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イノベーションリーダーの条件(1)~白紙に戻して考える

イノベーションリーダーの条件(1)~白紙に戻して考える

(2015年3月 2日更新)

 
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変化に対応しながら変貌を遂げていく企業だけが生き残れる現代において、イノベーションを創造するリーダーの存在は不可欠といえるでしょう。松下幸之助のエピソードをひもときながら、イノベーションリーダーの条件を考える、PHP研究所研修事業部長・的場正晃のコラム、3回連載の第1回です。

 

*  *  *

 

1990年代後半以降のグローバルな規模での産業構造の変化が、各企業に不断の変革を迫っています。変化の荒波を乗り越え事業を継続させるためには、環境変化に対応してイノベーションを起こせる人材、すなわちイノベーションリーダーを育成し、各現場に配置することが極めて重要な課題となってきました。

 

そこで、これから3回にわたって、松下幸之助のエピソードをひもときながら、イノベーションリーダーの条件を考えてみたいと思います。

 


 

エピソード「設計からやり直してみ」

 

昭和36年、カーラジオを製造していた松下通信工業(現・パナソニックモバイルコミュニケーションズ)に、納入先のトヨタ自動車から20%の値下げの要望が来た。その対応を幹部が協議している時に、幸之助が通信工業を訪れた。

「今日は何の会議や」

「はい、実はトヨタさんから大幅な値引き交渉があって、その対応策を協議しているのです」

そこで幸之助はこう言った。

「常識的に考えたら、この話は断わるのが筋かもしれん。しかし、うちがトヨタさんの立場に立ったら、やはり同じ要求をするやろう。トヨタさんは、どうしたら日本の自動車産業を維持できるか苦しんではるのや。それを考えると、まず“できない”という考えを捨てることや。そして、一から新しい方法を生み出してみてはどうか。5%下げるより20%下げるほうが容易な場合が多い。それは発想が変わるからだ。性能を落とさず、かつ思い切ってラジオの設計そのものをやり直してみてはどうか。部分的な改良ではそれだけの値下げはできん」

その後一年あまりして20%の値下げに応ずることができ、しかも適正な利益が生まれるようなカーラジオが誕生した。抜本的な設計変更と、生産ラインの見直しによって、技術者たちの努力が実ったのである。

 

(『エピソードで読む松下幸之助』(PHP研究所)より)

 


 

この事例から学べることは何でしょうか? 私たちが仕事をする上で、過去の経験や知識を参照することは大切ですが、それに固執し過ぎると自由な発想が妨げられてしまうことが往々にしてあります。特に現代のような変化の激しい環境下では、陳腐化してしまった過去の成功体験や常識を意図的に捨て去って(=学習棄却;unlearning)、ゼロベースで発想する必要性が高まっているのです。

 

「万物流転」という考え方のとおり、世の中は常に変化しています。だからこそ、素直な心で目の前の事象を捉え、過去の経験や知識にとらわれない、自由な発想で対応策を考えることが大切でしょう。そんな地道な努力を愚直に積み重ねることが、イノベーションリーダーへの第一歩になるのです。

 

 

 
 
神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程にてミッション経営の研究を行ない、MBAを取得。現在は(株)PHP研究所経営理念研究本部研修事業部部長。
 
 
 
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