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コミュニケーション不足で職場になじまない中堅男性をどうする?

2017年3月 6日更新

コミュニケーション不足で職場になじまない中堅男性をどうする?

ランチを一人で食べている。飲み会でみんなの会話に入らず一人黙々と飲み食いしている。仕事中みんなの雑談の輪に入らない。仕事はできるが、自分の仕事だけに集中して、他のメンバーと協働しようとしない。部署をまたいだ案件が増えている現状で、コミュニケーション不足によるミスも出始め、他のメンバーから不満の声が聞こえてきた。

今回は、職場になじめない人がいるという問題です。このまま放置すれば業務効率が落ち、チームが機能しなくなるのではないかと、チームリーダーは心配しています。どうしたらチームがまとまり、メンバー一人ひとりが気持ちよく協働できるのでしょう。アドラー心理学の観点からひも解いてみましょう。

コミュニケーション不足の社員を変えたい

【質問】ITソフトウェアメーカーでチームリーダーになって3年目です。私のチームは20代の女性2名と男性2名、そしてチームの輪に入らない31歳の男性の5人です。以前は他部署や他社と協働することが少なかったのですが、昨年同業他社をM&Aで取得し、SIサービス事業部やコンサルティング事業部、他社との協働が増加し、コミュニケーション能力が求められるようになりました。そんな中、1人で黙々と仕事をする31歳の彼のコミュニケーション不足が原因と思われるミスが目立ってきました。他のメンバーから「何を考えているのかわからない」「話さないのでどこまで仕事が進んでいるのかわからない」というクレームを聞くことも多くなってきました。このままではチームがバラバラになるのは、火を見るより明らかです。どうすれば彼を変えられるのでしょうか?(35歳 ITウェアメーカー チームリーダー)

日本の高齢化や人口減及び世界経済の動向から、今後、企業のグローバル化や業界再編成の動きは加速することはあれ、後退することはないと思われます。それにともないビジネスマンの働くスタイルは、自社完結型から他部署や他社との協働型に変化してきました。日本人の美徳とされてきた「背中を見て学べ」「沈黙は金」「男は黙って......」という言葉は、過去の遺物と言っても過言ではありません。ビジネスの遂行能力もそうですが、よほどの専門職以外はコミュニケーション能力が求められる時代です。企業や行政機関において、コミュニケーション研修のニーズは高止まりしています。
それではここで上記のご相談について考えてみましょう。ご相談者のチームの1人で黙々と仕事をする31歳の彼(以降Aさん)は、チームの中で浮いた存在であるばかりか、仕事においてはメンバーに迷惑をかけており、このままではチームがバラバラになる可能性もあります。
チームリーダーであるご相談者は、Aさんに変わってほしいと思っているようですが、アドラー心理学の考え方は、「相手を変えることはできない、自分は変わることができる」というものです。それを踏まえ、Aさんには「目的論」、他メンバーには「認知論」を用いたアドラー流自己変革をしてもらうようアプローチすることをおすすめします。

アドラー心理学では、行動の「目的」に着目する

人間の行動には必ず"わけ"があります。そして、"わけ"には「原因」と「目的」の2つの側面があります。多くの心理学では「原因」を中心に探究していきますが、変えられない過去にさかのぼって原因を探し出すことで、問題行動を解決することができるでしょうか?
アドラー心理学では、その行動の背後にあるポジティブな「目的」の存在に着目します。例えば、「ランチを1人で食べている」人には、「自分のペースでご飯を食べることができ、余った時間で昼寝をしたり好きな音楽を聴いてリラックスしたりしたい」という目的があるのかもしれません。一見、周囲になじめず孤立しているように見えても、その人は目的があって自らその行動を選択しているということもあるのです。
同じように、Aさんが1人で黙々と仕事をし、他の人とコミュニケーションをとらないことにも目的があるはずです。Aさんが「メンバーとコミュニケーションをとらない」目的が「はずかしい思いをしたくない」ということだとしたら、「コミュニケーションをとってもはずかしい思いをしない」ためにはどうするかを考えればよいのです。ですから、現状を変えていくにはAさんの目的を把握することが大切です。
まずは、リーダーであるあなたがAさんからしっかりと話を聴き、あなたはAさんに対してどんな貢献ができるかを2人で話してみてはいかがでしょうか。その際、あなたの話したい欲求を抑えて、とにかく聴くことに徹することが肝要です。その結果、例えばAさんが話し方教室に通うことを選択し、その費用を会社が支払う交渉をするというのが、あなたのAさんに対する貢献という着地点が生まれてくることも考えられます。

メンバー全員と「認知論」の基づいた話し合いの場をもつ

人は誰でも一人ひとり違ったオーダーメイドのメガネのような、自分特有のものの見方をもっています。そして、そのメガネを通して体験や出来事を解釈し、判断したり行動したりします。大抵の人は、自分のメガネをまともだと思っていますが、他者から見るとまともとは思えないこともあります。
Aさんの目的を探ると同時に、チームのメンバーたちがAさんの行動に対してどういう捉え方をしているかを知ることも必要でしょう。Aさんを見るメンバーのメガネ(認知)に、もしかしたら歪みが見つかるかもしれません。
例えば、Aさんの「メンバーとコミュニケーションをとらない」行動に対して、メンバーは、以下のような歪んだものの見方(BASIC MISTAKES)をしているかもしれません。

決め付け:「私たちと会話したくないに決まっている」
誇張:「どんなときでも私たちと会話しない」
過度の一般化:「私たちと会話せずに仕事が上手く進むわけがない」
見落とし:企画書、報告書はきちんと書けているのに、そこを見ていない
誤った価値観:「私たちと会話しなければ、仕事が失敗しても仕方がない」

メンバー全員と、Aさんについてそれぞれがどう捉えているかをよく話し合ってみましょう。あまりにかけ離れたものの見方をするメガネがあれば、注意が必要です。「周囲とかけ離れたメガネかな?」と思ったら、そのものの見方に確かな証拠はあるのかを、確認・検討してみましょう。

ものの見方に違いがあっても認め合えるチームを

Aさんの行動の「目的」、メンバーのものの見方「認知」が把握できたら、Aさんを含めたメンバー全員で話し合いましょう。
私たちは主観的な世界に生きています。私たちが話している内容の多くは、それぞれのメガネを通した主観的意見や推測に過ぎません。しかし、性格も考え方もさまざまなメンバーで構成されたチームで仕事をしていくためには、お互いを認め合い、尊重する姿勢が欠かせません。
チームにそうした姿勢を育むためには、次の2点を心がけることが必要です。

(1)相手のものの見方(メガネ)に関心もつ
メンバーそれぞれのものの見方を話し(聴き)合いましょう。この際、無理に見方を一致させる必要はありません。また、○×で評価するものでもありません。お互いのものの見方に違いを認めることが大切なのです。

(2)事実ではなく、意見として伝えるように心がける
「一般的には~」「世間では~」「~だ」「~に決まっている」といったような、まるで事実であるかのように伝えるのではなく、「私見ですが~」「これは私の意見に過ぎませんが~」というような前置きをしたり、「~と思います」「~と感じます」のように意見として伝えると、お互いのものの見方を認め合いやすくなります。

チームをまとめるために手をこまねいていては状況が悪くなるばかりです。勇気をもって行動を起こしましょう。

「アドラー心理学に学ぶ『勇気づけ』の職場づくり」一覧

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【著者プロフィール】

宮本秀明(みやもと・ひであき)
1982年、スタンフォード大学中退。広告業界から数社の研修会社を経て、現在㈲ヒューマン・ギルド法人事業部長兼シニアインストラクター。ロジカルシンキング、ファシリテーションからマナー教育まで、幅広いコミュニケーションの研修を担当。米国と日本双方のビジネス経験を生かし、それぞれのよさを融合させた、和魂洋才型の研修プログラムを独自に開発。受講生の目線に立った習得しやすいカリキュラムの構成力、やる気を促す講師手法には定評がある。著書に、『マンガでよくわかるアドラー流子育て』(岩井俊憲監修、かんき出版)、PHP通信ゼミナール『リーダーのための心理学 入門コース』(監修:岩井俊憲、執筆:岩井俊憲・宮本秀明・永藤かおる、PHP研究所)などがある。

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