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暗黙知の伝承

暗黙知の伝承

(2010年12月15日更新)

 
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新進気鋭の経営コンサルタントとして活躍中のM氏は、かつて在籍していた大手コンサルティングファームの創業者T氏との出会いが今の自分を支えていると言います。多くの経営者から「神様」と言われるほどに熱烈な支持を受けているT氏のそばにいて、「空気」を直接五感で感じた経験が、コンサルタントとしての基盤づくりになったというのです。

オフィス捨てカット.jpgクライアントにプレゼンする時のしぐさや声の抑揚、経営者の悩みに対して我が事のように共感して聴く姿勢、難局に直面したときの目の鋭さや息づかい……。こうしたT氏の醸し出す「空気」の中に、コンサルティングの極意を発見し、それを真似ていくうちにコンサルタントとしての実力がメキメキ上がっていった、とM氏は語ります。

 

コンサルティングの世界に限らず、建築や芸術、スポーツなどでも、「匠の技」というものは、言語化して表現することが困難な「暗黙知」の部分が大きく、そばにいて感じ取る以外に有効な伝承の仕方はないようです。先日の新聞紙上で、一流シェフが調理する様子を動画撮影し、勘やコツを解析することに役立つシステムが開発されたという記事が掲載されていましたが、これも「技」の伝承が困難であることを示す証左であるといえるでしょう。

 

同じようなことが、企業における人材育成にもあるのではないでしょうか。コンスタントに成果を出し続ける人の行動・思考特性を観察・分析して、自社のコンピテンシーを開発する企業は少なくありませんが、期待通りの成果を上げていないケースが多いようです。やはり、成果を上げる仕事術などというものは完全に言語化することが難しいのであって、コンピテンシー・ディクショナリーだけでは伝えきれないものなのでしょう。そうであるならば、例えば新人営業担当者を一流に育てたいと思えば、経験豊富な先輩営業マンに同行させてその空気を感じ取らせることが最も確実で効果的な育成方法であるということになるのではないでしょうか。

 

今まさに、今春入社した新入社員たちが現場で独り立ちし始める時期です。将来性のある若者たちが豊かな人生を送り、会社と社会に貢献をもたらす働きができるよう指導・育成していくことは、受け入れ側の先輩や上司の大きな責務です。この時期に、できるだけ新入社員を自分のそばにいさせることで、社会人・人生の先輩として確立した「匠の技」(テクニックやスキルだけではなく、考え方や生き方も含めて)を「空気」として感じ取らせ、伝承していくことが重要だと認識するべきでしょう。

 

そしていつの日か、彼ら・彼女たちから「あの人のおかげで今の自分がある」と言ってもらえるよう、いい影響力を及ぼす、そんな先輩・上司を共に目指していきたいものです。

 


 

的場正晃 まとばまさあき

 

神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程にてミッション経営の研究を行ない、MBAを取得。

現在は㈱PHP研究所 教育出版局 研修企画部部長。

経済産業大臣認定 中小企業診断士


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