課長職にマネジメントの革新を!
RSS

愛される

愛される

(2012年6月29日更新)

 
  • はてなブックマーク
  • Yahoo!ブックマーク
  • Check

松下幸之助は、ビジネスパーソンにとって最も大切なことは何かと問われると、必ず「多くの人に愛されること」と答えました。この考え方は、長年の人生経験・事業経験から導き出された知恵であり、信念でもありましたが、それを表す最適なエピソードがあります。

 

幸之助晩年のある日、関係会社の幹部と共に、大阪市内のあるホテルのレストランで食事をする機会がありました。料理長が腕を振るって作った料理にも拘わらず、幸之助は半分食べたところで早々に食事を終わらせ、料理長を自分の席まで呼び寄せました。そばにいた人たちは、きっと食事が口に合わなかったので、そのクレームを言うのだろうとひやひやしたそうですが、予想に反して、幸之助の口から出たことばは以下のようなものでした。

 

「せっかくおいしい料理を出していただいたのに、半分も残して申し訳ない。おいしくないから残したのではなく、私は老人だからたくさん食べられないんだ。一生懸命作っていただいたあなたにそれだけ理解してほしいので、来てもらったんだ」と。

 

このエピソードは、ハーバード大学のコッター教授の著書(『幸之助論』ダイヤモンド社)でも引用され、多くの人に感動を与えているのですが、実際、そのことばをかけてもらった料理長の感動がどれほどのものであったでしょうか。おそらく、一生、松下幸之助という一人の人間のファンになったでしょうし、できるだけ松下電器(現・パナソニック)の製品を買おうとするなどの行動を起こしたのではないでしょうか。

 

こうした事例はほんの一例であり、幸之助は生涯にわたって、多くの人に感動を与え、愛され、「松下さんのためならすべてを捧げてもいい」とまで思わせる人をたくさん作ってきたのですが、その根底には、「奉仕の精神」があったと思われます。常に、お客様に満足していただこう、世の中の人たちのお役に立とう、出会う人一人一人に喜びを提供しようと思い、実践してきたことが、多くの人に愛される秘訣であったのです。

 

これからの企業における人材育成についても「愛される人」を作ることを目標の一つに加えて取り組むべきではないでしょうか。これまでは、とかく専門知識やスキルの修得ばかりに重点が置かれてきた結果、専門能力は高いけれども人間性という観点からは疑問符がつく人材が増えてきたという嘆きの声がIT業界を中心に聞かれるようになりました。

 

人間関係が希薄になりつつある今だからこそ、奉仕の精神を実践し、職場内においても、対外的な関係の中においても、「あなたのためなら何でもしてあげよう」と言わせるような社員を増やしていくことが大事でありますし、そうした取り組みが長期的に見れば、必ず事業発展のドライブとなるのではないでしょうか。

 


 

的場正晃 まとばまさあき

 

神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程にてミッション経営の研究を行ない、MBAを取得。

現在は㈱PHP研究所 経営理念研究本部 教育研修部 主幹講師。

経済産業大臣認定 中小企業診断士             


メールマガジン

更新情報をメルマガで!ご登録はこちらからどうぞ