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「仕事の意味」が人を育てる

「仕事の意味」が人を育てる

(2012年5月15日更新)

 
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先日、大手食品メーカーの元・営業本部長であったT氏から興味深いお話しをお聞きしました。T氏は、販売不振が続いていた会社の再建を託されて営業本部のトップに就きましたが、就任してまず感じたことが、営業担当者たちに元気がないということでした。 

 

毎日、夜遅くまで残業をし、心身の不調を訴えて倒れる社員が少なからずいましたが、彼らが取り組んでいた業務の大半が、本社への報告書の作成など内向きの仕事だったそうです。

 

そこでT氏は、営業担当者を内向きの仕事から開放し、その代わりに顧客回りを徹底するよう指示を出しました。顧客と会うことが本来業務である営業担当者は、嬉々として仕事をするようになり、それ以降同社の業績が回復基調に転じたのです。

 

その一方で営業担当者の業務量は相変わらず多く、残業時間は以前とほとんど変らなかったのですが、彼らの健康状態は非常に良好で、倒れていた人まで復帰して元気に仕事をするようになりました。いったい何が人びとを変えたのでしょうか。

 

結局、取り組んでいる仕事が、内向きの仕事から外向きの仕事に変わり、一人ひとりがそこに「仕事の意味」を見出すことができるようになったのです。

 

この体験を経たT氏は「人が元気になるかどうかは、労働時間の長短よりも、むしろ仕事の意味を見出せるかどうかにかかっている」という自論をもつに至り、それまで以上に仕事の意味を感じさせるマネジメントを意識するようになったと言います。

 

経営学の動機付け理論に従えば、社会が成熟するにつれて、人びとを動機付ける要因は、お金や地位といった「目に見える要因」から、やりがい・働きがいといった「目に見えない要因」へと変化するとされています。従って、日本のような成熟化社会において人のやる気を高めるためのカギは、担当する仕事の意味を正しく理解させることができるかどうかにかかっているのです。

 

松下幸之助は、「『あんたの仕事の結果はこういうふうに世間に役立っているのですよ。だから、非常に尊い仕事なんですよ』と、言ってあげる。そういうことが言えないと、人を指導することはできませんね」と述べ、仕事の意味を伝えることが指導者の最重要責務であることを説いています。

 

短期的な成果が重視され、「何のための仕事なのか」といった本質的な問いかけが軽視されがちな今こそ、指導者が仕事の意味を自分なりに解釈し、それを自分のことばで若い人たちに伝えることが求められています。そのことが、人の心に火をつけ、活力ある職場をつくる第一歩になるのではないでしょうか。 

 


 

的場正晃 まとばまさあき

 

神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程にてミッション経営の研究を行ない、MBAを取得。

現在は㈱PHP研究所 経営理念研究本部 教育研修部 主幹講師。

経済産業大臣認定 中小企業診断士            

  


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