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パソコンが苦手。若手にこっそり頼んでいる年上部下に、どう対応する?

2017年2月21日更新

パソコンが苦手。若手にこっそり頼んでいる年上部下に、どう対応する?

知識や経験が豊富で頼りになるが、定年間近でパソコンが苦手。無断で若手に頼んでいる年上部下に、管理職としてどう対応すべきでしょうか。アドラー心理学の見地からアドバイスします。

のっけから個人的な話になりますが、筆者が社会人になった平成元年(1989年)、勤務先は大手電機メーカーでしたが、デスクに一人一台のパソコンはありませんでした。あったのは課に一台の経理システム用PC。そしてぼちぼち女子社員の机に「ワープロ」(OASYSとかRupoとか書院とか…)がドンと置かれ始めたころ。そう、それで上司の手書きの文書を美しく打ち直す作業を粛々と行なっていたのでした。そのころの私の上司は、今65歳になるかならないかくらいでしょうか。このくらいの年齢であれば、まだまだ現役という方もたくさんいらっしゃることでしょう。では、当時のことを思い出しつつも、2017年の問題としてアドラー心理学的な見地から見ていきましょう。

パソコンが使えない年上部下にイライラ

【質問】
地方自治体で福祉・介護関係の課長職をしています。2年後に定年を迎える年上部下の男性職員に困っています。確かに現場経験もありますし、クレーム対応や突発的な対処が求められる際は生き字引のようでとても頼りになります。しかしいまだにパソコンで文書を作成することや情報を共有することに対して苦手意識があるようで、「紙に出してくれ」「時間かかってしょうがないんだよ」「なんか情報が漏れたりしたらどうするんだ」とさんざん言い訳をした挙句、私には黙って課の若手にやってもらったりしているようです。簡単なデータを入力する程度ならできるのですが、報告書などに関しては、若手職員も、「教えてもどうせ覚えないし、同じことを何度もきかれるから、簡単なものならやってあげちゃったほうが早い」と、甘やかしています。悪い人ではないのですが、まるで宿題を自分でやらない小学生のようで、イライラします。(43歳 公務員 課長)

パソコンのスキルが必須になったのは、業界・業種にもよりますが、もう20年近く前のはず。それでもいまだに、研修先などで「アナログおじさん・おばさん」の存在を耳にすることがあります。ただ、その方々は、文書作成やデータ解析がメインの仕事なわけではありません。そのような仕事だとしたら、嫌でも操作を覚えざるをえないでしょう。しかし現場に出てフィールドワークをメインにする仕事や、福祉・介護などの仕事で人と深く接することに最も重要性を置くような仕事では、パソコンに向かう、というのは確かに副次的・付帯的な仕事であり、苦手な人にとっては苦痛そのものかもしれませんね。
なんでももうすぐ小学校の教科に「プログラミング」が入るそうですが、「は? こんな簡単なプログラミングもできないんですか? 小学校で習う知識でしょう?」と言われる時代がきたら、私も泣きたくなります。

さて、この課長さんは、年上部下の方(Aさんとします)がパソコンで文書をつくらないこと、若手職員にやってもらっていることに対してイライラし、腹を立てています。その一方で、Aさんの功績もよく理解しています。だからこそ、悩んでいるんですね。

ベテランの知識や技術を引き継ぐことが優先事項

まず、この課長さんのイライラ・怒りの根底にある考えは何か。それはきっと、「社会人ならパソコンくらい使えて当たり前。できないなんてありえない」「自分の書類を若手にやらせるなんて信じられない怠慢だ!」といったものでしょう。お怒りはごもっともですが、すべての社会人がパソコンを使えなければならないのでしょうか。
では、Aさんの強みはなんでしょうか。課長はわかっていらっしゃいますね。蓄積された豊富な現場経験であり、どんなイレギュラーな場面でも何とかしてしまえる対人調整力です。このAさんの強み、「パソコンができること」と同列で比較ができるものでしょうか? 比べものにならないほど重要かつ貴重なものではないでしょうか。
定年を2年後に控えたAさんにやってもらわなければならないことは、初心者向けパソコン教室に通ってもらうことではありません。彼のもっている大切な知識や技術を、可能なかぎり残された職員に引き継いでもらうことです。それが手書きかデータ化された文書かは重要な問題ではありません。些細な問題です。手書きでもいいから知識がぎっしり詰まった引き継ぎノートを作成してほしいとは思えませんか。

アドラー心理学的な見地から

私たちは、自分のそれまでの経験や背景などをもとに物事を判断し、行動に移します。これを一人ひとりの「認知」と言います。何か不都合なことが起きたり、物事がうまくいかなかったりしたときに、自分の「認知」が極端になっていたり、一般的な考え方と大きくずれていたり、何かに固執したものになっていないかを客観的に見ることによって、解決につながることは多々あります。
例えばこの課長さんが考えている「いまどきの社会人はパソコンができて当たり前」というのも一理ありますし、これから入ってくる新入社員が「パソコンですか? できませんしやる気もありません」というのは許されないことかもしれません。でも、まったく同じことをAさんにも適用するのが最適かどうか。
少し認知を変えたり拡げたりすることで、課長さんご本人のイライラは解消していくのではないでしょうか。

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永藤かおる(ながとう・かおる)
(有)ヒューマン・ギルド研修部長。心理カウンセラー。1989年、三菱電機(株)入社。その後ビジネス誌編集、海外での日本語教育機関、Web 制作会社など、20年以上のビジネス経験のなかで、人事・採用・教育・労務管理等に携わる。どの現場においてもコミュニケーション能力向上およびメンタルヘルスケアの重要性を痛感し、勤務と並行して学んだアドラー心理学を生かして現在㈲ヒューマン・ギルドにてカウンセリング業務および企業研修を担当。著書に『「うつ」な気持ちをときほぐす 勇気づけの口ぐせ』(明日香出版社)、PHP通信ゼミナール『リーダーのための心理学 入門コース』(監修:岩井俊憲、執筆:岩井俊憲・宮本秀明・永藤かおる、PHP研究所)などがある。

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