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学習棄却

学習棄却

(2011年7月29日更新)

 
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人や組織は何らかの出来事に直面した時、過去に自らが経験・学習し、獲得した知識を参照して対処しようとします。特に、大きな成果を上げた輝かしい経験ほど「成功体験」として後々の判断・行動に大きな影響を及ぼし続けるといわれています。

 

しかし、昨今のような想定外の出来事に対しては適切な処方箋が見つかっていないにも関らず、過去の成功体験にこだわり過ぎると間違った判断を下す恐れがあります。

 

いったん蓄積した知識は、当座は判断の拠り所として「資産」価値をもちますが、時間の経過とともに鮮度が落ち、やがて時代遅れとなって正しい判断を阻害する「負債」に変化していきます。負債に変容した知識はイノベーションの足を引っ張りますので、一刻も早く償却する必要があります。古くなった知識を捨て去ることを経営学では「学習棄却」(Unlearning)と言います。

 

Hedberg [注1] によると、学習棄却とは「時代遅れとなったり、妥当性を欠くようになった知識を捨て去り、それをより妥当性の高い新たなものへと置き換えていくこと」をいいます。もし学習棄却ができずに古い知識に固執するような状態が生じてしまうと、環境の変化に適切に対処することができにくくなります。従って、変化の激しい環境に柔軟に対応していくためには、学習棄却を行うことができる能力が求められるのです。

 

松下幸之助は、「日に新た」ということばで創造と棄却を伴う革新の重要性をことあるごとに述べていました。

 

 

この社会はあらゆる面で絶えず変化し、うつり変わっていく。だから、その中で発展していくには、企業も社会の変化に適応し、むしろ一歩先んじていかなくてはならない。それには、昨日よりは今日、今日よりは明日へと、常によりよきものを生み出していくことである、昨日は是とされていたことが、今日そのままで通用するかどうかはわからない。情勢の変化によって、それはもう好ましくないということが往々にしてあるわけである。(中略)この“日に新た”ということがあってこそ、正しい経営理念もほんとうに永遠の生命をもって生きてくるのである。

 

“日に新た”な革新は決して簡単なことではありません。しかし、想定外の事態に見舞われて、これまでの常識が通じない今こそ、賞味期限の切れた古い知識を捨て去るチャンスでもあります。だからこそ、慌しい日常生活の中でも、目の前の状況をしっかり直視し、自分と向き合いながら、何を新たに取り込み、何を捨て去るか、心静かに内省する時間をもつことがすべてのビジネスパーソンに大切であると思われます。

 

一人ひとりの“日に新た”な革新こそが、組織の活性化・日本の復興には必要なのです。


[注1]

Hedberg,B.L.T.(1981) How organizations learn and unlearn.Nystorm,P.C.&Starbuck,W.H.(eds.)

 Handbook of organizational dasign.Oxford University Press.pp.3-27 

 


 

的場正晃 まとばまさあき

 

神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程にてミッション経営の研究を行ない、MBAを取得。

現在は㈱PHP研究所 教育出版局 研修企画部部長。

経済産業大臣認定 中小企業診断士     

      

 


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