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「伝える」と「伝わる」

「伝える」と「伝わる」

(2012年3月 1日更新)

 
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数あるビジネススキルの中でも、効果的に伝える能力はたいへん重要です。組織として大切にしたい価値観をメンバーに伝えていく、上司としての期待を部下に伝えていく、あるいは商品やサービスに込められた思いを顧客に伝えていく、等々。これらは、仕事の成果を高める上で、あるいは人を育てる上で必須の行為であり、これなくして事業目的を達成することなどできないでしょう。

 

ただし、ここで大切なことは「伝える」という概念を理解すると同時に、類似した表現である「伝わる」との意味の違いを正しく認識することです。そもそも「伝える」とは発信側の「行為」であり、「伝わる」とは受信側の「状態」を指します。このように、両者は次元の異なる概念であるにもかかわらず、しばしば混同されて「伝えたから伝わったはず」という誤解を招きがちです。例えば、部下を集めて部門方針を説明したから、伝わったと思い込んでいたら、実際はほとんど伝わっていなかったという事例などは日常茶飯事とも言えるでしょう。ことほど左様に、伝わる状態をつくることは難しいことなのです。

 

では、どうすれば「伝わる伝え方」ができるのでしょうか? 結論から申し上げると、「わかりやすさ」と「しつこさ」がカギを握るのです。ある経営者A氏は、伝える際にわかりやすい表現を使うよう心がけていると言います。例えば5S[1]の重要性を理解させるために、「整理とは、探しものの所在が5秒以内にわかる状態をつくること」「整頓とは、不要なものを3日以内に捨てること」といったように、誰が聞いてもその状態が具体的にイメージできるような表現で伝えているそうです。さらに、常に対話を通じて、伝えたことが相手に伝わったかどうかを確認し続けているそうです。また別の経営者B氏は、お客さま大事の重要性を従業員に毎日伝え続けましたが、一人ひとりの心に伝わるまで10年を要したそうです。この体験を通じてB氏は「大切なことほど、何度も何度も伝え続けなければ伝わらないことに気づいた」と述べています。

 

2つの事例からわかるように、「伝わる状態」をつくるためには、伝える上での創意工夫としつこさ、そしてそれらのベースに、伝える側の熱意・根気がなければならないのです。

 

それぞれの組織において、責任者は自身の思いや、組織で共有すべき価値観をわかりやすく、そしてしつこくメンバーに伝え続ける必要があるでしょう。これらが共有できたとき、これまでの組織が、やる気と主体性に満ちた「人が育つ強い組織」へと進化を始めるのではないでしょうか。

 



 

[1]「整理」「整頓」「清潔」「清掃」「しつけ」のローマ字表記の頭文字をとって名づけた

 


 

的場正晃 まとばまさあき

 

神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程にてミッション経営の研究を行ない、MBAを取得。

現在は㈱PHP研究所 経営理念研究本部 教育研修部 主幹講師。

経済産業大臣認定 中小企業診断士           


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