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教えない教育が人を育てる

教えない教育が人を育てる

(2012年1月13日更新)

 
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「企業が求める人材像」に類する調査結果がいくつかの教育団体や調査機関から発表されていますが、最近の傾向として「主体性をもった人材」の重要性が増しているということが言えます。

 

これは裏を返せば、主体性をもった人材が企業の現場で少なくなったことを意味しているのであり、このことと最近の日本企業の低迷とは決して無縁ではないように思われます。産業界のみならず、あらゆる分野で、変革が求められている今、自ら考え行動できる主体的な人材の輩出は喫緊の課題とも言えるでしょう。

 

では、どうすれば主体性をもった人材を育てることができるのでしょうか。そのヒントを、伝統芸能や伝統工芸などの世界で伝承されてきた徒弟制度による能力開発・人づくりのあり方に垣間見ることができます。例えば、宮大工の世界では、親方と弟子は仕事以外の時間も含めて常に行動を共にしますが、肝心な技能伝承に関しては親方はまったく教えてくれません。仕方なく、弟子は親方のやり方を観察し、まねをして試行錯誤を繰り返し、工夫しながら業の極意を体得していくのです。こうした徒弟制度の根底には、「教えないことが人を育てるもっともいい方法である」という考え方があります。結局、教えすぎると、教えられたとおりにしか行動できない人材をつくってしまうことになるのでしょう。

 

この考え方を現代企業の現場で応用しやすくアレンジしたのが、米国の認知学者BrownとCollinsが提唱する「認知的徒弟制」という概念です。この概念に則って、現場でのOJTのあり方を考えると、以下の4つのステップを踏むことになります。

 

ステップ1「モデリング」

上司が仕事のやり方を見せ、部下はそれを見て学ぶ

ステップ2「コーチング」

部下が仕事をしている間、上司は観察と助言を行う

ステップ3「スキャフォルディング」

部下にできることは自力でやらせ、できないところだけ上司が支援する

ステップ4「フェーディング」

だんだんと支援を少なくして、部下の自立を促す

 

教えない教育が人を育てるといっても、状況に合わせた指導法が重要であることは言うまでもありません。相手の成長度合が上がるにつれて、徐々に教える教育から教えない教育へと転換を図る必要があり、それを体系化したのが認知的徒弟制モデルなのです。

 

この春、新人を迎える上司・先輩・指導員の方には、この考え方をぜひ、理解・実践していただきたいものです。

 

参考図書:中原淳(2010)『職場学習論』東京大学出版会

 


  

的場正晃 まとばまさあき

 

神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程にてミッション経営の研究を行ない、MBAを取得。

現在は㈱PHP研究所 経営理念研究本部 教育研修部 主幹講師。

経済産業大臣認定 中小企業診断士         


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