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今、なぜ若手社員研修を実施する企業が増えているのか

今、なぜ若手社員研修を実施する企業が増えているのか

(2017年2月 1日更新)

 
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ここ数年、若手社員研修を実施する企業が増えています。その理由を、毎年、数多くの研修で講師を務め、現場で若手社員からの相談に応えてきた阿部紀子氏が解説します。

 

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入社1~3年目の若手社員研修が増えている

企業で実施される研修のなかでも、ここ3年で開催回数の増加が顕著にみられるのが、入社2~3年目社員向けの研修です。私が担当している若手社員向けの公開セミナーも、企業から派遣されてくる参加者が増え続けています。

今、なぜ、多くの企業で若手社員の教育研修に力を入れているのでしょうか。その理由は次の3点に集約されるのではないかと考えています。

 

(1)早期離職を防ぎたい

(2)育て方がわからない

(3)即戦力への期待

 

企業の人材開発担当者と話をしていると、直面する課題として「若手社員(職員)の定着率の低さ」をあげる方が多くいらっしゃいます。これは、各種調査からも明らかです。たとえば「平成25年新卒者の入社3年以内の離職率」(厚生労働省)では、3年以内の離職率がきわめて高いことがはっきりとわかります。

 

3年目までの離職率

採用と教育に多大な費用をかけたのに、やっと一人前になる頃に退職される――これは企業にとって大きな損失です。こうした損失を防ぐため、教育研修はもちろん、精神面のケアにも力を入れる企業が増えています。特に、入社3年といいますが、1年目の離職率が最も高いため、1年以内の手立ては欠かせません。

 

研修をすると若手社員は辞めなくなる?

若手社員に研修を実施すると、知識やスキルが身につき、将来にも役立つため、多くの若手社員が喜びます。しかし、本人たちに研修をすれば早期退職は減るのか――これは難しい問題です。

 

「初めて勤務した会社を辞めた理由」(調査対象15~34歳(複数回答)平成25年・厚生労働省)の調査では、次のような結果がでています。

 

1.労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった 22.2%

2.人間関係がよくなかった 19.6%

3.仕事が自分に合わない 18.8%

 

以下、賃金の条件がよくなかった、会社に将来性がない、と続きます。

 

この結果からわかることは、今の若者は長時間労働をよしとしないということ。そして、職場の人間関係が大きな問題になっているということです。労働時間や人間関係は、若手社員を教育すれば解決するという問題ではないのです。

 

退職を迷っていた2年目社員の事例

私がかかわった、2年目社員Aさんの事例をご紹介しましょう。

4月入社時には意気揚々として優秀だった新入社員Aさん(大卒・男性)。2年目直前研修で再びお会いしたときには、すっかり元気をなくしていました。事情を聞いてみると「上司にたびたび厳しく叱責され、一度もほめられたことがない」とのことです。自信を失い、精神的にも厳しい状態で、辞職するかどうか迷っていました。研修中の態度や同期の仲間とのコミュニケーションから察して、Aさんに人間的な問題があるとは思えません。

そこで私は、この事実を人事担当者に伝えました。その後、その会社ではAさんを異動させ、本人は元気を取り戻したと聞いています。今でもAさんは異動先で問題なく勤務しています。

人事部がAさんを異動させた理由は、(1)直属上司が厳しすぎる人物だと人事も承知している、(2)Aさんの精神状態は限界である、ということです。また、Aさんは優秀だがやや精神的に弱いところがあるということでした。

一見、若手社員に甘すぎる対応のように思われるかもしれませんが、今の時代、今の若者の傾向を考えると、この対応は適切であったと私は考えています。

 

Aさんのようなケースは増えています。小規模な会社では、異動させるところがなくて辞めてしまうこともあります。そのような場合は、直接指導に携わる担当者だけでも換えたり、席替えをしたりといった対策が考えられます。

若手社員の我慢が足りないのか、上司に問題があるのか、若手社員を不定期に異動させると上司の方が傷つくのではないか、人事担当者がフォローすればよいのか、いっそのこと中途採用にしたらよいのか……。人間関係にかかわることでは、一つの決まった解というものがありません。それだけに対応が難しいところですが、人材開発担当者としては、一律に若手社員本人の問題として解決を図るのではなく、上司や職場の問題も把握して対応する必要があります。場合によっては、上司となる管理監督者の教育研修が問題解決につながることもあるのです。

 

若手社員の育て方がわからない

若手社員の育成が難しくなったのには、次のような要因があげられます。

 

・職場の人間関係が希薄になった。

・上司と若手社員の価値観や感覚が違い過ぎて理解できない。

・企業の環境が大きく変わり、昔うまくいった方法が通用しない。

・上司がパワハラと言われることを恐れて十分な指導ができない。

 

先にも述べましたが、人材開発担当者は、自社の状況を見極めつつ、対策を打つ必要があります。

 

・管理監督者に、若手社員の特徴を理解した育て方を今一度学んでもらう

・労働環境の見直しを行なう

・若手社員に対する定期面談やアンケートを実施する

・1年目の後半、3年目、5年目等の区切りで、研修やミーティングを設ける

 

こうした対策のすべてが必要ということではなく、自社に必要なものを取り入れていくと効果は出るはずです。

 

終身雇用が崩壊している現代、完全に離職を防ぐということは難しいことです。しかし、自社の状況に合致した対策を施し、定期的な教育研修に取り組んでいる企業では、離職が少ないというのも事実です。

いずれにせよ若手社員の育成については、各企業とも、従来のやり方を見直し、今の若手に有効な教育研修を真剣に考えるべき時期にきているというのは間違いありません。

 

若手社員研修

 


 

阿部紀子(あべ・のりこ)

社員研修のハートリンク 代表。人材開発コンサルタント。 

銀行、コンサルタント会社にて、営業企画、秘書業務、雑誌・書籍編集等を経験し独立。企業や各種団体の新入社員から管理者までの従業員研修や企業内マニュアル作成に携わる。指導実績企業は全国で約350社。1件1件カスタマイズして課題解決をしながら研修をするのが特徴。


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