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意識しすぎて疲れてしまった~コーチングQ&A

意識しすぎて疲れてしまった~コーチングQ&A

(2015年12月27日更新)

 
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現場でコーチングを実践しても、気がついてみると「ティーチング」であったり、自分の主義・主張であったりします。セミナーでコーチングを学んでも、いざ使い始めてみると、「なかなか上手くいかないなあ」と悩んでしまいます。

たとえば、一般職の社員から課長まで、コーチングしているのですが、一気にやりすぎたせいなのか、皆少し疲れてしまっているようです。待つことが必要だとはわかっていても、どうしても結果を急ぎ求めてしまいます。

また、課長にはメンバーのコーチングをやってもらいたいのですが、「上手くコーチングさせる」ポイントは何かを教えてください。

(安田三郎・メーカー営業所長〈仮名〉)

 

*   *   *

 

コーチングを実践しても、現実にはなかなかうまくいかない、ということですが、これはコーチングを学んで使い始めた方が多かれ少なかれぶつかる壁のようなもので、無理もないことと思います。具体的な現場の状況や、社員の皆さんの「疲れ気味」というニュアンスがよくわかりませんので一般論的になりますが、若干アドバイスさせていただきましょう。

 

コーチング導入時のポイント

まず、コーチングスキルを現場で活用する場合、

(1)全員に宣言してから取り組む方法

(2)そうは言わずに突然活発にフル活用する方法

(3)こっそりと、ひそやかに使い始める方法

の三つに分けると、安田さんの場合はどれでしょうか。文面から察するに(2)のケースに近いのではないでしょうか。もしそうだとすると、部下の皆さんが少々戸惑うことは確実です。上司のコミュニケーションスタイルがなぜか急に変わる(人によっては激変する)わけですから。

実は、コーチングスキルを有効に使いこなすのは意外に難しいものであり、相当の実践経験が必要なのです。安田さんにしても、率直に申し上げてまだ“コーチング修行中の身”であり、しかもその修行は始まったばかりなのです。

そういう状態で全員に一気にコーチングスキルを使うということは、その意欲の素晴らしさとは裏腹に、「コーチングのようであってコーチングではない」ようなコミュニケーションが頻繁に行なわれている可能性があります。安田さんの意に反して、従来のティーチングスタイルが顔を出すこともあるでしょう。もしそうだとすると、最初は上司の変化に好感をもっていた部下も、対応に戸惑い、「疲れ」が出てくるのもうなずけます。

もし実践に移る前のご質問であれば、私は先の方法のうち(1)か(3)を勧めます。どちらをとるかはその人の個性と職場の状況によります。

(1)のメリットは、全員がコーチングに関心を持ち、上司とともにコーチング風土の構築に努めていこうという機運が醸成されやすいことです。「所長、それはコーチングじゃありませんよ」といった厳しくも和やかな会話が出てくることが期待されます。

(3)のメリットは、使う範囲が限られていますから、自分で確認しチェックしながら改善修正していきやすいことです。

しかし、現実にはもう実践が始まっているのですから、こんなことを今申し上げても意味がありません。そこでこれからどうするか。

 

コーチングマインドを共有化する

結論から申し上げると、私は、ここで「仕切り直し」をされることをお勧めしたいと思います。

スタートが前記(1)(2)(3)のいずれであったとしても、自分が今取り組んでいるのがコーチングというコミュニケーションスキルであることを改めて(あるいは初めて)全員に説明します。そして、コーチングとは何であり、何のためにそれを自分が使おうとしているのかを説明します。スキルは未熟だからうまくいかないことがあるかもしれないが、全員の能力と可能性をできるだけ引き出したい、全員が自主的に生き生きと活動できる職場にしたい、という安田さんの「思い」を熱く伝えるのです。

要するに、「コーチングマインドの共有化」ということです。部下の皆さんの「疲れ」は、突き詰めて言えば、安田さんが目指すもの、望む姿が見えていないことから生まれてくるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

そして近い将来、コーチングスキルの勉強会をやろうというような機運が起こってくれば、最高だと思います。というのも、コーチングを学んだ人が職場で一人だけという状況ですと、コーチングをうまく、正しく使っているかどうかが客観的にチェックされることがなく、自己流・変則的なコーチングになっていく危険性があります。お互いにチェックし合い切磋磨できる“コーチング・フェロー”がいることが望ましいと言えます。

 

短期間では効果は出ない

ご質問の二番目も、以上に書いたことと関連します。コーチングを行なうにはまず学習が必要ですが、それが「させられる」学習であっては効果は期待薄です。安田さんのコーチングに対する意欲と、先に述べたような「思い」の表明と、日々の実践の姿から、課長さんにもコーチングへの興味関心をもってもらい、自ら学習しようと思ってもらうことが、迂遠なようでも近道です。

上長の権限をもってしても、決して部下に「コーチングさせる」ことはできません。コーチングを使って最高の職場にしようという思いを共有する「同志」になってもらうことが先決であり、次いで自主性をもったコーチング・フェローになってもらうことを目指すべきだと思います。

コーチングの実践には、忍耐を要する部分があることは事実です。風土や意識が短期間にがらっと変わるなどということは期待すべきではありません。しかし、コーチングを使い続ければ、というよりコーチングマインドを保ち続ければ、必ずその効果は現れます。そのことを信じて、今後もスキルアップと実践に努めていただきたいと思います。

 

【POINT】

短期間で意識や風土が変わるとは考えない。コーチングマインドを保ち続けることが肝要

 

 

出典:『リーダーのためのコーチング実践Q&A』(2005年8月/PHP研究所)

 


 

【著者プロフィール】

星雄一(ほし・ゆういち)

1969年、松下電器産業株式会社(現・パナソニック株式会社)に入社後、(株)PHP研究所に出向。月刊「PHP」編集部、出版部、直販普及本部などを経て、1997年、同社取締役。2008年、専務取締役。2009年、任期満了により退任。

営業・編集・出版・子会社設立運営・人材育成と多方面の経験を活かして、PHPゼミナールの企画運営や研修講師育成にあたる一方、経営幹部のマネジメント、リーダーシップ全般の研修も担当。また、「PHPコーチング」プログラムを企画開発し、自らもコーチング講師として講演・講師活動を行なう。

現在、(株)PHP研究所客員。

 


 

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