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自己意識や権利主張が強い若手社員~コーチングQ&A

自己意識や権利主張が強い若手社員~コーチングQ&A

(2017年6月 2日更新)

 
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自己意識や権利主張が強い若手社員に対するコーチングのポイントを学びます。

 

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ここ数年間に入社した若手社員に特に強く感じるのですが、自分の考え方はしっかりともっている反面、自己意識や権利主張が強いという共通の傾向があるように思います。彼らに対してコーチングをしようと思っても、そういう雰囲気にもっていき難い時や、極端にいえば話し合いそのものを拒否するような時もあります。

例えば、上司の経験からみて、彼1人では無理な業務内容であったとしても、『あくまでも自分で処理をしたい』とか『上司の指導を受ける前に独力で何とかしたい』とか言って、協力を拒否します。欧米化した環境で育って来たことなどが影響しているのかもしれませんが、うまい対応法がみつかりません。何か良いアドバイスがあればありがたいです。(原田二郎・食品流通企業・課長〈仮名〉)

 

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なるほど、原田さんのおっしゃるような考え方の傾向をもった若手が増えてきているかもしれませんね。それなりに自信もあり、独立心が旺盛なわけですから、それはよい点としてまずは認めてあげてほしいと思います。

 

発想を切り替えて任せてみる

問題は、そのよい点がよいプロセスを経てよい結果につながるかどうか、というところです。上司先輩の大きな役割は、このプロセス(方法、手順など)を指導助言することにあるわけですが、その指導助言を受けたがらないというところに原田さんの困惑やいらだちがあるのでしょう。

そこで、ちょっと乱暴なようですが、思い切って任せてみるということを基本スタンスにしてはどうでしょうか。

通常、プロセスがよければよい結果につながり、悪ければ悪い結果が生まれるものですが、必ずしもそうならない場合もあります。プロセスが結果に結びつく前に予測しがたい特殊な条件が加わることがあり、そのためによいプロセスだったのに結果は失敗であったり、プロセスはおかしかったのに結果オーライだったり、ということがありうるのです。

先輩が蓄積してきたノウハウは、こうした特殊な条件がなければ必ず成功につながる方法であり、予測し難い条件が加わってもその影響を最小限に抑えうる方法でもあるといえるでしょう。だからこそ、後輩はそれを学ぶ必要があるのです。しかし、それでもなお、そのプロセスが100%成功につながるとは断言できないのが実情ではないでしょうか。

 つまり、どんなに先輩上司が懇切に教え、後輩がそのとおりにしたとしても、世の中の動きはきわめて速くかつ複雑であるため、思いがけない状況変化によって失敗することがありうるということです。逆に、このやり方では必ず失敗すると先輩は思っていても、同様の理由で思いがけない成功につながる場合もありうるのです。要は確率の問題です。

ですから、「上司先輩がもっているノウハウや知恵のほうが成功する確率が高いということにすぎない」と割り切ってしまえば、後輩若手のやり方でも成功するかもしれない、と考えることができるでしょう。

 

変革の芽を見守り育てる勇気をもつ

そうは言っても、100%失敗する、あるいは80~90%失敗する、と見えているのに任せることなどできない、と思われるでしょう。当然だと思います。以上に述べたことは基本的な考え方ということであって、結果に責任をもたなければならない上司としては、若手に何でもやりたいようにやらせればいいと申し上げているわけではありません。

ここでちょっと考えていただきたいのですが、「100%失敗する、あるいは80~90%失敗する」と感ずるとすれば、これはあなたが、彼の能力はこれだけであり、その彼がこういう方法でやるから失敗する確率が高い、と見ているということです。

しかし、彼にはあなたが知らない能力があるかもしれないし(実際にあるはずです)、あなたが考えもしない方法でやろうとするかもしれません。そこのところを無視して、危ないからとこちらのやり方を教え指示していては、失敗は確かに少ないかもしれませんが、もしかしたら生まれてくるかもしれない新しいやり方、つまり変革の芽を最初から摘んでしまうことになりかねません。それはまた、彼のやる気を削ぐことにもつながるでしょう。

 

質問をすることで双方の信頼感を高める

ではどうすればいいのか。ここがコーチングの出番なのですが、彼にやり方を教えたりこうしろと指示したりするのではなく、「君に任せようと思うが、責任は僕にあるのだから、どういう方法でやろうと思っているのか教えてくれないか」と、彼の考えを聴くのです。

もし何も考えていないのであれば、「じゃ僕の言う方法でやってみてくれるか」という提案の形でやり方を教えれば素直に受け入れてくれるでしょう。

もし彼が自分で考えている方法を述べれば、それをきちんと全部聴いてください。その上で、それではだめだ、と思える部分があれば、「それはだめだからこうしろ」と指示する前に、「そのやり方だとこういう問題が起こりそうだが、その点はどう考えている?」とか、「そのやり方でやった場合に、ほかにどういう影響が出るか考えてみてくれないか」といった質問を投げかけ、彼の考え方を確認します。あなたが感じる危険性について指摘するのではなく、質問という形で解決策を考えさせるのです。

おそらく、自分の方法に自信をもっている彼としては、そこまで考えていないでしょう。そこに別の角度から質問が入ってくることによって、自分の考えを見直し、より深く考えるはずです。そして自分なりに新たな答えを考え出してくれば、彼とあなたの双方がこれならやれそうだと思える答えを彼自身が見つけだすまでさらに質問を投げかけるのです。

彼自身が答えを見つけられなくなって、「こういう場合にはどうすればいいでしょうか」とたずねてきた時点で、はじめてあなたのもつ答え(方法)をアドバイスすれば、彼はすんなりと受け入れるでしょう。

 

自主性とやる気の相関関係

一般に誰でも、指示された方法でやるよりも自分で考えた方法でやるほうが意欲がわくし、生き生きと動くものです。特にここで挙げられている若者のようなタイプは、上司から指示されるのがいやなのです。そういう人は、上司が強く指示すればするほど、反抗的にもなりかねません。ですから、あくまで相手の考えを尊重し、その自主性に任せるというスタンスで臨むことが大切ではないかと思います。

まったくもってまどろこしい話ですね。忙しい中でそんなことやってられるか、と感じられるかもしれませんが、実はこういうタイプの人はなかなか優れた資質をもっている場合が多いのです。彼のやる気を高め可能性を引き出すことが、長期的に見れば、本人にも、職場にも、ひいては会社にも、大きなプラスになるはずだと信じて、根気よく取り組んでいただければと思います。

 

【POINT】自主性を尊重することで部下の「やる気」を促そう

 

出典:『リーダーのためのコーチング実践Q&A』(2005年8月/PHP研究所)

 

コーチング研修ベーシックコース

 

 


 

【著者プロフィール】

星雄一(ほし・ゆういち)

1969年、松下電器産業株式会社(現・パナソニック株式会社)に入社後、(株)PHP研究所に出向。月刊「PHP」編集部、出版部、直販普及本部などを経て、1997年、同社取締役。2008年、専務取締役。2009年、任期満了により退任。営業・編集・出版・子会社設立運営・人材育成と多方面の経験を活かして、PHPゼミナールの企画運営や研修講師育成にあたる一方、経営幹部のマネジメント、リーダーシップ全般の研修も担当。また、「PHPコーチング」プログラムを企画開発し、自らもコーチング講師として講演・講師活動を行なう。現在、(株)PHP研究所客員。


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