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事上練磨(じじょうれんま)

事上練磨(じじょうれんま)

(2012年4月13日更新)

 
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成熟化社会における人々の価値観の多様化や、組織と個人の関係の変化などを背景に、一人ひとりが自分のキャリアについてじっくり考えることが重要になってきました。

 

実際、私どもに依頼のある研修の中で、「キャリアデザイン」をテーマにした研修の比率が高まりつつあります。筆者もそうした研修の講師として企業に招かれることが多いのですが、その時に感じることが受講者の「焦り」です。

昨今の20代~30代前半のビジネスパーソンの多くは、自分が所属する企業の先行きに疑問を感じたり、ちまたにあふれる間違ったキャリアに対する情報に翻弄されて、「何か手に職をつけなければこの厳しい時代を生き残れない」という焦燥感に駆られているように見受けられます。資格取得のための対策講座や社会人大学院で学ぶビジネスパーソンの数が年々増えているそうですが、その背景には前述のような状況があるように思われます。

 

仕事をしながら学ぶということは、それなりの覚悟と犠牲が伴うものであり、それ自体は素晴らしいことです。しかし、気になるのは、自己啓発に対する熱意と同じくらいの熱意を仕事の中で持てていない方が散見され、その数が少しずつ増加しているように感じる点です。「自分のやりたいことはこんな仕事ではなかった」とか、「今担当している仕事は自分の成長に結びつかない」といった考え方をする人が多いということです。

 

しかし、本当に日々の仕事は自分の成長に結びつかないのでしょうか。ある経営者は、自身のキャリアを振り返って「目の前に与えられた仕事、一見すると雑用のような仕事でも常に全力投球してきた。その積み重ねが今の自分をつくってきた」と述べています。成功者と呼ばれる人の多くが同様の発言をしていますが、そう考えると世の中には無意味な仕事というものは存在しないのではないでしょうか。要するに受け止め方の問題であって、目の前の仕事に心を込めれば「雑用」に見える仕事が自分の成長を促す「砥石(といし)」になりうるのです。

 

中国古典の中に、「事上練磨」ということばがあります。日々の仕事を通して人間は磨かれるという意味のことばですが、ここから、現代のキャリア開発論を読み解くと以下のようになるでしょうか。

 

最も自分を成長させるものは日々の仕事であり、そこに心を込めていくことが最優先されるべきである。その上でなお余力があれば、自己啓発をしていけば理想的であるが、あくまでも順序としては、仕事が一番である――。キャリアデザイン研修の締めくくりにこうしたメッセージを受講生に贈っていますが、概ね納得感を持って受け入れられています。

 

先の見えにくい時代だからこそ、日々の仕事で成長することの意味を、現場で上司や先輩が体験談を交えて若手に伝えていただきたい。研修を担当するたびにそのように感じる昨今です。 

 


 

的場正晃 まとばまさあき

 

神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程にてミッション経営の研究を行ない、MBAを取得。

現在は㈱PHP研究所 経営理念研究本部 教育研修部 主幹講師。

経済産業大臣認定 中小企業診断士           


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