて本当にありがたい、そのことは僕はよく知らないから教えてくれ、というスタンスは、部下に上司への親密感を抱かせこそすれ、軽んじられることは決してありません。

ただし、それには二つの条件があります。一つは、先に述べた「責任はこちらにある」というスタンスがしっかりしていること、もう一つは、仕事の遂行、職場の改善に対する熱意だけは誰にも負けないこと、です。

強い信頼感は、そうしたフランクさと仕事への情熱から生まれるものです。その上に、願わくは、部下の誰もが逆立ちしてもかなわないと思わせるような仕事面での強みを何か一つ以上もっていると、「理想の上司」にぐっと近づくでしょう。

 

「向上心が感じられない部下」、特に「年上の部下」への対応

これは難しい問題ですが、一番肝要なのは「コミュニケーション」の量を増やすことです。

コミュニケーションの量と質に比例して、部下のエネルギーは高まっていきます。一般的に「できる部下・やる気のある部下」とは、自然にコミュニケーションの量が増え、その内容も充実していくものです。ここで挙げられているのは、この逆のケースですから、まずはコミュニケーションの量を増やさなければなりません。そして徐々にその質(中身)も高めていく必要があります。それは上司である有田さんの役割です。

毎日一度は必ず「承認」の声をかけるとか、「質問」を発するとか、とにかく有田さんのほうからコミュニケーションを増やす努力をしてください。そして、この仕事や職場に対する有田さんの夢、ビジョンを折に触れて語ってあげてください。職場をもっとよくしていこうという上司の熱意が、彼の心に火をつけることは十分ありえます。

なお、年上の部下には、上記のほかに、「敬意・配慮・相談」がキーワードになります。とかく自分の存在価値を見失いがちな人々ですから、あなたの存在はこの部署にとってぜひとも必要なのだということを、有田さんが態度で、言葉で、示していくことが大切だと思います。

ぜひ自分から積極的な働きかけをされることをお勧めいたします。

 

【POINT】上司はすべての面(能力)で部下より優れている必要はないと心得よう

 

 

出典:『リーダーのためのコーチング実践Q&A』(2005年8月/PHP研究所)

 

コーチング研修ベーシックコース

 

 


 

【著者プロフィール】

星雄一(ほし・ゆういち)

1969年、松下電器産業株式会社(現・パナソニック株式会社)に入社後、(株)PHP研究所に出向。月刊「PHP」編集部、出版部、直販普及本部などを経て、1997年、同社取締役。2008年、専務取締役。2009年、任期満了により退任。営業・編集・出版・子会社設立運営・人材育成と多方面の経験を活かして、PHPゼミナールの企画運営や研修講師育成にあたる一方、経営幹部のマネジメント、リーダーシップ全般の研修も担当。また、「PHPコーチング」プログラムを企画開発し、自らもコーチング講師として講演・講師活動を行なう。現在、(株)PHP研究所客員。


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