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アドラー心理学に学ぶ「年上部下」との接し方

アドラー心理学に学ぶ「年上部下」との接し方

(2016年8月12日更新)

 
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年上部下との接し方に悩む管理職が急増しています。アドラー心理学に、良好な関係を構築するための心得を学びます。

 

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年上の部下 接し方を間違えると……

社会のグローバル化とともに、年功序列という従来の日本型人事制度から実力本位の人事制度へと、多くの日本企業が舵を切っています。その状況を見ると、今後、年上の部下を引き受けるケースは増えることはあっても減ることはないと、容易に想像できます。チームのメンバーは、力を合わせて目標に向かっていく存在ですから、そうした年上部下ともよい人間関係を築くことが不可欠です。

彼らとの接し方を間違えてしまうと、

「仕事を依頼しても返事だけで手をつけない」

「注意しても聞き流す」

「反抗的な態度をとる」

「若手に勝手に指示を出す」

「裏で若手に上司の悪口を言う」

などなど、上司として、とても組織をまとめられない状況に追い込まれることもあります。実際に、年上の部下をもったことが原因でメンタル不全を起こし休職した友人を、何人も目にしています。そんな事態になれば、人事の責任問題に発展する可能性もあります。

 

 

年上部下に接するための自己変革アクションプラン

では、年上の部下にはどのように接すればよいのでしょうか?

アドラー心理学をベースに、あなた自身が自己変革を図る3つのアクションプランを提案したいと思います。ぜひ、読みながら実際にやってみてください。

 

[1]言葉や行動のリフレーミング

リフレーミングとは、ある枠組み(フレーム)で捉えられている物事を、枠組みを外して、違う枠組みで見ることです。

まず、「上司だから偉い」「上司だから部下から尊重されるべき」「上司だから部下は必ず指示を聞くべき」などの、「上司だから」という発想はかなぐり捨ててください。そして、彼らの立場に立って、彼らの気持ちを理解するのがスタート地点だと思いましょう。

年下の上司のもとで働くことを、屈辱的に感じる人は多いものです。まず、あなたが彼らの立場に立ったとしたらどのような感情を抱くか、深く考えてみてください。そのうえで、言ってほしくない言葉やとってほしくない行動を、例を参考にして具体的に書いてみましょう。次に、その右側に、同じく例を参考にして、言ってほしい言葉、とってほしい行動にリフレーミングして書き換えます。

 

年上部下の問題

どのような言葉・行動が並んだでしょうか。指導の際には、左側の言葉や行動は封印し、右側の言葉や行動を心がけ実践していきましょう。

 

[2]命令口調から依頼口調へ

部下に行動を促す言い方は、「命令口調」と「依頼口調」に分けることができます。

命令口調は、相手に選択の余地を与えない言い方で、上の立場の人が下の立場の人に指示・命令する印象が残ります。言われた側は、自分の立場・状況を考慮されていないと感じると不快感が残ります。

これに対して、依頼口調は、部下に選択の余地を与える言い方で、対等な関係から発せられたメッセージの印象が残ります。言われた側は、自分の立場・状況を考慮されたと感じ、都合の悪いときは率直にその旨を表明できます。

相手を尊重していない命令口調で言われると、部下が非主張的な人だと、感情的には反発してもNOが言いにくく、仕方なく命令に従うことになります。部下が攻撃的な人だと、上から見下げられたようで、怒りの感情を誘発して反撃してくることがあります。

以下に、命令口調の3タイプと依頼口調の2タイプを紹介します。

 

【命令口調の3タイプ】

・かたい:「~しなさい」「~しろ」「~やめなさい」「~するな」

・やわらかい:「~してください」「~しないでください」

・皮肉っぽい:「どうして~するんだ」「いつになったら~するんだ」

 

【依頼口調の2タイプ】

・疑問系:

「~していただけませんか?」「~しないでいただけませんか?」

「~してもらえる?」「~してくれる?」「~してくれない?」

「~してもらえない?」「~しないでくれる?」

・仮定形:

「もし~してもらえると助かるんだけど」

「~してもらえませんか? そうするとうれしいな」

 

上の例を参考にして、命令口調と決別し、依頼口調を実践しましょう。依頼口調は私も多用していますが、年上の部下には仮定形の依頼口調が適していると思います。命令口調の言葉はすべて依頼口調に言い換えることができますので、できるかぎり依頼口調で話し、相手に「あなたを尊重していますよ」というメッセージが伝わるようにしましょう。

 

[3]ポジティブな目的を意識する

人間の行動には必ず “わけ”があります。“わけ”には、「原因」と「目的」の2つの側面があります。多くの心理学では、「原因」を中心に探究していきますが、人の行動について考えるとき、変えられない過去にさかのぼって原因を探し出すことで、問題を解決できるでしょうか。

アドラー心理学では、その行動の背後にある「目的」の存在に着目します。受け入れがたい行動に出会ったときには、その行動の背後にある「ポジティブな目的」を考えてみましょう。

次のような行動について、その背後にあるポジティブな目的にはどんなことが考えられるでしょうか。例を参考に、書き出してみてください。

 

例)「自分がキツくなったり、責任が重くなりそうになると激しく抵抗する年上の部下」の行動の背後にあるポジティブな目的は?

→「会社よりプライベートを優先したい」「現在の仕事をミスなく完璧にこなしたい」

 

1)「自分は会社に必要とされている、自分はできると過大評価してはばからない年上の部下」の行動の背後にあるポジティブな目的は?

 

2)「プライドが高く、軽く扱われることがいつまでたっても受け入れられない、過去の栄光にすがる年上の部下」の行動の背後にあるポジティブな目的は?

 

3)「言われたことだけを真面目にやり、自分の存在感を消すことしか考えていない年上の部下」の行動の背後にあるポジティブな目的は?

 

4)「上司や部下とコミュニケーションをとるのが苦手で、人を注意するのもされるのも好きではない年上の部下」の行動の背後にあるポジティブな目的は?

 

どんなポジティブな目的を見つけることができたでしょうか?

例の「仕事がキツくなったり責任が重くなりそうだと抵抗する」という行動は、ラクをしたいだけの責任のがれの行動のように捉えがちですが、ポジティブな側面に注目して考えることで、当事者としての意思が込められた目的の存在に気がつくことができます。

ちょっと受け入れがたく思える不適切な行動でも、ふだん意識しないその背後にある目的に意識を向けることによって、またときには「WHY(なぜ)」ではなく「FOR WHAT(何のために)」と問いながら、究極的な目的にさかのぼって考えてみると、今まで見えていなかったものが見えてきて、問題解決の希望が湧いてきます。

 

以上、年上部下に対応する3つのアクションプランを提案しましたが、「年上部下をどう変えるか」という視点ではなく、「年上部下のために自分はどうあるべきか」という視点で考え、実践していくことが大切です。

 

最後に、自己変革なくして組織変革はありません。今このときから実践しましょう。

 

 

*「アドラー心理学に学ぶ『勇気づけ』の職場づくり」一覧はこちら

 

リーダーのための心理学入門コース

 


 

【著者プロフィール】

宮本秀明(みやもと・ひであき)

1982年、スタンフォード大学中退。広告業界から数社の研修会社を経て、現在㈲ヒューマン・ギルド法人事業部長兼シニアインストラクター。ロジカルシンキング、ファシリテーションからマナー教育まで、幅広いコミュニケーションの研修を担当。米国と日本双方のビジネス経験を生かし、それぞれのよさを融合させた、和魂洋才型の研修プログラムを独自に開発。受講生の目線に立った習得しやすいカリキュラムの構成力、やる気を促す講師手法には定評がある。著書に、『マンガでよくわかるアドラー流子育て』(岩井俊憲監修、かんき出版)、PHP通信ゼミナール『リーダーのための心理学 入門コース』(監修:岩井俊憲、執筆:岩井俊憲・宮本秀明・永藤かおる、PHP研究所)などがある。


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